正倉院といえば、まず宝物。正倉院を扱った書物も、多くは宝物の歴史を扱っているように思います。その中でこの本は、正倉院事務所長(2011年現在)を務める著者が職場の日々を紹介する、ちょっと変わった一冊です。
茶道を中心とする和の文化を紹介する雑誌「なごみ」の連載をまとめたものだそうで、四季折々の情感を交えつつ、正倉院に勤務する職員たちの様子や東大寺の風物詩を紹介しています。まさにあぜくら通信。
「あの宝物が重い」とか「紛失した破片はいかに再発見されるか」など、現場ならではの話題が豊富で楽しめました。ただ、突っ込んだ話を知りたい場合には消化不良な印象です。この内容を元に、職員ならではのエピソードをさらに収録した続編が出ると嬉しいですね。
日本の装飾の変遷が一目で分ります。
こまごまとした解説が一切無く、ひたすら実画がカラーで載っているのが良。
細部まできちんと書き込まれていますので、テキスタイルの参考にするには最適かと。
仏像の光背、日光東照宮の装飾、果ては遠州好みの欄間まで…描かれているのは平面の装飾だけでないところがステキ。
ただ、この模様の由来や、意図などをお求めの方には向きません。解説はほとんど皆無です。
デザインの参考にお求めの方には最適かと思います。
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