非常に欝な内容で、何とも言えないショックを受けた。
救いがない。
ただ、人間が描かれている。
人間の救いについて、考えずにはいられなかった。
現実の描写は、手ぶれのカメラのよう。
光を失ったゆくにつれて、現実の色彩も暗く、夜の描写も多くなる。
それに反し、空想の世界は、明るく、光に満ち、整然としている。
哀しい内容を歌っているはずなのに、哀しくも明るい。
けれど、それが辛い。
運命に翻弄され、避けられない宿命のもと、誰にも本当のことは理解されず、舞台の幕は、突然下ろされる。
救いは何だったのだろう。
私には、もう一度、見たいとは思えない。
しかし、人間が描かれている。
人間の生死について、救いについて、考えることを促す優れた作品であることは間違いない。
ブニュエルとダリの「アンダルシアの犬」、ゴダールの「男の子の名前はみんなパトリックっていうの」、シュヴァンクマイエルの「ジャバウォッキー」、ラース・フォン・トリアーの映画学校卒業時作品「NOCTURNE」、「リトル・ダンサー」のスティーヴン・ダルドリーの監督デビュー作「Eight」など、ヨーロッパのショート・フィルム16編を収録したオムニバスDVD。作品は面白い物が多く、大満足の1枚なのですが、監督や評論家などによる音声コメンタリーに、日本語字幕がついていないのが残念だったので、星ひとつだけ差し引きました。収録内容は以下です。
1. Juan Solanas (France) "L'Homme Sans Tete" ("The Man Without A Head")
2. Tom & Charles Guard(UK)"Inside Out"
3. Jean-Luc Godard (France)"Charlotte et Veronique, ou Tous les garcons S'appellent Patrick"
4. Peter Mullan (Scotland)"Fridge"
5. Christopher Nolan(UK)"Doodlebug"
6. Jan Svankmajer(UK)"Jabberwocky"
7. Chris Morris (UK)"My Wrongs #8245-8249 & 117"
8. Anders Thomas Jensen (Denmark)"Valgaften (Election Night)"
9. Lars Von Trier (Denmark)"Nocturne"
10. Lynne Ramsay(UK)"Gasman"
11. Stephen Daldry(UK)"Eight"
12. Asif Kapadia(UK)"The Sheep Thief"
13. Toby Macdonald(UK)"Je T’aime John Wayne"
14. Peter Naylor, Carl Hunter(UK)"Unloveable"
15. Mathieu Kassovitz(FR)"Fierrot Le Pou"
16. Luis Bunuel and Salvador Dali(FRA)"Un Chien Andalou"
"L’Homme Sans Tete" は、作品も監督も、はじめて知ったのですが、これがすごくいい作品で、収録作品の中でも特に気に入りました。頭の無い男が、好意を寄せる女性とのデートの為に、頭を買いに行き・・・という、ファンタジックなお話で、映像は、美しく印象的で、目を奪われるもので、ストーリーも良く出来ており、監督の非凡な才気を感じます。2003年のカンヌ映画祭のジュエリー賞やフランスのセザール賞など、数多くの賞を取った作品だそうです。
狂気をユーモラスに描いている、Chris Morris の"My Wrongs #8245-8249 & 117" も、気に入った一本。英国アカデミー賞受賞作品だそうです。
どんなに大変でも、主人公から明るい歌が消えることは無い。全編通して主人公は明るく歌い続けている。その明るさ故に、主人公の受難が重くのしかかってくるような気分になる。暗闇でも笑顔を忘れないこと、暗闇でも歌い続けること。そうしていれば、怖くない。押しつぶされそうな主人公の強烈な強さと、変えようの無い現実の板挟み。
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