世に「秘曲」というジャンルがある。温泉で言えば「秘湯」である(わざわざ温泉で言い直す意味がないか?!)。これは「知る人ぞ知る」といった秘め事の喜びの性質のもので、私も「秘曲」探訪は大好きである。ひと昔前、秘曲の代表格(矛盾のある言葉だなぁ)として、例えばグラズノフの交響曲やアレンスキーの室内楽などがあった。
それにしてもグラズノフの交響曲はだいぶ一般的になったとは言え、その認知度はまだ内容に追いついていないかもしれない。そのような背景にあって、「グラズノフの交響曲ってどんな感じ?」という方にまずオススメしたのがこのディスクである。
第5交響曲は、グラズノフの作品群の中でも最もインターナショナルな通力を持った作品だと思う。そもそも、この作曲家は若いころから欧州やアフリカ大陸を旅行し、様々な音楽要素を吸収していた。だからその作風は「国民楽派」というジャンルに囚われない国際色がある。そしてワーグナー的な高揚感を兼ね備えて、充実した旋律によって編まれたのがこの第5交響曲。まさに傑作。構成は古典的で、終楽章のロンドも懐かしいほどだが、それだけに王道の力を秘めていて、分かりやすく、直裁だ。それにしても、ホセ・セレブリエールとスコティッシュ・ナショナル管弦楽団はどういうわけで、これほど共感豊かにグラズノフの交響曲を再現するのだろ?驚いてしまう。
「四季」も名演。私が、もう一方でよく聴くアシュケナージ盤が一本気な演奏なのに比し、セレブリエールは細かい情景描写に専心している。そのためかCDトラックがシーン別に細かく割り振ってあるのも生きていて、とてもいいサービスになっている。
本書は個人事業主が企業組織(会社など)へ移行しようとする際、心得て起きたいヒントを学ばせてくれます。 家族的な商売と会社による事業とでは、そもそも考え方も転換しなければなりません。その踏ん切りの悪さがせっかくの法人なりのメリットを打ち消してしまう事にもなりかねません。 会社にする事で、いろいろな点で組織化が可能です。例えば、会社というだけで信用力が増し、大企業との取引が可能となったりします。また、税理士さんや社会保険労務士さんに依頼をし、企業内部の整備を進める事も可能です。しかし、経営者自身が変わっていないと、それらの改革はいずれ、萎んでいってしまうのでは無いでしょうか? 経営者が企業化するに際して必要とされる心得とは、日常的な仕事の仕方の中でのポリシーです。 実務書などでは、触れられない、ごく日常レベルの仕事の中での経営者の改革の本質を、本書で学ぶ事ができます。 矢場とんさんでは、それまで、従業員さんの無断欠勤が当たり前だったという件があります。こんなところから、脱家族経営を進めていく姿勢を詠み進めていく事ができます。 本書は50項目に分かれ、テンポ良く読み進めていく事ができます。文章表現が平易で大変分かりやすいです。著者の意見はほとんど無く、経営者の行動・考え方、及び、会社経営上の事実、のみで内容が構成されている為、大変客観性が高いところが好感を感じました。 ちょっと価格が高いと思いましたので、満点となりませんでした。 【内容紹介】 ・取引先との関係 ・お金の使い方 ・儲ける理由 ・出店の心得 ・従業員の家庭 など
伊勢神宮をはじめとするメジャーな神社から、恐山、石山寺、高野山奥の院、沖縄の御嶽など、ユニークな霊場に至るまで、20以上におよぶ聖地が、320頁のボリュームで豊富なカラー写真(著者撮影。これがプロ並み)とともにかなり踏み込んで紹介されている。 最初に30頁ほどにわたって、神社や霊場についてザックリと解説があり、これがポイントを押さえた得難い内容。この導入により、日本人の信仰の全体像がバランス良くクリアーに見通せる。
建築家の著者によれば「世界遺産からローカルなものまで有名無名さまざまにランク付けされた神社霊場を予見なく」見て、厳選したという。確かに著者は列島各地の神社霊場を何度も、くまなく歩いていることが随所に読み取れる。
