前作の『決壊』が顔の見えない相手と世界との関係との闇を描き、 出されたアンサーがあまりにも絶望的で衝撃だった。
今作では、SF的な近未来をベースとして、「分人」というテーマを描いている。 「散影」という顔そのもののデータベース、火星への友人着陸、アメリカ大統領選挙、 東アフリカでの泥沼の戦争、無国籍国家(プラネット)、など、 非常にエンターテイメントとしても楽しめるが、著者はそのフォーマットの上に、 文学を行うという手法とり、総合小説とでも言える方向性を出している。
その結果として、今回は希望というアンサーが出されていることは好ましく、 個人的にも明日人と今日子、太陽という存在が最後にいくほど胸をしめつけ、 最後の二章は昨今あまりないような深い感動を覚えた。
平野啓一郎さんの一月物語には、近くの図書館で今から15年前に出会いました。それはまさに私が 探していた本そのものでした。1ペイジめから身震いするような感動をおぼえ、あっというまに 読み終えてしまいました。それからは、平野さんの本に夢中になり図書館の彼の本すべて読みました 私は詩を作りますが、彼の本は、とても情景が美しく私の心情にぴったりの本でした。 その後、その図書館で一月物語ばかり何ども借り、何度読んでも飽きませんでした。そうしたいきさつで、ネットで 販売しているのを知り飛びついた次第です。とても大切に宝物のようにそばに置いています。彼の新刊が出たらどんどん 読もうと思っています、ちなみに、彼の今までの本はすべて読みました。最後に立派なことは言えませんが彼は日本の 言葉をとても大切にしていると思います。
2033年、人類初の有人火星探査船の乗組員の一人ノノが精神に異常をきたし、リリアンは火星到着後に堕胎するという事態が発生。
一方、アメリカでは次期大統領をめぐって激しい選挙戦が展開。そこへある生物兵器の存在が浮上して…。
物語は実際の2000年代初頭のアメリカの国際政策を下敷きにしていることが明白です。
そのぶん、近未来SFの体裁をあえて借りる必要があったのかと思えるほど、書かれていることの多くに目新しさは感じられません。
例えば、一人の人格が多角的であるとする分人思想(dividualism)というのは、社会学でいうところの「役割の束」という人間観からさほど遠くないと思います。分人思想と名を変えたところで、新味が増すとは思えませんでした。
米国が支出を減らすために民間に戦争を委託するという話も、ブッシュ政権下の問題点として散々報道されていたので、この小説の中でことさら詳述されても何を今さらという気がしました。SFで論じる上でのひねりがあるわけでもありません。
『外注される戦争―民間軍事会社の正体』というノンフィクションの読み物のほうが、大変興味深くその問題点を知ることができると思います。
日本人乗組員・明日人の死んだ息子・太陽の代わりとして創造されたAR(一種のホログラム)もスピルバーグの映画『AI』に類似していて新鮮味がありません。
もちろんこうした新奇さを欠いた要素を用意したのも、現実味を帯びたSFとして提示するための仕掛けだからこそという見かたもあるでしょう。
確かに私も、300頁あたりまではそうした近未来の仕掛けのあり得そうな現実感に引っ張られて頁を繰ったのですが、それ以降、主人公たちが停滞して物語に大きな展開がなくなり、一方で著者の訴える思想めいたものが強くなっていくのを見るにつれ、私の中の関心が徐々にしぼんでいくのを感じました。
崇高な雰囲気の中で流れ出す音のベール。青い蝶の一曲目AsianFlowerからはそんなイメージが出来てしまった。幻想的である故、霧に霞んだ中をさ迷う感覚…それでいてダークな雰囲気では無くその場で森の音に聞き入ってしまう…そんな錯覚に陥った。このCD青い蝶は一枚で人間の喜怒哀楽や感情を表している一枚だと思う。一つのCDという音源作品ではあるが、一曲一曲がまるで短編映画を見ている気分になるぼど酔いしれてしまう。 また、トベタ・ジュンにFEATしている様々なアーティストにも注目出来る作品だ。
30人の著者による珍しい本。
なこかのコンピレーション・アルバムみたいです。
非常に短い様々な作品が集まっていて、まるでカタログのようにそれぞれの作家の持ち味がわかります。
知らない作家に触れることができるし、ひとつひとつがとても短いので、読書につきものの“疲れ”がないです。
もっとこういった短い短い小説があってもいいと思います。
続編、出ないかな
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