約6割くらいは讃美歌風のキリスト教の雰囲気を表す音楽で占められており、後2割程度がアラブ、中東を表す音楽、そして残りは戦闘などを描写しているような印象の構成になっている。 分厚いオーケストラによる重厚感は余り無く、讃美歌の歌唱が特徴的で歴史スペクタクルものの音楽としてはやや軽い印象です。主題歌の女性歌手の声が可愛らしく、耳に優しい。全体に高品質な音楽だと思います。
この作品は、イスラム教・キリスト教の共存、敵対する勢力の共存、もっと大きく言うと、戦いのない世界平和を願うリドリー・スコットの思いがこもった作品である。 キリストとイスラム教など宗教間の争いは、現代に至るまで数多く繰り広げられてきた。その中でも、キリスト教・イスラム教の争いは、双方の聖地エルサレムを我が物とするために何世紀間も行われてきた。キリスト教徒が行った十字軍は、一方的にイスラムからエルサレムを奪うため、私欲のための戦いであり、けして聖戦ではない。エルサレムは、キリスト・イスラム・ユダヤの聖地であり、それを奪うがための十字軍が正当化される理由はないのだと個人的には思っている。 宗教の教えを守ることは自由だ。宗教問題を引き起こしているのは、過剰な狂信者であり、一般の信者達ではないのである。私欲に目がくらんだ狂信者達が宗教問題を引き起こしているのだ。宗教自体を批判してはいけない。 リドリーがこの作品で、言いたかったことは、世界平和・共存を願い、慈悲の心を持つこと。宗教・人種を超えた世界の創造すなわちkingdom of heaven(天国の王国)の創造であり、戦いのない世界平和を望んでいるのだと思います。 作品内容としては、完全版が見たいというのが本音。物足りない。リドリーが作った映像が存在するのなら全て見たい。過去の作品もそうですが、この作品もリドリーが作った映像美が楽しめます。音楽も奇麗です。 残念なのが、オーランドファンを狙った宣伝。内容が内容だけにもう少し考えてほしかったと思います。 DVDですが、多分今後完全版が出るのではないでしょうか。音声解説も付いていないし、明らかにカットされたシーンが多くありそうです。その完全版のリリースを楽しみに待ちたいと思います。星5個といきたいのですが、宣伝と物足りなさを感じたので星4つ。完全版に期待。
DVDの通常版と、Bru-rayのディレクターズカット版の両方を保有しています。この映画は、私のお気に入りです。 最初に通常版を購入し、その後ディレクターズカット版を購入して見比べて、驚きました。
通常版は、時間的な制約から、ディレクターズカット版より多くの物語の展開がカットされて、セリフもそれに合わせて、細かく修正されていることが分かりました。
もし、これから新規にこの映画を購入されるのでしたら、Bru-rayのディレクターズカット版がお勧めです。ただ、Bru-ray版の唯一の不満は、DVDの通常版には、史実解説の字幕があるのですが、それが収録されていないことです。 以下は、ネタばれになりますが、DVDの通常版と、Bru-rayのディレクターズカット版の違いです。 知りたくない人は、読まないでください。 最初にバリアンに殺される神父は、ディレクターズカット版では、バリアンの異父弟。この神父は、バリアンを追い出し、バリアンの財産を奪おうと画策しており、バリアンは妻の自殺後に、発狂したとして、この神父のために投獄される。また、この神父は、教会のビショップには、バリアンの妻の首を切り落としたことを隠しているが、後でバリアンにそれを自分でばらしてしまう。バリアンが、怒りを爆発させた理由はここにある。 バリアンは、単なる鍛冶屋ではなく、ディレクターズカット版では、投石機などの武器の製造に優れ、銀細工もでき、戦歴もあることが分かり、イスラエル到着後は、国王に対して、城壁の防衛についても助言をする。それが理解できれば、最後の戦闘シーンで、バリアンがエルサレムの防衛で優秀な戦術を使うことができた理由が分かる。 バリアンの住む村は、ゴッドフリーの兄が治めているが、領主の城内のシーンは、通常版にはない。兄は、ゴッドフリーが後継ぎなしに死ねば、ゴッドフリーの治めるイスラエル内の領地も、自分と息子が受け継げると期待する。ドラマの始めに、バリアンの引き渡しをめぐって、激しい戦いが始まる理由は、ここにある。 ディレクターズカット版には、イスラエル国王(ボードワン4世)の世継ぎとして、シビラが産んだ幼い子供のボードワン5世が登場します。しかし、この5世も、即位後にライ病にかかっていることが分かり、シビラは、彼を毒殺します。その後にシビラは、夫のギーを次期国王に戴冠します。通常版は、ボードワン5世のエピソードを、全部カットしています。 シビラは、バリアンとの不倫関係に陥りますが、ディレクターズカット版では、ギーも別の女性(シビラの召使い?)と不倫関係にあることが分かります。 ディレクターズカット版では、バリアンは、イスラエル開城後に、ギーと対決します。通常版を見ていると、捕えられたギーはサラディンに引き回しにされて処刑されてしまったかのように見えます。(ちなみに、特典映像の解説では、捕虜にした敵将にカキ氷の入った水を与えるのは、処刑しないという印になります。)
あと、最終シーンで、バリアンが懐かしげに触れる白い花の低木は、ディレクターズカット版では、バリアンの妻が妊娠中に(自殺する前に)植えたもの。妻の、はにかんだような笑顔がかわいい。バリアンが、故郷を離れている間に、この木がここまで大きくなったという時間の経過も示している。妻が植えるシーンは、通常版ではカットされているので、バリアンが、この白い花の木に触れることの意味は伝わらない。 Bru-rayのディレクターズカット版で、特典満載のディスクの付いた特別編が今後出ることを期待しております。
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