現在22歳の佐藤優介と佐藤望によるデュオ「カメラ=万年筆」による新作が素晴らしい仕上がりだ。
彼らは公式HPを持っていない模様で、10年から活動・自主制作盤を2種発表済・J-WAVE Radio Sakamoto(坂本龍一の 番組) オーディションでノミネート経験あり、これ以上のことは掴めなかった。最近音楽家個人のプロフィールを押し出さず 匿名性をもちながら活動する若手が増えている気がする。
仏映画監督アストリュックの映画理論をユニット名とする等かなり知的さを漂わせる人達だが、実際出てきた音楽がユニ ット名負けしない前衛と遊び心に溢れる新感覚ポップスであり、お洒落な音楽に敏感な方は嵌る確率が高いと思う。
彼らの音は雑多な要素から成るジャンル分け不能なもの。ピアノ・管弦楽器とったクラシカルな音色を根底に、ドラム・ギ ターといったバンドサウンド、電子音・効果音の装飾を重ねた多層的な創りは、長く経験を積み重ねた音楽職人の如くこな れている。それらの音をすっきり配置する高度な編集感覚は、否応なく渋谷系職人達の影響を感じさせる。仏語表現を好 んだり、外国映画の台詞らしき音源を背後に流す手法等まさにPizzicato Fiveだろう。
面白いのはそこに20代の彼らが通ってきたサブカルチャーの色が滲み出ていることだ。女性ボーカル達の何処かアニメ 声風情の歌と緻密な音の組合せが放つ奇妙な感覚は中々得難い。予定調和に嵌らない風変わりな曲創りも楽しい。
全9曲で30分弱。特に固定ボーカルは居ない模様で曲毎に複数の女性歌手が入れ替わる。加え野宮真貴と鈴木慶一が ゲスト・ボーカルとして1曲づつ参加。サウンド・スタイルは一つに落ち着かず曲中でさえ自由に形を変える。
フレーズ毎に劇的に姿を変える壮大なオーケストラ風バンドサウンドに混じり聴こえる「進級」「就職」といった現実的な単 語を含む呪文の様な詞世界がシュールな「School」、管楽器と女性ボーカルの柔らかい音色に包まれ可愛らしい物語を 紡ぎ出す「グッバイ・イースター」辺りが特に気に入った。
デザインワークの秀逸さも指摘したい。LPの様に袋から取り出す形で出て来た歌詞カード群には楽曲をイメージしたと思 われる気鋭イラストレーター達の素敵なイラストが。これらを含め確実に新世代クリエーター達の産物であると感じさせる。
今年に入ってからポップス新作の決定打に出会えなかったがこれは頭を殴られる程の衝撃を覚えた、強くお薦めしたい。
原田知世さんのアルバム、あまり期待せずに購入いたしましたが、はっきり言って驚きました。
原田知世さんが、過去にリリースしているものを遥かに越えた、原田さんの良さと、音楽の良さが一体となった素晴らしいアルバムだと思います。
プロデューサーの伊藤ゴロー氏の作品は、今回初めて手にしましたが、こんな風にアーティストを生かしつつ音作りの出来る方は、今の日本の音楽業界には希有な存在ではないでしょうか。ヒットチャートの音楽を聴くたびに、J-POPの不作具合にがっかりする事が多かったのですが、日本も捨てたものじゃないと思いました。
他の方も書いていらっしゃる通り、シンシア、時をかける少女のカバー具合も素晴らしい。
「きみとぼく」も傑作。今年の10枚に入る邦楽アルバムだと思いました。
一昨年(2005年)、「イニシャルD THE MOVIE」を映画館まで観に行った。
イニシャルDの原作、それからアニメを一度見たいと思いつつも、ついその機会を逃していた愚生にとってはイニシャルDと初めての触れ合いであった。これは香港の俳優ばかりを起用した作品で(監督もあちらの人)、吹き替えの為にやや違和感があったが、実際にクルマを走らせて撮影するなど、なかなか気合いの入った作品であった。
さて、今回「スピードマスター」なるクルマの作品が映画化された。「イニシャルD THE MOVIE」を観に行った愚生としては一度観ておきたい作品のひとつだった。俳優陣も中村俊介、北乃きい、NHK大河ドラマでブレイク中の内田聖陽、そしてザ・ハウンドドックのリーダーである大友康平までもが出演していて、なかなか豪華だ。
肝心の走行シーンではCGが多用されていて、かなりのスピード感ではあるが、走行シーン自体が少ないので、この映画は「クルマの映画」というよりも「ヒューマン・ドラマ」的に観た方が良いのかもしれない。
本作、「Dororonえん魔くんメ〜ラめら」放送開始時に、これを東映版のTVアニメ「どろろんえん魔くん」のリメイクと思い込み、その社会派でドラマチックで怪奇色豊かな人情譚を期待していた一部の方々は、そのギャップに閉口し、痛烈な反感の情をあらわにした、
だが多くの方がすでにご存知のとおり、本作は永井豪の描く原作漫画のアニメ化であり、東映スタッフが原作のアレンジに当時の暗い世相を反映させたように、メ〜ラめら版スタッフは昭和の活気を本作のテーマとしている、当時、公害、戦争、学生運動、食物危機、内ゲバ、ウーマンリブ、エログロ、ナンセンス、社会は暗さと狂気の坩堝だった、しかし、時を経てみれば、その暗さを跳ね返そうとする、熱血があり、ど根性があり、ゆめもちぼーも、確かにあったことも事実、つまり旧東映版と新メ〜ラめら版は表現の方向性こそ違えどもどちらもあの時代に生きる姿を描いて見せた、紛れも無く「えん魔くん」なのだ、
そしてこのえん魔くんはこの30数年の間幾度と無くリメイクやアレンジ、スピンオフ等がくりかえされてきたが、残念ながらどの作品もそれほど話題にはならなっかった、しかし、ついに時代がえん魔くんに追いついた!
徹底した「昭和ギャグ」と「ハレンチギャグ」は燃え滾る「命」への賛歌だ、
本作に登場するえん魔くんの姉、「艶美ちゃん」はこの世をエッチで楽しい世界にするという目的、夢をもっている、それは生命の歓喜に満ち満ちた世界、
せめて本作を鑑賞するひと時は、我等も生業の憂いを捨てて、彼女の示してくれる光溢れる桃源郷に、思いを馳せようではないか。
赤色エレジーからいうと、40年近くになるんですかね。ずーっとあがた森魚師と共に昭和から平成へと生きてきた人間としては、感慨深いものがあります。”はちみつぱい”のメンバーやら、”ムーンライダース”のメンバーやら、過去のアルバムに参加した矢野顕子さんやら、入り乱れての懐メロ大会のようで、それぞれの時代を知っている者からすれば、涙なくしては観られません。みんな歳をとったなあ。でも、それを受け入れてこのDVDを観て僕らも頑張りましょうか!
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