加藤伸吉氏の何処の場所の何時の時代の産物か良くわからない濃厚な絵(強いて言えば西欧中世の木版画風)によって、科学と魔法と呪術が混在する仮想の惑星スタコラで繰り広げられる闘争と冒険が描かれています。
この巻ではキグルミにて小人族に擬態している巨人族、異形の仮面を被った呪師達、怨霊調服用マシン霊亡徒(レイボット)、中央政府の浮揚棺ジャッカル、ノラ(野良)重機、イッカク隊、潜水飛行空母、看守頭の巨人ボッケさん等、ご自身の目でお確かめ頂かないと判らない異界異形の登場人物や造形物が満載です。
囚われの身となった主人公二人、キズと小僧は今回余り出番が無く、チャポン国総長ドクロウの悪の魅力と、その反対勢力で中央政府から脱出を試みるジャコ一派との奇々怪々な追撃戦の描写で占められています。
ストーリーよりもバンドシネ風な強烈な視覚イメージに浸れるか否かで本作の評価が分かれると思います。
私は3回位読んで漸く慣れた様な気が致しました。
連載時のカラー頁をそのまま掲載し、B6版より意識的に数ミリだけ大きくした漫画単行本としては珍しい紐栞付の装丁も洒落ています。
加藤氏の絵 (名前で検索すると他作品の表紙絵を観る事が出来ます) が好みに合う方、強烈なイメージの漫画をお探しの方には大いにお薦めです。
『超革命的中学生集団』の平成版リライト。中学生五人がエイリアンから授かった超能力で巻き起こす大騒動。怪力、性転換、マッドサイエンティストの超発明、美女軍団を駆使して正義の使者たらんとする彼らが、次第に私利私欲に走リ世界征服を目指す者が出て内ゲバ状態……。当時の学生運動や風俗を皮肉った背景が、今読んでも新鮮。背表紙にある小学校上級生向けとは思えない毒の効いたぶっ飛んだ内容とキャラクターたちに、単なる児童書と侮ってはもったいないくらいに思えました。
(「ヤングマガジン」連載とありますが、「モーニング」の間違いです) 連載当時はあまり話題にもならなかったが、この作品は連載時にリアルタイムで読んでおり、「極論」の痛快さと恐ろしさを感じた。バブル時代の日本の行き着く先なのでは、と感じ怖くなった。人間の欲望を満たすにはクイズに正解すること。あたれば法律だって変えられる。世間でまかり通っている政治や経済の常識をあざ笑った、「みんなの全体主義」。毒のある作品ですので、読むときには心の準備を。
前巻より懲罰使役を科せられている主人公キズ(マタギ)。 古株の囚人達が恐れる生還率が極めて低い地下の「極穴基底」作業場に異動したが、そこでは帝国成立・存続の根幹を成す驚くべき秘儀が行われていた…。
加藤伸吉氏による象と亀の甲羅の上に宇宙があると信じられている世界で描かれたが如き異形の作品です。 後半描かれる地下は仮想であった舞台となる惑星スタコラの地に現世地球を思わすイメージが投入され、よりメタフィクショナルな雰囲気になっています。 とても土くさい様でいてスタイリッシュな加藤伸吉氏の絵と奇想に酔う作品です。 好みが分かれる作品だとは思いますが、スチーム・パンクや中世西欧の版画やフランスのバンドシネがお好きな方は是非一度お試し下さい。
この巻も連載中のカラー頁を再現し、紐栞が付いた豪華な仕様となっています。
まずこういう作品を掲載し、出版して下さった出版社殿に敬意を表します。骨太だよなあ。
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この作品、要はオーウェルの『1984年』の現代的解釈なんですが、テレビのクイズ番組という形で国民の革命意識を国家主義・全体主義・官僚主義の管理下においてしまうという発想はスゴイ。市民革命が歴史上起こらなかったニッポンで、市民革命を起こさない絶対制度を敷いてしまうのだから、市民というものが永遠に不在な世界なわけです。きわめて現代的な話ですよね。
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