般若心経は暗譜(じゃなくて暗唱・暗誦)しているくらい好きで、般若心経に関する本は5冊くらい買って読んできたが、それらの本の中でこの文庫本は一番小さくて、一番やさしくて(マンガで書いてあるので易しく見える。)、実は一番深い。
般若心経の本の見分け方は、「空」の概念を如何に書いているかでその深さがわかる。この文庫本は、なんと空の概念に30頁も費やしている。(p30〜p61)
ただ論をまくしたてるだけではなく、反論や反発も交えながら説いているところがよい。生物学や物理学の分野にまで及びながら、空の概念を述べている。とても深く、納得できるし、何度も読んで熟考してみたくなる。
それだけではない。なんと、この本の著者は、「月光仮面」・「エイトマン」の桑田二郎先生だとは。・・・・(絶句!)
エイトマンには幼い頃、お世話になりました。
般若心経に興味を持つ人はもちろんのこと、・・・
また、エイトマンファンには、ただそれだけで、必読必見の書となるのではないでしょうか。
ただ、念のため付け加えれば、
この本の般若心経解釈への私の高評価は、作者がエイトマンの創作者だと知る前の段階で感じたことなので、
エイトマン・ファンのバイアスが掛かった故の高評価ではなかったということを付して筆を擱きたい。
平井和正がまだ「幻魔大戦」を書く前の作品で、桑田次郎との組み合わせは、あの「エイトマン」と同じである。
「エイトマン」と異なるのは、ふつうの人間が神のような超越的な存在によって突然超能力を与えられる、ということだ。
三人の超能力は、しかし、三人それぞれで異なり、また三人それぞれのやり方でその能力を使おうとする。
そこに、本作が「エイトマン」と「幻魔大戦」の間に位置するという意味がある。
つまり、平井はこの時点で、単純なヒーローものでは物足りなくなっていたのだ。
だから、正邪両方にアルゴールは能力を与え、その両者の対立がドラマを作っていくことになる。
のちの「デス・ハンター」では、やはり桑田とコンビで仕事をするのだが、次第に侵略者デスにとりつかれていく主人公を描く。
そして、その存在が正邪いずれなのかを曖昧にして、かなり唐突に物語は終わる。
平井は迷っていたようで、だから原作ともいえる小説版「ゾンビー・ハンター」のほうは、途中で突然終わってしまう。
この三作、「エイトマン」、「エリート」、「デス・ハンター」を俯瞰すると、作家平井和正の変革が良く分かる。
それは時代の要請であり、また高度成長期から停滞期へと至る過程での必然だったともいえるだろう。
そして、平井のライフワークである「幻魔大戦」は、もう収拾のつかない所に行ってしまった。
本来なら、超能力と人間性をテーマにした大作として、他の作品とともに四部作となるはずだったのだが。
本作の第一部で平井が提示しているテーマは、それほど難しくはない。
正義は正義、悪は悪がまだ本作では徹底している。
それが曖昧になりはじめるのが第二部の「魔王ダンガー」であり、後の主要テーゼが顔を見せる。
この部分、単なるヒーローものを期待する読者には評価されにくいだろうが、これが本作に深みと余韻を与えている。
しかし、平井と桑田のコンビは、本当に相性が良い。
桑田のシャープなタッチは、平井SFにピッタリである。
「幻魔」を桑田が執筆していたら、どのような傑作になっていたのか、と思う。
最初にこの本と出会ったのは図書館でした。
この本は手元に置いておきたいと思い、今回購入しました。
私は仏教で葬式をして、神道で初詣に行き、クリスマスを祝うという
日本では一般的な宗教観でしたが、よく般若心経という言葉は聞くが、
中身は全然知りませんでした。読んでいると、とても難しい部分もあり
一体これは何が書いてあるのかと思う部分も有りましたが、その後に必ず著者の
解説があり、わからなくても読んでいけばその奥深い仏教の教えが理解できるように
なっています。仏教書をよみあさっている友人にこの本を見せると、2週間後に、
「これはすごい本だ。よくあるお寺の住職が書いたものよりすごい。人生観が変わってしまった。」
とコメントをもらいました。
早くから脱手塚治虫を計り、本格的なデッサンを訓練した桑田次郎の絵柄は、彼独特の感覚も加わり実に見応えがあると共に、「8マン」の時代から、彼の描く切れ長の眼と切なげな表情の女性は海外でも人気があったと聞く。当然ながら、アダルト漫画では、この女性の美しさはより輝く。また、クセのある悪そうな男も実に良い感じである。
「8マン」の東八郎とさち子さんがそのまま老けたような人物が登場する「1発で殺して」(1964)は、顛末が顛末だけに実に可笑しい。
より細かい絵柄の「痴女の宴」(1975)では、姉が2人の男と情交する現場を見てしまう美しい女子高校生の描写が非常に良いと感じた。この女子高生の本質が後に展開されるだけに尚更である。
そして、絵だけではなく、桑田次郎らしいシュールな発想は如何なく発揮され、アダルトという興味だけでなく実に素晴らしい作品揃いであると思う。
|