私はベートーヴェンといえば「第9」や「運命」のような重厚でメロディがシンプルでわかりやすくて迫力のある厳粛な音楽というイメージだったのですが、このアルバムはPOWERFULだけじゃない様々な曲が詰まっています。
DISC1の#1はベートーヴェン唯一のオペラ曲(歌はなし)や、DISC2の#2 #3 #5 #7のピアノ曲は、静謐でなおかつロマンティックな曲で夜にぴったりです。タイトルしか聞いた事がなかった#2「月光」#7「悲愴」もタイトルだけだと暗いイメージがしていたのですが、全然そんなことはなく、ベートーヴェンが恋していた時に(生涯独身でしたが、恋多き男性でモテていたと解説に書いています。)書いただけあって、柔らかくSWEETで美しい曲でこのアルバムの中で1番好きです。
逆に#8〜#10は爽やかで、明るい気持ちになり高揚感あふれる感じで憂鬱な朝にも?晴れやかな気持ちになるような曲です。
DISC1の#3 DISC2の#4 #8 #11は小中学校の掃除時間にかかっていたこともあり、これもベートーヴェンだったんだ!と今更ながら新しい発見でした。
2枚組でジャケも美しいですし、ベートーヴェンについてや各曲の解説・曲にまつわるエピソード等もわかりやすく書かれていますので、クラシック初心者の私にはありがたいです。
欲をいえば「第9」「運命」第1章も聴きたかったです。
この手のコンピレーション・アルバムって邪道では、というほど堅くはありませんが、バッハのサンプルのようで、敬遠していたのですが、面白くて結構ハマりました。
多分、バッハ音楽の美しさや親しみやすさをBGMのようにして感じることを目的として作られたのでしょうが、違う聞き方をするリスナーもいるのです。しっかり聞いてニヤッとするアルバムなのかもしれません。
冒頭の聴き慣れた「主よ,人の望みの喜びよ」を聴いて、英語の歌詞なのに驚かされました。♪Jesu, joy of man's desiring,Holy Wisdom, Love most bright;♪ 大人数で有名のモルモン・タバナクル合唱団で、オーマンディ指揮のフィラデルフィア管弦楽団ですから、それもありかな、と。カンタータの編成とは違う、アレンジの壮大さもありでしょう。
「メヌエット ト長調BWV Anh.114」の符点音符と装飾音符で彩られたイゴール・キプニスの演奏に親しみを覚えます。この時代のバッハ演奏の記符と奏法の約束事を思い出しました。バッハの作曲では無くても、この愛らしいフランス風の音楽はバロック音楽に親しみをもたらすものでしょうから。
「ブランデンブルク協奏曲第5番ニ長調」は、レオンハルト、ブリュッヘン、クイケン、ビルスマなどの演奏でした。名手が一堂に会し、華麗で見事なアンサンブルを聴かせてくれたわけで、オリジナル・アルバムを再び聴こうかな、という気にさせてくれます。
「イギリス組曲第3番ト短調BWV808~プレリュード」は演奏を聴いただけで、グレン・グールドの演奏だというのが伝わってくるでしょう。個性が炸裂しています。ノン・レガートで音楽の構造を明確に示す演奏は、他の奏者とは全く違うバッハ像を描き出すようでした。 同様に2枚目の冒頭の「平均律クラヴィーア曲集第1巻~第1番ハ長調」のグールドの演奏の特異さは、聴き慣れた音楽に違う光を当てたように感じました。ここでスタッカートを使用するのか、という思いです。
「無伴奏チェロ組曲第1番ト長調BWV1007~プレリュード」は、ヨーヨー・マの演奏でした。カビ臭さとは眞逆のバッハです。躍動感に満ち、ダイナミック・レンジを一杯に取り、フレーズの大きさが実に魅力的です。名演奏の誉れの高いものですが、演奏の力を感じるものでした。カザルスもいいですが、この演奏は現代的という範疇を超えて、21世紀にバッハの音楽の素晴らしさを伝え続けるものでしょう。圧倒されます。
オーマンディ指揮のフィラデルフィア管弦楽団の「目覚めよと呼ぶ声が聞こえ」はオリジナルとは別物の音楽のようにして終わりますが、どんなアレンジをしてもバッハはバッハなのでしょう。
