伝統的な魚の発酵食品である塩辛、クサヤ、魚醤油、ふなずし等を例に挙げて、伝統的な製法段階での発酵の関わり方を科学的に示した興味深い著作となっています。微生物の役割が明らかになる遙か昔から、人々の知恵が伝統となって受け継がれ、各地域での食の豊かさをもたらして来た、いわば、時空を超えた人々の英知が詰まっている食品だと感じられる本です。
生活の変化に伴い食習慣が変えられてしまった現代では、時間と手間と伝統的知識が詰まった食品がまがい物によって取って代わられてしまっています。ワインのエイジングは珍重されますが、発酵食品に必要な貴重な時間はゴミの様に扱われ、発酵食品の味も同じように扱われています。人工甘味料、調味料、着色剤などの、本来必要とはしない添加物、化学合成物質などによって、本物に似たような味が作り出されています。これらの添加物は必要なのでしょうか、安全なのでしょうか。
年を重ねるにつれ味覚も変化し、より複雑な食物の味を求めていく上で、あまりにも幼稚化した食文化しかない時代が来たとしたら、祖先の英知の結晶を数え切れない人々の手によって伝えられて来た食文化がゴミの様に捨てられる時代が来たら、・・・。と思うと憂鬱になります。消滅しない内に、記録だけでも残してもらいたいと感じました。
私は魚を料理する時、単品でメインとして扱う事が多く どうしても煮姿や焼姿が崩れないように 臭みがないようにと、お肉より構えて料理していたのですが この本にはトマトを半分に切って鰯となべでゴロっと煮たり かじきをコーンの缶詰と一緒に煮たり ぶりを白菜と大根おろしで煮たり、あじとアスパラをマヨネーズであえたり。 普段使いのものが沢山。 こんな考え方もあるんだなぁととても参考になりました。 その他にお洒落なレシピもいっぱい載っています。 「さば+バター」サバターという炊き込みご飯が載っていて この本を見て1番最初に作ったメニューです。 お醤油とバターがサバとぴったりですごく美味しかったです。
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