項羽と劉邦の時代が過ぎ、英雄が多くでて日本では好まれる三国時代までの流れを追っていく小説。次にくる三国志の時代の伏線を引くために興味を惹く文章になっている。 この時代には西域の拡大に伴う英雄が多く排出され、しだいに「中国」が拡大している様子がよくわかる。しだいに国が膨張をはじめ、視野が広がっていく。大国となった後、内憂により破綻していく。 歴史的には安定していた時代のように見えて、内紛の続いた様子をよく描いている。
一般的な知識プラスアルファが書かれているので、中国史の入門書としてはばっちり。これを読んでおもしろいと思った時代は、さらに自分で専門書を探して読む、という形で知識を補えば良いのではないでしょうか。 政治的事件だけでなく、王朝交代の背景にあった社会的要因などもところどころで説明されていて、これが面白い。学校で習ったことはわかりにくくて覚えられなかったので、こういう教え方をしてくれれば良かったのに、と感じました。 個人的には著者の「ですます」調に違和感を感じたのですが、2巻、3巻と読み進めるにつれて、まったく気にならなくなりました。
同著者、陳舜臣「中国の歴史」にくらべて読みやすく感じた。 これは原著が優れていたのか、それとも著者の筆力によるのかは、私には知識がなくてわからないが、非常に面白かった。 特に時代の流れ、どうしても一人の人間によっては解決できないようなうねりが、各時代のヒーローたちに、なぜそのようなことをさせたのか、がわかるような気がした。
歴史の熱心な調査、研究に異議を挟むものはいないと思う。そしてそれに基づいた人物描写にも。物語は日清戦争前夜、孫文と康有為の上書から始まり、台湾の割譲の際の物語、改革と政争、ヨーロッパの侵略とそこにある軋轢。そして清帝国に住む者たちの苦悩と閉塞感、危機感。そんな中孫文は革命を志し、世界中を飛び回り革命派が組織されていく。いくつかの蜂起とそれぞれの挫折。物語は揺らぎなく進んでいく。こういう時代だからどの筆者が書いたものでも読み応えがあるが先生の筆ならなおさらではないだろうか?
安史の乱の後命脈を保っていた唐が黄巣の乱をきっかけに遂に滅亡、五代十国の混乱期を経て北宋の時代に入るが、武より文を重んじる官僚国家の故か、遼などの周辺の国に悩まされ、遂には金に華北を奪われ、ここに再び南北(金と南宋)対立の時代を迎える。その間にチンギス・ハン率いるモンゴル帝国(元)が勃興し、金・南宋は滅亡する。本書が取り上げるのはそれだけ長い期間である。そのせいか、記述は要を得ているものの、駆け足気味なのが気になる。しかし、黄巣の乱の凄さとそれが唐に与えたダメージ、官僚国家宋の党派争いの凄まじさ等、歴史発見の面白さを堪能させてくれる点では他の巻に劣らない。中でも私に強く印象を与えたのは、北宋の風流天子・徽宗の政治面でのあまりの無能ぶり(苦しんだ民が団結する水滸伝の時代背景になったのはもっともである。そして金と結んで遼を滅ぼしたものの、金を怒らせたあまりの背信ぶり。これでは金の南進を招いたのも無理はない。)、北方民族の江南に寄せるあこがれの強さ(無理な江南侵攻を企てて失敗し、皇帝の地位を失った金の海陵王がその代表)、そしてユーラシア大陸の大半を征服したのに、意外と元が南宋制圧に苦労したことである。中国南北の自然・経済力の差はそれだけ大きかったということだろう。本書でさらに嬉しいのは、南唐後主、北宋の王安石と蘇軾の心に染みる詩を紹介してくれていることである。激動の時代の中で優れた詩が生み出されたことを我々は忘れてはならない。さて、最終巻まで読み終えた読者は中国史の面白さの虜になったことだろう。残念ながら本シリーズは明・清の時代は扱っていないが、例えば同じ作者の「中国の歴史」等、それらの時代をカバーする本は多数あるので、是非自分のお気に入りの本を見つける楽しみを味わって下さい。
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