初めてこれを聞いたとき、この後が辛いなと正直思った。これを超える作品は出来ないだろう。いくら天才ボウイでも無理だ。「完璧に作りすぎた」と思った。その後あまたの作品を世の中に送り出したボウイであるが、これを超えたものを出したかといえばやはり「NO]と答えざるを得ないと思う。様々なアプローチからさすがはボウイと思わせる名作はいっぱいある。「アラディン・セイン」「レッツ・ダンス」「ロウ」それに私のお気に入り「ピンナップス」そのほかにいっぱいある。ただ最高峰はこの「ジギー・スターダスト」に尽きます。作品としての完成度が極めて高い。初めのかすかな音から「ロックンロールの自殺者」まで構成が見事という他はない名作です。
ひとでなし役をやらせたら右に出るものがいない David Bowie が吸血鬼を演じる本作。永遠の 美が与えられているという設定とそれが永遠ではなかったという設定のいずれもが、彼に良く マッチしている。タイトルは、吸血鬼なのだから hunger よりも thirsty の方が適切ではないか と思っていたけれど、OALD8によると a strong desire for something という意味があるので、 求めているモノは「血」だけではないのか、と納得。
VHS版は持っていたけど画像も音質も悪くDVDを購入。
映像自体はあまり変化はないけれど音は籠った感じが減り聴き易くなっている。 なにしろ時代が古いので技術的な部分は期待出来ないが、それを超えて余りあるその時代の音楽表現と それに呼応したオーディエンスとの一体感と迫力は今でも見る価値がある。
当時日本にはロックと呼べるような音楽がなくて、必死でラジオや数少ない雑誌で聴きたい音楽を探していたその時代の若者にとって ボウイーは本当に新しい時代のヒーローだった。 今までになかったアートと音楽と思想が合体した表現がそこにあったのだから。 日常を切り取った歌詞ばかりの日本の4畳半一間フォークソングや歌謡曲には絶対にないロックスターの姿がそこにあった。
耳障りの良い音楽や気持ちの良い音楽とは無縁の、現実からトリップできるものがボウイーの曲でありボウイーそのものでもあった。 それを見事に時間を切り取って再現して見せている映像先品である。
カリスマってこういう事か!と見れば一目瞭然。
当時クイーンも含め、特にボウイーは色物扱いされ、ボウイーが好きだと言うと日本のロック好きな男性達はこぞって嫌な顔をしたものだった。 ボウイーなんぞは女コドモの聴くもの!と馬鹿にされたものだ。 今でも懲りなく日本ではビジュアル系などと下らないカテゴライズをして日本のロックの発展をメディアが阻止しているけど。 いつの時代も新しいものを受け入れる先見の明は女コドモにあるようだ。皮肉な事に。
グラムというくくりにカテゴライズされ、マークボランと同類に扱われたが、根本的に似て非なるもの。 ボウイーはボウイーという新しいジャンルを作ったが誰にも真似することは出来なかった。
この映像作品はライブ映像だけでも価値ある一本だが、VHSでは無かった 監督と音楽プロデューサーの映像を見ながらの1時間近いトークがあり字幕もついている。 これがその時代の特殊性や閉塞性を実に上手な言葉で語ってくれている。 この監督がいたから、本当は30分の本編が2時間もの素晴らしい作品として後世に残せたのだと感動する。
どの時代でも損得無しで作品を残したいと思う人々の情熱により私達はその内容を今でも目の当たりに できるのだと、メディアに翻弄されいるこの時代に警鐘を鳴らす意味でも価値ある一本である。
是非、時代とボウイーとが同化した瞬間を今の若い人達にもみていただきたいと思う。
私は、リアルタイムでボウイを経験してきたわけではないので、私のような後続のボウイファンにとって、ボウイの過去の映像記録をDVD化してくれるのは、とても嬉しい限りです。しかし、本作を視聴した後の正直な感想は、1枚目と2枚目に内容の差がありすぎるということです。というのも、1枚目はボウイの一番いい時代(レッツ・ダンスあたりまで)ばっか集めており、2枚目はボウイ低迷期から`hours...'あたりまでの曲を収録しているので、また後で見たいな~って思ったときに、どうしても1枚目のほうばかりを見てしまいます。(笑)ま~とにかく一言で言うと、1枚目はボウイの変容ぶりっていうか(激変ぶり)にビックリ!ってな感じで、2枚目はボウイの渋いおじ様的魅力にうっとりってな感じです。あと、個人的に印象に残った映像としては、「火星の生活」での、ボウイがメイクアップ姿(キョンシーみたい)で歌ってる映像で、初めてみた私にとっては、とっても気持ち悪かったです・・・。それと、アルバム「ロウ」に収録されている「ビー・マイ・ワイフ」で、ピエロみたいな顔をしたボウイが、憂鬱じみた表情を浮かべながらも、カメラ目線に真剣な眼差しを送っている姿が、何か考えさせられるものでした。このように本作には、多くの貴重な映像が収められております。私のような後続のボウイファンの他、多くの方にもこのDVDをみてボウイのスゴさを感じ取ってもらいたいです。
B面の衝撃は忘れられません。これを聴いた中学生は高校行く気がなくなります。当時、Subterraneansはヘッドフォンで何度も何度も繰り返して聞いてました。あらためて考えるとLOWってタイトルも凄い。落ち込みますね。Tangerine DreamのPhaedraとか、KraftwerkのMan MachineみたいなGerman Rockとして聴いていました。プログレです。 このB面の世界はBowieの個性のLowな部分を凝縮したエッセンスで、次作HeroesのB面でも同じことにトライして失敗してます。というか、こんなの持続できない。あまりにも短命で、まさにこの瞬間だけのピークでした。故に、美しい。 しかし今聴くと、A面のカッコよさが響きます。Sound And VisonやBe My Wifeは実は美メロなPOPチューン、Breaking GlassはIggy Popが歌ってもかっこいいパンクロックだし、Always Crashingのクレイジーさは完全に麻薬的です。こっちのほうがBowieの本質のように聞こえるけれども、そう聴かせるための演出がB面の世界なのかも。CDでは無理ですが、先にB面聴いてからA面聴くと、印象が変わります。社会復帰できそうな気がする。 Diamond DogsのGramm、Young AmericansのSoul、Station To StationのHard Rock、全部総決算してテクノプログレにまとめ上げた傑作だと思います。どこまで本気なのかわからないところ、どこまでも深読みさせるところ、それを遠くからニヤリと眺めているようなところが、このころのBowieの最大の魅力です。ホント、宇宙人みたい。
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