シルクロードオンライン 【始皇帝陵】土兵
始皇帝陵と兵馬俑 (講談社学術文庫) |
本書は『始皇帝の地下帝国』の出版後に様々な始皇帝陵の探査の成果が出て、それを踏まえて
書き直されたものである。四章からなるが、章毎の連続性は低く、始皇帝・始皇帝陵に関する 四つの話と見るべきである。 第一章「新発見相次ぐ始皇帝陵園」では、2004年までに分かる限りの始皇帝陵の資料が提示さ れる。ここでは現在の始皇帝陵の有様も著者の主観で述べられ、恰も遺跡巡りの観光手記である。 第二章「始皇帝の死と二世皇帝の実像」では、絶対権力者であった始皇帝と、ただ継がされた だけの二世皇帝という従来史観では無く、古墳から出てきた文書や始皇帝の顕彰刻石と史記を 比べることによって、史記の背景や始皇帝よりも寧ろ積極的な面もあった二世皇帝の自発的行 動を浮き彫りにするのに成功している。 第三章「秦王陵の伝統をさかのぼる」では、始皇帝陵が作られるに当たってその手本或いは雛 形となった、戦国七雄の秦の王陵があり、源流であるそれらを訪ねることで、始皇帝陵のポジ ションを見ようとしている。ここも著者の遺跡巡りの手記と言える。 第四章「始皇帝陵の地下世界と地上の帝国」では、史記に水銀の川が流れると記載され、20世 紀にそれが実証された始皇帝陵の地下宮殿、その構造や意図について言及される。そこには当 然ながら、当時の思想や地上での秦帝国が反映されている。特に立ち姿が安定するように下半 身が太めに作られ尚且つ表情豊かな兵士の俑は、日本でも知られるようになった。その兵馬俑 が何を意味するのかを論じている。 詳細な資料と様々な吟味からなるが、それでも始皇帝や始皇帝陵については不明な点が多い。 本書を読むことによって、歴史の奥深さを見せられ、史記に描かれた世界をそのまま信じる恐 さを教えられた気がする。 |
始皇帝の地下帝国 |
今年の新年に初めて北京へ行った。北京の北に在る万里の長城の一角を見た時は本当に腰を抜かした。その構想力の大きさには、ボーッと飽きずに眺める事しか出来なかった。欧州・北米大陸でも驚く事はあったが、これほどの事は無かった。中国とは一体どんな国だったのであろうかと色々思い巡らしても、自分の知識の中には、残念ながらこの体験を具体的なイメージを作ったり、言葉にする材料がない事に気がついた。伝わって来る様々な中国情報がこの時から異様に自分にとって居心地の悪いものに感じてきた。春に機会があって、西安へ行き兵馬埇博物館を見た。此処でも腰が抜けた。早速帰国して読んだのがこの本であった。まさに中国皇帝が即位と共に自分の陵園を造り始めてきた伝統の中で、秦の公王は前247年に即位し、前221年に始皇帝となり前210年崩御、前206年秦帝国滅亡とその間40年余りの間に行った事が、この本の中には大きな構想を掴まえて記述されている。始皇帝陵から窺い知る事のできる歴史的空間的ヴィジョンの巨大さは一体何なのかと考えてしまう。我々が今知る事が出来る兵馬埇は始皇帝陵園の内の、悲しい位、ほんの一部である。兵馬埇が造られてほんの50年後に造られ始めた景帝陽陵とはどのように違うかを知れば、又兵馬埇のこれから何が飛び出して来るか解らない凄さもはっきりと読み取る事が出来る。この時代が、その後のこの国の2000年の歴史を作ってきたことも革めて考えてみたい。毛沢東の中国は、新しい社会システムを作り上げてきたと言う意味に於いて、秦の始皇帝以来の事ではないかと感じている。 |
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