作者はこれまで高校生や大学生が中心の群像劇を描いてきた。 一方、この作品の主人公は28歳の女性。 作者にとっては新たな挑戦であっただろうが、さすがは村上かつら。 世代やテーマが変わっても、その表現力は相変わらず見事と言うほかない。
今作のテーマは、ずばり結婚である。 未だ恋愛経験のない28歳の主人公・のえみが、 あることをきっかけに結婚願望を持つようになる。
同じく独身ながら、のえみの何歩も先を行く友人たち。 のえみを縛り付けるしがらみである母親。 友人の後押しで参加した合コンで知り合う男性陣。
登場人物全ての心の機微がありありと表現されており、 それに共感したり感心したりでとにかく読んでいて楽しい。
これぞ村上かつらだ。 結婚や婚活という課題に直面している人はもちろん、 そうでない人もきっと面白く読める。 この作者は必ず、読者を前向きな気持ちにさせてくれる。 背筋をしゃんと伸ばし、一歩先に進ませてくれるだろう。
そもそも小学生が主人公なんだから、
これまでの作品に見られた「青春の葛藤」とやらを求めることが間違っている。
むしろ、小学生なりの心情を上手く描くことに成功していると思う。
私は作者の他の作品も全て読んでいるが、この漫画も普通に読めた。面白かった。
かつての作者の面影を引きずっていないレビューを参考にした方がよい。
必殺シリーズ第28弾「必殺仕事人V 風雲竜虎編」がDVDで登場です。 前作の「必殺仕事人V 旋風編」の打ち切り終了の汚名を返上するべく意欲的な仕上がりの作品となっています。後期の必殺シリーズはイマイチだけど風雲竜虎編は結構好きという人はかなり多いのではないでしょうか? 前作の最終話より一年後が話の舞台となり、中村主水は百軒長屋の焼失により橋の通行料を徴収する番人にまで格下げになり、仕事人への依頼システムに絵馬坊主の蝶丸(演じた桂朝丸は現在の桂ざこば師匠)が登場する等、前作より様々な変更点が見られますが、この作品で特筆すべきなのはやはり何と言っても三浦友和さん演じる新キャラクターの「かげろうの影太郎」でしょう。 前作最終話で殉死した銀平に変わり、便利屋お玉が何処からか連れてきた謎の二枚目殺し屋こと「かげろうの影太郎 」。この影太郎がファンサイトの掲示板等で語られる際は必殺ファンの人達は親しみをこめて劇中の呼称である「太郎さん」と表記する事例が多かったりと、後期の必殺シリーズでは一際人気のあるキャラクターです。 これまでの必殺シリーズの市松や勇次といった多様な二枚目殺し屋達とはまた異なる新しいキャラクターを創造出来た点はこの作品の大きな収穫ではないでしょうか。演じた三浦友和さんの飄々とした演技は雲の様で掴み所のない、どこか世間知らずな謎の二枚目殺し屋を巧に表現していました。 また、影太郎の殺しの武器である針を仕込んだ南京玉簾は「必殺からくり人・富嶽百景殺し旅」の唐十郎の使っていた釣竿を彷彿とさせる伸縮自在な武器で、遠近両様にトリッキーな戦法を行えるうえに玉簾二刀流による二人同時殺しや玉簾を敵に破壊された後の意外な接近戦等、凝った描写も多く視聴者を飽きさせません。お玉さんの金粉サポートは御愛嬌です。
しかし、ここまで意欲的な作品でありながらも当時のトレンディードラマや人情ドラマが真っ盛りな時代の流れには勝てず、必殺シリーズは本作と次作の「必殺剣劇人」で15年に渡り続いた週一のTVシリーズに一旦幕を閉じ、年に数回のTVスペシャルで存続という決定がされてしまうのです。 最終話サブタイトルの「主水ひとりぼっち」に一抹の寂しさを感じてしまうのはそのせいでしょうか。 なお、余談ですが本作品の最終話は次作の剣劇人の第1話に話が繋がって行くので、剣劇人のDVDも併せて視聴することをお勧め致します。
今日も、暑くなりそうだ…。
たった一度の十七歳が始まる。
という文章から始まるこの漫画。
淀川の近くの厚揚げ工場で働く17歳の女の子の成長を描いた漫画です。
かつて自分の中にも存在していた、ほんわりとしたやわらかな気持ちが、
描かれています。
上下の電車がすれ違うタイミングに願い事を叫び終われば、願いが叶うというジンクスに、
緊張しながらも、どうにか叫ぶことができた主人公。
その「友達がほしい」という願いは、その日のうちに叶います。
同い年の、きれいで、無口な女の子が工場にアルバイトとしてやってくるのです。
僕も昔、塾の帰り道、人気の少ない池沿いの道を自転車で走っているとき、
ここで好きなあの子の名前を大きな声で、出せる精一杯の声で叫べたら、
たぶん両思いになれる、なんてジンクスをかってに作ったこともあります。
もちろん叫びました。
でも恥ずかしくて、普通に話す声よりちょっと大きいくらいの声でしか名前を叫べませんでした。
そんなジンクスなんて自分で作ったものですし、田舎なのでどうせ誰もいない。
叫んだってぜんぜんかまわないのに、自分の気持ちが本物だからこそ、恥ずかしくて叫べない。
そんな時期を青春と呼ぶのでしょうか。
そうだとすると、僕はもう青春をとっくにすぎてしまいました。
たった一度の十七歳ではなくなってしまいましたが、
たった一度の人生を今生きています。
過去、そして今、明日から、自分が少しだけ好きになれる漫画かもしれません。
まだまだ主人公の物語は続くので、一巻しかでていない今のうちから見守ってあげようじゃありませんか。
村上かつら氏といえば、切ない胸が痛くなる作品を描かれることで知られている。
本書は、保育者向けの「コミック教本」という位置づけの本だ。 実際現場の保育者の声を元に描いたノンフィクションであり、一話一話に教育現場のテーマが取り入れられている。
氏の作品のイメージとは少し違うと感じるかもしれないが、もし氏の作品が好きならぜひ手にとってみてほしい。 ”地に足がついた痛み”が感じられる本なのだ。 かつて描かれていたような若者のちりちりした痛みではなく、誰もが生活をしている上で感じるリアルな”痛み”だ。
私は、小学校で教員をしていたことがある。 現場に入った時の苦労は実に計り知れないものがあったが、「その時にこの本があったら」と感じた。 私が身をもって感じたことや学んだことが、全編にちりばめられていたからだ。
自分ができなかったことや抱いていた思いを思い出して、胸が熱く切なくなった。 この本は、そういう本だ。
「教本」という位置づけなので、保育者や教員しか読んではいけないようだが、一般人が読んでも十分に楽しめる。 特に保護者は、本書を読むことで、保育者や教員がどのような思いで子どもと接しているのかが分かるのではないだろうか。 保護者としても胸が痛くなるであろうエピソードもあり、最高の教本であり、エンターテイメントであると感じた。
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