僕はこの映画をリアルタイムで劇場で見ました。当時片岡義男はベストセラー作家、法師温泉は「フルムーン旅行」キャンぺーンCMので大人気の温泉地、そして角川映画の秘蔵子原田ともよのお姉さんの登場、そして何より人気映画作家の大林宣彦監督作品。話題性十分の登場でした。劇場で映画を見てみると、大林監督が肩の力を抜いて、実験的な撮影手法を試したりして爽快なツーリング映画に仕上がっていました。「尾道3部作」のようなこってりしたノスタルジーを求めて劇場に来た人々には物足りなかったようで、大林映画の中ではあまり語られる事のない作品として埋もれていました。僕は自分がこの映画を見てバイク乗りなった程、この映画が好きだったのでdvdでこの作品が現代に蘇った事を嬉しく思っています。ツーリングの好きな人にはお薦めの作品です。
安田南といえば1971年中津川フォーク・ジャンボリーの顛末が有名だが、そのイメージのみが先行し、 本来の「歌手・安田南」の存在が語られる機会は殆ど無かったように思う。本作はそんな彼女を知るための抜群のテキストであろう。 彼女のヴォーカルは安易に聴衆を寄せ付けない独特のオーラがあり、歌唱の手法から「下手」に聴こえてしまうが、その認識は誤りだ。 他者を寄せ付けない解釈、唱法。その座標軸は吉田美奈子や浅川マキのものに近い。何か特定のジャンルで括る事が不可能なのだ。 殊に本作は全曲オリジナル。 バックを松岡直也、村上秀一、大村憲司、小原 礼、高水健司、秋山一将らがガッチリ固め卓越した世界を創り上げている。 本作のCD化を機に「歌手・安田南」にスポットが当れば、と祈る。
現実感と空想感、充実と空虚などの狭間を描き、いつものことながら不思議な読後感を抱くことができる「片岡ワールド」が全開。さらに、本作では詩人である女性を小説の中に登場させ、思いついたフレーズを順序や状況に関係なく書き連ねた上で、後々につなげていく作業を紹介しており、意表をつくタイトルづけのセンスを見せてもらった気がする。
本書のタイトルも素敵(読めば最後に「なるほど!」とうなずけます)だし、登場人物が語るちょとしたセリフも絶妙。例えば「浴衣はその人の本質を引き出す。」(確かに浴衣を着ると「バカボン」になってしまう人っている!)「コーヒーは勘定の外。」「初めて入るバーの匂い。」などそれはもう絶妙で、この作者でなければ書ききれない世界観となる。
デビュー作以来、永い間、いつも楽しませていただいており、今後ともぜひ、「フィクションとしての作者」が描く小説らしい小説をいつまでも読ませていただきたい。
「可能性はほとんど無限ですよ」という日本語は、状態を言いあらわす言葉をふたつ使って、漠然とした状態がひとつ作り出されているにすぎないという。これを英語になおすには、「可能性」という漠然たる一般化をやめ、当事者のひとりであるあなたの想像力に問題をすべてあずけてあるという、英語的な発想へもっていく必要がある。 どの例文も日常なにげなく使っているようなものばかりだが、あらためてこうして解説されてみると、日本語らしさとはいったい何なのか、また英語的な文章が何をめざしているのか、いやでも考えざるをえない。この本は「英語ではこう言う」というサンプル集ではなく、「英語で言うとはこういうこと」なんだ、と納得するための本といっていい。 日本語の能力が問われるとはどういうことか。それを知るには、片岡義男が例文の日本語を解釈するその鋭いメスさばきをみればいい。「もっとも実感的な言いかたというものが、個別にひとつひとつ存在しているのが、日本語の大きな特徴のひとつだ」。これなどカスタマ・レビューを書いている人には、思い当たることがあるのではないだろうか。当人の実感ばかりがあふれて、何ら本質的なことをいっていない文章(自戒です)にいらいらするのは、私ばかりではないと思う。
~アイドルとして絶頂期にあった1964年に出版された自著「In His Own~~ Write」(彼自身の筆によって)の訳書である。この本は、一般的にはただのポップアイドルであったレノンが、レコード業界とは別の領域で才能を評価され始めるきっかけとなったようだ。もっとも、人気の波に乗ってベストセラーにはなったものの、「10ページ以上読んだファンはいない」などと揶揄されたらしい。原因は、その難解な内容にある。短編物語集の体裁に~~なっているが、題名からして「in his own right」(彼自身の権利によって)という本のもじりらしく、全編通して言葉遊びに満ちている。音の面白さのみに重点を置いて書かれている部分も多く、普通の感覚で意味を読み解こうとするのは無駄な努力と言える。 ~~ そういう意味では、日本語に訳すことは不可能である。だから、そのような困難な翻訳に挑んだ片岡義男ら翻訳家の業績をひも解き、彼らなりの解釈を楽しむのならいいが、レノン本人の感性を味わうには、その部分を差し引いて考える必要がある(それでも彼独特の世界はかなり伝わってくる)。ちなみに2冊目の著書、「A Spaniard in the~~ Works」も、「らりるれレノン」として日本語訳されている。~
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