浅間山荘事件に至るまでのよど号ハイジャック事件や警察戦国時代とまで語られる、その他学生運動を含む事件の数々とその関係を知ることができた。また、三島事件にも立ち会っており、本書に書かれた血染めの絨毯の逸話には旋律が走った。
佐々氏の半ば愛らしさが漂う文章は、硬くなりがちな題材にいささか感情移入しながら読めるのでなかなか読みやすい。
あくまで警察側に属した佐々氏の目線であり、その連合赤軍が結成するルーツや学生運動が何故起こったかまでは言及されていない。しかし少なくとも浅間山荘事件の全貌をある側面から知ることができ、事件に興味のある方は一読の価値ありだと思う。
ことばやコミュニケーションの行き違いの問題は、常に我々に付きまとう。本書はそれを印象論や「ニュアンス」のレベルで終わらせず、科学的に言語学の一下位分野である「語用論」の観点から切り込み、明らかにしていく。
多くの「まずい」事例をあげ、ロゴスとパトス、空気を「読む」、敬語と配慮といったテーマから論じ上げていく。もやもやとしがちな文脈や意味を明解に解き明かしていく姿勢は語用論の醍醐味がたっぷり味わえるが、とくに前提知識も必要なく、楽しく読み進めることができる。
コミュニケーションの失敗を回避するヒントを与える、端々に現代日本語学のエッセンスがにじみ出た好著である。
本書は、中曽根内閣での安全保障室長だった佐々淳行氏と、その上司であった官房長官、後藤田正晴氏との働きぶりを中心とした、回顧録です。
この時期の日本の危機管理は、確固たるマンパワーに支えられて、うまくいっていたように思います。日本人としては、むしろ冷戦終了後にこそ、後藤田さん、佐々さんみたいな、有事に強い人が、リーダーとして存在して欲しいんですけれど、、、
蛇足ですが、マスコミでは悪玉にされちゃってましたが、まだヒラ大臣時代の橋本龍太郎が、佐々氏に時々さりげなくコメントしくんですが、それがすごくセクシーで、びっくりでした。
本書は企業内で各階層において起こり得る様々な問題点や悩み、心配事、不満、リスク、その他を挙げて、著者が辛口で、espritを利かせ、かつ親身になって答えてくれる体裁を取っている。ビジネスマンの危機管理に、という狙いだろうが、回答コメントは殆どが江上氏自身が銀行での実体験である。よって基本事項は一般企業にも合うが、先ずは銀行職員約25万人は読んで損はない。いずれも銀行で日常的な問題であり、「正にその通り」と読んでいて非常に興味深い。第一章から第九章まで、部下の憂鬱、上司のつらさ、あぶない取引先、トラブル110番、会社の不祥事、リストラ・人事異動・倒産、病気、家庭崩壊、危機管理3カ条と、各種リスク対応に至れり尽くせりである。本書は銀行時代の見聞・経験をベースにしているのが良かった。これが汎用的に教科書的に書かれたら面白くない。銀行では特に行内恋愛、そのトラブル、金銭問題、情報漏洩(電車網棚置き忘れ含む)、顧客癒着、被接待、新聞社会面(酒と喧嘩・痴漢)掲載等々には非常に厳しい懲戒措置を取るので、その不祥事対策にも予備軍はよく読んでおいた方が良い。また上司・部下等人間関係や、転勤、左遷、出向、転籍、早期退職挙手等についても幅広く触れている。一般的に銀行員は50歳過ぎでグループ会社や外部企業に転籍するが、特にオーナー会社への就職斡旋話には注意すべきで、本書もそれに触れている。近々出向の人は先方の社長や経営状態をよく調べてから返事する方がよい。本書巻末の危機管理3カ条は、(1)違和感を覚えること、(2)その原因突き止めに判断すること、(3)そして行動すること。つまりはおかしいと思ったらそのままにせず、行動して自身自らリスク回避に動くことが肝要だ。それにしても江上氏のいたDKBには物凄い役職員がいたことに正直驚かされた。
リーダーシップを語る本は数多くあるが、切り口がなかなか独自性があって面白い。
リーダーが問題解決に当たる際に心がけるべきことについて書かれているのだが、自己のコントロールの仕方や問題との距離の置き方を独特の比喩を交えてわかりやすく書いてある。
翻訳に否定的なコメントもあるようだが、日本語として不自然に感じる個所は少なく、十分に論理を追うことができるレベルだ。海外の本の典型的パターンだが、実名と実例をあげて豊富なケースを説明しているのもよい。
ことさらに「政治力」が要求される組織に所属するリーダーには参考にする点が多いのではないか。
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