森鴎外の娘という育ちのよさや、一流の感受性と美意識を持つ森茉莉のエッセイは耽美で美しく、うっとりしてしまいます。が、それと同時に、独特のものの考え方は痛烈でユーモラスで、共感したり、くすくす笑ったり。 世間知らずの怒りん坊なところも、なんだかかっこよくて、こういう人が友達だったら、最高に面白いだろうなと思ってしまう。
50年前に書かれたものなので、もちろん少し時代にあわない説明とかもありますが、
内容にはまったく古さがなく、楽しめます。
文字だけで料理のおいしさ、雰囲気がわかりますし、逆に脳内イマジネーションがわいてきます。
「壇流クッキング」にも通じる読んで楽しむレシピ本です。
あと、おいしいものはやはりカロリーが高いんだな―とも再納得。
また少ししたら再読したいと思います。
芳醇な表現により、読むひとの心に森魔利の美しい心象世界が広がります。
短編集なので比較的に読みやすく、ちょっとした時間に1篇読んで、珈琲を飲みながら、じっくり世界に遊ぶことができ、贅沢な時間を過ごしています。
また佐野洋子さんの挿絵も雰囲気が合っていて、殊更に、この本が宝石箱の様に感じられます。
大切にしたい一冊です。
製造物責任とやらの時代であるから予め一言お断りしておかねばならない。森茉莉の「テレビ評」である本書は決して上品ではない。悪口は言いたくないが、聞くだけならまァいいか、という人にはお薦めできる。これだけ悪口を並べたてるということは、森茉莉は人生を肯定し、人間に深い関心があったということなのかも知れない。
あのもみあげを長くした田中邦衛は300年続いた西班牙(イスパニア)の貴族の、血族結婚のために頭の悪くなった城主に仕えているソメリエ(酒の係り)で…
このように 森茉莉の形容は実に巧みだ。
悪口ばかりではない。
桃井かおりを高く評価する。また、大川橋蔵には明神下!!! 銭形!!! 平次!!! と三連の感嘆符を使って声をかける。映画『太陽を盗んだ男』の沢田研二を大いに褒める。
この改行の少ない、370ページの悪態を最後まで読むのは大変である。これがダイジェスト版(中野翠編)なのだからおそろしい。私は一気にではなく、十回くらいに分けて辛うじて読んだ。ともかく全ページ読んだ。読んだ本人が言うのも何だが、この本を最後まで読み通すことのできる人は偉い!!!
私物などの写真は貴重で美しく、著者の文章も茉莉ファンにありがちな自分語りが抑えられてて好感がもてます。 再現料理も、少々プロ臭すぎ、美しすぎるところをのぞけばほぼ満足。 ただ一つ、茉莉の料理文章の原点、象徴ともいえる、茉莉ファンにはもっともチェックの厳しいであろうある料理の調理法に(ファンなら)すぐわかる大きな間違いがあって、これだけはちょっと残念なものがありました。
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