矢野絢子の4枚目のフルアルバム。 愛を歌った曲たち。 前作の『星ヲ抱ク者』は全体にとてもダークな感じで、歌詞も重いものが多かった。 それに対して今作はポップな仕上がりになっていると思う。 ピアノはもちろんだがオルガンなどが良い感じに曲を引き立たせている。 しかしポップといっても矢野絢子らしさを損なっていないと感じた。 愛の迷路は圧巻だった。
こういう和風なタッチのシンガーソングライターはしばらくいなかったのではないか。このアルバムの中で最も優れた歌曲である「吉野桜」ではそれが最も色濃く出ている。全体的にピアノの弾き語りというシンプルな構成だが、彼女の力強いヴォーカルと愛称はとてもいい。「ふたつのプレゼント」や「明るいほうへ」等テンポも一辺倒でなく曲のバラエティも豊富だ。70~80年代のフォークを好むリスナーにも洋楽の特にシンガーソングライターファンにも十分にアピールできる作品。
ファンあるいは一部の音楽ジャーナリストの間では「矢野絢子はライヴがスゴイ」という定評がある。
インターネットでざっと検索してみても、彼女のライヴの噂があたかも「伝説」のように流れていることに気づくだろう。曰く「学園祭のライヴではじめて観たが、リハーサルから圧倒的で、すでに人の群れができていた」。曰く「テレビ収録のリハーサルでスタッフが思わず聴き入り驚嘆し拍手が湧き起こった」。などなど。彼女の活動拠点の高知市在住者たちのブログをたんねんに当たってみても、矢野絢子のライヴをたまたま観て鮮烈な印象を受けたという記述が少なくない。8年前に高知を旅行していたときに街角で偶然に彼女の歌を聴き、それ以来ずっと彼女のことを覚えていた、と日記に書いている若者もいる。
このDVDはデビューアルバム『ナイルの一滴』発売にあわせて行なわれたツアーから収録されている。そのため収録曲は同アルバムに準じた内容となっている(同アルバム未収録の「一人の歌」「ブーツ」などの名曲も入っている)が、演奏はかなり違った斬新なものに仕上げられており、新鮮な驚きと楽しさに満ちている。がしかし、よく聴いてみると、このDVDの編曲のほうが曲のテーマをより深く引き出していることに気づく。一つ一つの歌が本来の姿を取り戻しているかのように聞こえてくる。
矢野絢子の歌とピアノの圧倒的な力と情感はもちろんだが、このDVDでは、彼女をサポートする史香というヴァイオリニストの素晴らしさを目の当たりにすることができる。矢野と史香の楽曲はまるで血を分けた姉妹のように寄り添い、この2人にしか創り得ない至福の空間を創出する。おそらくまったく性質の違うはずの音色をもつ2人が、ここまで息が合い、また独特の世界を創り出す。その音の独自性とレヴェルの高さに驚くことだろう。2人の奏でる楽曲の素晴らしさ。史香なくして矢野の音楽は考えられないと感じるほどに強烈な印象がある。
今作はドラムスなどリズムセクションも加わった新鮮な作品集でした。
アルバム一枚を通して物語のような構成で曲が続き、
一枚の完成された作品として楽しむことができます。
弾き語りの彼女の魅力に加え、パワフルなアレンジや繊細なピアノソロも聴くことができ、
まったく新しいタテタカコさんに出会える一枚です。
私はこの作品が大きなターニングポイントになる予感がしました。
沖縄の某CDショップは即完売だったみたい。
犬の遠吠えが染みます。
当たり前だが、五七五の“短歌”集ではない、短“歌詩”集。最初、読み間違えていました(笑)。
矢野さんの詩(歌詞)それぞれから一部が抜粋され、テーマ(?)ごとにまとめて並べられている。
個人的には、この“テーマ”が興味深い。なぜ、この曲とこの曲とが1つのジャンルなのだろう、などと考えてしまう。
他に「お話」(創作短(掌)篇)、ライヴチラシからの抜粋(?)、ディスコグラフィ、年表を収録。
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でも、ありきたり(同種の試みは既にたくさんある)だけど「全歌詞集」的なもののほうが、良かったんじゃないのかなあ。
抜粋版というのは、作り手(エディター)のぎりぎりのセンスが、より問われるわけで。
この本は、そういう意味では、ちょっとどうなんでしょうか…。
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