埴谷雄高独白 死霊の世界(4)
死霊(1) (講談社文芸文庫) |
人は生まれたときから人であろうか?
それともその人生の過程で人となるのか? 我々は人間である。では、人間とは何だ。 動物ではなく人を人間たらしめているものは。 未だ動物から脱却できず、人になれぬものには理解できないのがこの本であろう。 もし、この本が理解できぬなら貴方はまだ人ではないのかもしれぬ。 理解できたのならば人でなく人を超えた超人になるかも知れない。 しかし、それこそが人なのであろう。 全てに意味は無い。全てが無意味である。 では、人生とは如何に? |
死霊(2) (講談社文芸文庫) |
この巻は全編白い霧、暗い闇と不透明な靄がかかった背景に包まれている。夏の明るい日差しの下、透明な川の流れに身を任せて主人公を取り巻く人物達が喋り捲る場面さえ、暗い影を感じる。ことに高志が語る過去の同士への制裁、明らかにされる死者の影、付きまとう夢魔の場面はモノクロームの中に閉ざされて読んでいて湿り気さえ感じる。 暗い印象の背景に反して、始終議論に興じている首猛夫やお喋りで作者に翻弄されている読者の代表のような津田夫人はともかく、高志・与志の兄弟を始め、与志の婚約者安寿子や寡黙な黒川までがよく喋る。登場人物が各々の思いを抱えて明らかにしようと会話が進むため、死霊(1)に比べて物語が解り易く面白い。(1)で尻込みしてしまった人にもお勧め。 |
死霊(3) (講談社文芸文庫) |
中学校の卒業間近、人の来ない屋上に通じる階段の踊り場で、宇宙やこの光の反射で見える現実が全てであろうかと友人と語り続けた事がふと懐かしく思い出させられる7章です。
また最も吹き出すシーンが多いです。 昨年、雪深い霧積温泉で何故か養殖されていたテラピア(中東のガリラヤ湖の原産)が、本作中で焼き魚にされて喰われたことを訴えるのには因果さえ、感じてしまいました。 しかし途中で終わってしまっては困ります。 だいたい最後の晩餐にひとり欠けている。 多分私は作者の真意などお構いなしに楽しんでしまったのでしょう。 あらためて、一気に読める環境が好かったです。 |
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