特筆すべき点は、とりあげられた個々の聖地では必ず「発見」があるということ。
場の空気を読むことからはじまる著者のアプローチは新鮮。探訪のなかで謎を解いてゆく記述スタイルを採っているが、有名どころでも、上賀茂、厳島、諏訪、春日、住吉、高野山奥の院などで類書にない、目からウロコの指摘がある。この点で、たんなるガイドブックとも紀行とも大いに異なる。神社の見方を伝授してくれる本である。
(とくに読み応えがあったのが、出雲大社、伊勢神宮、諏訪大社、春日大社、沖縄の御嶽など。また、群馬の貫前神社、兵庫の石の宝殿などこの本で初めて知ったが、きわめてユニークで驚いた。余談だが、出雲大社の神様に縁結びをお願いするのは女性にとってかなりアブナイ?というくだりでは思わず笑ってしまった)
【追記2011年3月】本書はフィールドワークをとおして神社の誕生を追っているが、最近出た同じ著者による『伊勢神宮の謎を解く』(ちくま新書)は、まったく異なる観点―歴史的・政治的観点―から神社の誕生に迫っていて非常におもしろい。併読をお勧めします。
北の大地を開墾するために矢臼別に60年近く留まり、身の丈に合った平和運動を貫いた男の生涯を描いた感動的な著作であるとまず感じた。 タイトルの「反戦地主」川瀬さん(2009年4月に他界)は、「その地に居たいから居る」という素朴な思いが自分を支えてくれたと、平和希求の波乱の人生を振り返る。 開墾した地は、自衛隊の軍事演習場の開発計画の対象となり、運命的に反戦運動が始まる。 小生も小学校のころ社会科の授業で根釧台地のパイロットファームを習った記憶がある。広い大地で欧米式の機械式の大規模酪農をやる農場のことで、政府主導のもとで多額の借金をして、開墾者は大地の未来に賭けた。 本書により、矢臼別もパイロットファームの一角をなし、演習場候補地からの立ち退きを迫られた開墾者が借金返済のために、土地を手放さざるを得なかったという裏側を教えられた。 川瀬さんは、「有るカネを有るように使う」主義で、借金をせずに身の丈の生き方をしてきた為に「その地に居たいから居る」という思いを遂げることができた。 演習場の中に居住することで、日米安保条約に伴う日米の軍事関係の変化、演習場での戦闘演習が国外での戦争に果たす役割が自ずと見えてくる。そして、非戦の立場を最後まで守ってくれるのが平和憲法であることを実感するにいたる。 本著の面白いところは、観念としての平和運動ではなく、砲撃音に響きと振動により常に戦争との関わりを感じさせる日常生活を送ってきた人々の生きざまを通して、身の丈の平和運動を教えてくれた点にある。一人の男の心の迷いと思いを家族が支え、地域が支え、同志が支え手始めて、国の平和が保たれていくプロセスを辿りたい方は是非一読されてはいかがでしょうか。 少なくとも、安全保障という国益のもと、核兵器の保有の議論をする輩よりも、身の回りのできることから活動を始めた人間の生きざまのほうがずうっと説得あると思いました。
~マスカーニの「カヴァレリア・ルスティカーナ」と並ぶヴェリズモオペラの代表作がレオンカヴァーロの「道化師」。この録音を最初に聴いた時には、異常なほどつややかに艶めいた音響美が強く印象に残った。 そのあくなき美の追求はカラヤンならではの特徴であるが、いわゆる外面的な演奏と批判されるものかもしれない。カラヤンの芸術を知るには適しているが~~、好みの別れるところだろう。歌手は主役のテノールはもちろんの事、それぞれに上手い。役柄が演じ切れていないという印象を受けるのは、それぞれのアリアが楽器のように扱われているせいだと思う。~
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