松居直美さんのケレン味の無い「トッカータとフーガ ニ短調」の真摯な演奏もまた襟を正して聴きました。残響の豊かな素晴らしいオルガン演奏でしたが、どこのオルガンで、収録ホールや教会がどこなのかリーフレットには何も書かれていないのは困りました。他の演奏の解説も書かれてはいるのですが通り一遍の記載で、あまり参考にならないものでした。バッハをBGMとして聴く分には構わないのでしょうが。 調べて見れば、ドイツのハンブルグにある聖ヤコビ教会のアルプ・シュニットガー製作のオルガンを使用されたようです。この素晴らしい演奏を聴いて、松居さんの他の演奏も聴こうという気になりました。その意味でもこのコンピレーション・アルバムは実に面白いです。
次は「マタイ受難曲BWV244~第47曲『神よ憐れみたまえ』」のアルトの名アリアを、チェロのヨーヨー・マがソロ・パートを演奏していました。邪道のように思いますが、敬虔な演奏で歌詞が浮かび上るようなフレーズィングの巧みさは聴きものです。こんな演奏があったのを知りませんでしたが、名手ヨーヨー・マにかかるとバッハの受難曲も新鮮な音楽として提示してもらえ、新たな発見をする思いでした。お見事。
ブリュッヘンの「無伴奏フルート(フラウト・トラヴェルソ)のためのパルティータ イ短調」もそうで、フラウト・トラヴェルソの音色の美しさだけでなく、ラストへ向かうエネルギーの激しさにビックリさせられます。4分35秒のラストのロング・トーンの処理は、バッハに人間臭い熱い思いを廻らせたような魅力的な試みだったと思います。
もっと他にも心に残る演奏が目白押しでした。それだけバッハの音楽の素晴らしさと過去の名演奏の蓄積の多さと多様性を知る思いでした。 こんな調子で全31曲を聴き通しましたが、バッハの魅力を再発見するのには面白い企画だったと思います。 これは「イマージュ クラシーク」の狙いとは違う聴き方なのでしょうが。
子供の頃から家にあったCD。また聴きたくなって、購入しました。 久しぶりに聴いたけど、やはりアントルモンのピアノは良いです。 きらきら星変奏曲なんて、まさに音がきらきらしていて、子供の頃にこんな風に 弾きたいな〜と思ったのを思い出しました。 水の戯れの透通った音も大好きです。 本当に水が流れていくみたい。
そのうちまた来日しないかな・・・
結構良かったです。クラシック専門の愛好家の人の中には、厳しい意見もありますが、十分楽しめる充実した内容になっていると思います。いい趣味をもつことにもなるはずです。まずは、購入してみましょう。
フィリップ・アントルモンという、ちょっとお年を取ったピアニストの感性が反映された楽譜です。解説などは一見すると充実していますが、装飾音などは理由もなく「こういう風に弾きなさい」と書いてあります。その内容が正しければまだ良いのですが、自筆譜など原典研究が進んだ現在のモーツァルト観からは若干ずれたものになっており、少々問題があります。演奏指示の裏にあるアントルモン流のリリシズムを読み取れば「なるほど」と思えるのですが、この解説を鵜呑みにしてしまうレスナーも多いと思いますので、注意が必要です。一例を上げると、このテキストではトリルを主音から始める指示が非常に多いのです。しかし通常は補助音から始めるのが基本とされています。 モーツァルトの時代において装飾音は、演奏者自身の好みや弾きやすさによって、あるいはより自然なフレージングになるように、さまざまな考慮をしながら適宜変更して良いとされていました。そして何より、そういう変更ができるように「自分で考える」ことが重要だと思うのです。しかしこの楽譜のように最初から第三者の指示がなされていると勉強になりませんし、自由な発想を阻害してしまいます。また単純な問題として、主音から始めると5連符・7連符になってしまう場合でも、補助音から始めれば6連符や32分音符など割り切れる音符になって、拍子に乗せやすいのです。 このテキストに載っているソナタは結構難しくて、中~上級者でないと弾きこなせないと思います。そして中~上級者であれば、それ相応の楽譜を用意していただきたいので、このテキストを用いて学習するのはあまりおすすめできません。あくまでも番組解説用であり、フィリップ・アントルモンというピアニストの感性を反映した楽譜ということを意識した方が良いと思います。
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