これはやはり映画館のスクリーンで観たい。
特に前半の砂漠の景観に人や駱駝を織り込んだ描写は驚異と言わざるを得ない。
カメラが我々の眼となりロレンスと共に旅をしていく、これぞ究極の観光映画の決定版である。
難しい政治ドラマの部分ははどうでもよろしくこの壮大な旅を満喫しようではないか
。
砂漠映画と思いきや後半では、雪も舞い散る山岳地帯に舞台は移っている。
次回作『ドクトル・ジバゴ』の「雪」を遥かに予告するものとなっている点がすこぶる感動的だ。
まもなく('08/12/20〜)新宿テアトルタイムズスクエアで公開される。 可能な方は、先ずは砂漠の美しさを大スクリーンで堪能して、それからDVDを購入する事をお勧めする。 観れば、何度も観たくなると思うし、このDVDは特典映像が充実しているから、それだけのお金をかける価値は十分にある。
第一次世界大戦、トルコ軍に損害を与える為、英国軍人ロレンスはアラブ人を使ってゲリラ戦を指揮する事を命ぜられ、砂漠に赴く。 次第に英国軍人としてではなく、アラブの英雄として行動していくようになるが・・・
現在にまで'がる欧米列強の中東政策の中で、ある意味、道化師役を演じる結果となったロレンスの心の変遷を、描き上げた作品。
ＣＧの無い時代に膨大な予算を使い、砂漠にセットを作り、撮影された。 俳優はラクダの乗り方から練習した。 （ＤＶＤ特典に、「ラクダもオーディション」なんて秘話もあり）
背景は、砂漠の太陽、砂丘、海辺のキラメキ、全てが自然の、本物の映像で、この映像をつないで、自然ドキュメンタリーさえ出来るのではないかと思わせる。
膨大な予算を使いながら、尚且つ、ロレンスの心の葛藤がテーマの映画。 主演のピーター・オトゥールはこの映画に出るまでは、世界的には無名の舞台役者だった。 監督がイメージする外観と、演技力において、オーディションで選ばれ、見事に演じきった。 白い衣装を纏い砂漠に立つ姿は、絵画のように美しく、且つ、演技も申し分ない。
準主役のオマー・シェリフも当時無名のアラブ系俳優だった。
そして、描かれるロレンス自体、この映画が公開されるまで、殆ど知られていない人物だった。
そう、無名の人物の冒険と心の葛藤を、無名の役者が主演で作り出された、映画。
監督；デヴィット・リーン曰く「砂漠で男とラクダが走り回るだけ」の物語に、プロデューサー；サム・スピーゲルは可能性を見出した。 役者は興行成績を考えて名声で選ぶのではなく内容で揃えた。 映像で観客を満足させる事が目的ではなく、人間を描く為に必要だったから美しい映像を求めた。 それに必要な予算を、スピーゲルは用意した。 そういう順序で作り上げられた作品。
昨今は、制作費○×△億円！といった映画が沢山製作される。 ＣＧを使って、どんな場面も作り出す事が出来る。 そういった映画は、興行的に失敗は出来ない為、ストーリーはわかりやすく、描かれる人間もキャラクター化され、一定のレベルの満足は得られるようにならざるを得ない。
二度と出来ない奇跡の映画 という大げさな言葉が与えられる所以は、良い作品を作るために、興行成績の為の雑音を排除したスピーゲルの態度にあり、監督も俳優陣も見事にプロの仕事をやりきった事にある。
唯一問題点を挙げると、この映画を見てしまうと、他の大作映画を観たときに本作と比較をしてしまい、人物描写への見方が必要以上に厳しくなってしまうということだ。 評者もこの後遺症に悩まされている。
さて、もう一度大画面で堪能して、後遺症を悪化させる事を楽しみに、年末を待とう。
１９８７から８９年にかけて、デヴィッド・リーンは、”世紀の大作”アラビアのロレンスの復元作業を行った。このＣＤは、復元されたアラビアのロレンスのサウンド・トラック盤である。最初のサントラも名盤中の名盤と言えるが、音楽を担当したモーリス・ジャールは、さらにスケールアップさせている。9が、新たに挿入された曲である。今回は、モーリス・ジャール自身が指揮し、ロンドン・フィル・ハーモニック・オーケストラが演奏している。アナログで録音しデジタル・リマスタリングして復元された音楽。これは値打ちのある作品だと思う。
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