☆テキサスの田舎から、自分の肉体美を武器に、ニューヨークで一旗あげようとやってきたジョー(ジョン・ヴォイド)。最も女性が好むスタイルを信じ、カウボーイ姿で町を徘徊するジョーは、じきに目論みの甘さと場違いに気づく。そんな彼をカモにしようと、ぺてん師のリッツオ(ダスティン・ホフマン)が近づいて来る。まるでゴミ溜めから涌き出てきたような男だったが、何故かジョーはリッツオを見捨てる気にはなれず、やがて2人の間に奇妙な男の友情らしきモノが芽生える…。という物語で【アメリカン・ニューシネマ】には、こんな世間体からはみ出した男たちの人間ドラマが多い。監督は『或る種の愛情』、『遥か群衆を離れて』、『ダーリング』、『イナゴの日』 、『日曜日は別れの時』、『サンタリア・魔界怨霊』等々、辛辣な諷刺を盛り込んだ問題作やキワドイ内幕劇を手掛けてきた、イギリス出身のジョン・シュレシンジャーが担当。彼にとっても初のハリウッド進出作品であり、現代のニューヨークをクールに描いた。そこにはもはや夢や希望、もしくは摩天楼の世界ではなく、ありとあらゆる人種と彼らの苦悩や挫折感を抱え込んだ、ごった煮のような町にした見えない。吹きだまりの中で、口汚く罵詈雑言を繰り返す2人に、虚しさや寂しさを共有し、不幸を分かち合った断ちがたい純粋な友情を、この映画を通して私たち視聴者は見つける事ができる。そして、旅のフロリダ行きのバスの車内で、ボロボロのまま死んでしまうリッツオ。彼の遺体を抱いて呆然と座っているジョーは、テンガロンハットを捨て、新しい道を模索する。この映画の唯一の救いは、どんな困難にぶつかろうとも決して諦めず、ドン底からはい上がる力を暗示して終幕を迎える部分に尽きる。ハリー・ニールスンのテーマ曲「うわさの男」が強い印象を醸成している。D・ホフマンも確かに抜群の名演技を見せてくれるが、筆者的にはストイックでチクハグ?な魅力を発散している、いかつい風貌が特徴の性格俳優ジョン・ヴォイドの飄々な渋味たっぷりの力演に軍配をあげたい。第42回アカデミー賞で、作品賞と監督賞、脚色賞などを受賞。ほろ苦いユーモアと悲哀が入り交じったジョン・シュレシンジャー監督バージョンの【弥次喜多道中記】 と言うべき、正真正銘の名作である☆。
オープニングは希望に満ちた目を持つジョン・ヴォイトとジョン・バリーの明るく 少しせつないメロディの曲から始まる。私は最初この映画は男のロマンを描いた西部劇だと思っていた。 実際の内容は えらく退廃的なものだった。その中でジョン・ヴォイトとダスティン・ホフマンとの純粋な友情やほんの少しのユーモアが光る。ジョン・ヴォイトの芸術的な妄想やトラウマの表現の仕方は見るものを圧倒させ、監督ジョン・シュレンジャーの力量をうかがわせる。 挫折はどんな人にとってもドラマなんだと実感する映画だった。
映画の中に効果的に使われているクラシックをまとめたCD。クラシックの入門にもgoodです。何よりも良いのは、どの曲も「名演」と言われる演奏を選んで載せている点です。カラヤン、ラトル、ムーティーなどを集めたお得な一枚です。
僕は23歳で、この時代の映画がよくわかりませんが それでも4回くらいみてしまいました。それだけ良い! です。ニルソンの『噂の男』で始まる爽やかなこの映画は しかし哀しい結末を迎えます。 『イージーライダー』や『おれ達に明日はない』はない に通じる若者の苛立ち・絶望が感じられます。ニューシネマの 中では上記の作品より分かりやすくて好きです。
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