新潮社から刊行されているものより良いです。比較検討されている方がいれば参考まで。
特に「マシュー・カスバート」と訳されている点は違和感が無いです。
アニメ版の印象が強く残っている方には集英社版がお勧めです。
モンゴメリは「赤毛のアン」を書いたことで有名な女流作家です。モンゴメリは、小さい時から詩などを書きました。15歳から本気で日記をつけ始めて53年もの間、休まず書きつづける日記人生でした。
40歳をすぎましたが、赤毛のアンについては、全くの無知でした。読んだこともなく、単なる児童文学だと思っていました。英語のラジオ番組で、訳者の松本さんが、この本の中にはシェイクスピアの引用や、聖書からの引用がたくさんあると語っていて、興味を持ちました。また、アンがスコットランド系であることが推測されることや、宗教、政治等、大人が読んでしかるべき内容の本であるということも知りました。松本さんのラジオ番組を聴かなかったら、私がアンに出会うことはなかったと思います。
「赤毛のアン」のシリーズの解説と
関連する写真やイラストを豊富に収録した本。
内容は以下の通りです。
1. 写真でたどるアンの物語
(グリーンゲイブルズの内装から
アンが通っていた大学のモデルになった大学まで様々)
2. 秘められた愛の物語
(マリラ、マシュー、ギルバートが示す愛情を読み解く)
3. 物語に香る英文学
4. キリスト教の愛と聖書のことば
(物語に引用されている英文学や聖書の言葉から、著者の意図を読み解く)
5. 暮らしと社会
(アヴォンリーの草花や登場するごちそうについて)
6. 謎とき『赤毛のアン』
(物語をより楽しむための解説)
7. 写真でたどるモンゴメリの生涯
(様々な年代のモンゴメリがすごした部屋や家の写真などとともに)
著者は「赤毛のアン」の訳者でもあり、解説が詳しいです。
マリラの愛情の読み解きでは涙がこみあげてきます。
ギルバートの贈り物と花言葉との読み解きも素敵でした。
写真も美しく、特に歓びの白い路は素敵でした。
一章(?)、そもそもこの題名の元となった「蜜の眠り」は、読んでいた、ああ、若いときって、こういうのだったなぁと、価値をシンクロできるものがありました。
これだけで、この本は価値があると思います。ただし、この本を一冊買うだけの価値ではなく、時間を費やしても、無駄にならないと言う意味です。
一章以外の章は、お好きな方にはお好きでしょう。しかし、ヘテロの私にとっては、他には一つの章は読めましたが、後は、飛ばしました。一応、読みはしましたが、読むに耐えない。読みつづけるのが苦痛となって、結果、読むのを止めて、その時間の価値に満たないと言わざるを得ませんでした。
図書館で借りて、好きな章だけ読む。そういう本でしょう。一冊買うとするなら、文庫でも必ずしも時間と希望のバランスを、
全ての読者に
もたらすとは、思えません。
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