私が初めて乱歩の芋虫を読んだ時は、『芋虫』になった夫の姿を化け物としか想像できませんでした。かつて人間であった『芋虫』、としか思えなかったのです。
丸尾氏が描いた夫は、確かに人間でした。 ああ、こんなにも彼は人間らしかったのか。そう思わせてくれました。
とても切ない物語です。
娯楽映画としては素晴らしい。伊東四朗演じる大富豪が地上の楽園「パノラマ島」なるものを実際に作ってしまうわけだが、裸体の女性があちこちにはべっているのかは、特段たいしたことはなく、結構笑える。処刑場のシーンのほか、エグい場面も数か所ある。全体としてかなり倒錯しており、猟奇的、幻想的な色彩が強く、いかにも江戸川乱歩的である。 推理映画としてみると、ちょっと物足りない。誰が犯人なのか分からないということはないし、最後の叶和貴子の告白も、特に驚くほどのものではない。人間花火のシーンは、まあ驚くが、度肝を抜かれるほどのことはないし、初めてパノラマ島に来たはずの叶和貴子がなぜ花火の仕組みまで知っているのかという疑問が先に立ってしまった。また、カラスの勘太郎も、気持ちは分かるが、わざとらしくていただけない。 しかし、叶和貴子の脱ぎっぷりは見事で、男性陣としてはうれしい限り。そのほかの脇役女性陣も脱ぎまくる。まさに正月番組ならではの大サービスといったところか。私としては宮下順子が一番好みだが、竹下順子のヌードはない。 全体としては、本格的な推理ものかと期待すると期待はずれに終わるが、若干の推理を交えた娯楽番組としてみれば楽しめると思う。
私には、ときに場面が視覚的に浮かびにくく、その魅力がわかりにくい物語があるのですが、その筆頭がこの『パノラマ島・・』でした。
まあ、女性が読むと男性の夢の世界は、どうしてもね、とその魅力を知ることを諦めていましたが、丸尾末広氏の脚色・作画により、その美しさが「一目瞭然」、懐かしくもリアルな大正から昭和初期の文化、当時の作家たちが芥川龍之介の自殺に如何に衝撃をうけたか、その理由としての「ぼんやりとした不安」を引用しての展開、美しいけれど一部歪む海中の景色、遠くから眺めると立体曼陀羅のような小山、そこらじゅうにいるフリークス的な人々、いかがわしくかつ美しい酒池肉林、そして清々しいラスト。
・・・すごい。絶対に無理、と思いこんでいた「パノラマ島」の魅力を、実際に足を踏み入れたかのように満喫できました。違和感のない江戸川乱歩世界・時代観。原作のあるコミックでこういう読後感は珍しいですね。
エロ・グロ・ナンセンスの時代に嫌悪感のない方、オススメです。
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