雑誌「料理通信」に連載されていた短編を1冊にまとめたアンソロジー。
片思い、と言っても、その範囲は広い。人妻が年下の男の子に持つ好奇心に似た気持ち、
離婚を宣告された男が妻に抱く未練のような胸の痛み、恋に傷ついた過去で臆病に
なっていた主人公がふと力強く誰かへの恋愛感情に気づく瞬間…どの短編も短いので
全体的に淡いタッチで、恋愛的な瞬間を1コマで描いた、という感じの軽いタッチの
ものが多く、眠る前に2〜3作品読んでも胃もたれしなくていいかも。
有名な石田、角田作品あたりは「いかにも」という感じのものだったが、
山田あかねさんや大島真寿美さんなどの初見の作家さんの作品にいいものがあり
新たなお気に入り作家さん探しのガイドブック的にもこの本いいかも(11人の
作家が競作してるのですから)と思いました。
三崎亜記の作品にしてはライト・ノベル風の作風に最初は戸惑いましたが、 「掃除」というありもしないスポーツ競技の描写はさすがです。 映像が浮かぶとは言いませんが、それでも納得させてしまう力業に脱帽です。 それ以外にハンドリングとか肩車スポーツ部とか、 日常から少しだけズレた行為が説得力をもって迫ってきます。 ただ、最後まで読んでも謎が多すぎる。 カードキーの謎、恋愛の行方、掃除競技の行方、 続編が楽しみです。
面白い! 登場人物が皆一癖も二癖もあり、活き活きしていて面白い。 話の掛け合いも関西のノリでツッコミが小気味いいい。 ハラハラドキドキするような事はないが、笑える本ではある。
リアルな世界に1つだけ虚構を入れた世界観で繰り広げられる三崎ワールド。僕たちの先入観に鋭く付け込んできて考えさせられる。
そもそも三崎亜記が女性作家だと思い込んで読んでいた時点で僕は術中にはまっていた。
理不尽な“町の消滅”に、理を超えた芸術の力で立ち向かっていく人々。
設定が設定だけに入り込むのが難しい小説ではある。おまけに他の方も書かれていたように、人物造形や発せられる台詞の端々がステレオタイプすぎて妙に気になってしまった。特に茜さんが・・・訴えたかったことは十分にわかるのだが、何かが決定的に惜しい一冊であった。桂子さんが脇坂さんを求めてたどり着いた“居留地”もまた、どこかの近未来SFから借りてきたような描写ではありつつ、しかし確実に読む手は止まらなくなっていた。多分、もっと推敲を重ねたらよりよい作品になっていたのかもしれない。
ちなみに各章のタイトルは秀逸。言葉選びに絵センスを感じる。
そして装丁も洒落ている。是非とも店頭でビニールのカバーをめくっていただきたい。
|