『ダーティハリー』シリーズで、個人的にはこの4作目が秀逸に感じられる。
これまでアクション性の強かった『ダーティハリー』が、この4作目に来てにわかにテーマ性の強い作風に様変わりしたことは、ハリーファンにとっては一目瞭然の事実である。
クリント・イーストウッド自らが監督も兼ねたことなども影響し、人間の持つ底知れぬ闇の部分を表現している。
イーストウッド作品の一つに、『ミスティック・リバー』があるが、性犯罪のからむ重厚なサスペンスに仕上がっている。この『ダーティハリー4』は、正に『ミスティック・リバー』の試作を兼ねたような、残酷で破廉恥極まりない性犯罪の闇に迫ったものだ。
『ダーティハリー』シリーズ中、唯一踏み絵ともなる、サスペンスとテーマ性の色濃く出た作品となっている。
「ブリット」「フレンチ・コネクション」と並んで、刑事アクションというジャンルを刷新した傑作。影響力の大きさでは、他の二作に勝るだろう。
内容については言わずもがなの、刑事アクションの金字塔。
今回のブルーレイで注目すべきは、日本語吹替版が入っていること。今はなき山田康雄氏演じるハリー・キャラハンが聞けるのも嬉しいが、注目すべきは、その音源が5・1ch化される前の、劇場公開版に基づいている点だ。
この吹替版で、ハリーが単身銀行強盗を片付ける有名な場面を見てみると、ハリーはマグナムを5発しか撃っていない。つまり、DVD発売時に5・1chリミックスされた音声は、銃声を1発分足してあるのだ。この点は過去に(7〜8年ほど前かな)HiVi誌のインタビューで、本作を劇場で100回以上観たという当時のバンダイビジュアルの社長サンが指摘して(&怒って)おり、このブルーレイで、それが証明されたことになる。
確かに観てみると、たかが1発とはいえ、それがアクション・シーンの間合いを変えているのがわかる。他の映画で例えるなら、「燃えよドラゴン」の格闘シーンで、ブルース・リーが映ってない場面に怪鳥音が入るようなもの。それに5発であれば、ハリーが常に弾を1発残しておくプロであることがわかるし(銀行強盗の場面で6発目の弾が出ないのは、ハリーが既に撃鉄を上げていたため。なんと吹替版では、ハリーが犯人のショットガンを拾い上げる音の後に、撃鉄を下ろす音が入っている!)、それゆえ、ラストの“さそり”を追い詰める場面の意味合いも変わってくる。
ついでに言うなら、ハリーが「But being this is a.44Magnum,〜」と自分の拳銃の威力を説明する名ゼリフについても、吹替版ではちゃんと「こいつはマグナム44・・・」と言っている。字幕の「これは特製の大型拳銃だ」では名ゼリフが台無し(なので星一つ減)。「ダーティハリー」の真髄に迫るなら吹替版での観賞が絶対おススメ。目よりも耳を凝らして味わうソフトだ。
映画としては第一作には到底及ばないものの(あまりにも多くの要素を詰め込もうとしすぎて、ストーリーから前作のようなスピーディさが失われています)テーマ曲のカッコよさでは上をいっているこの作品、まさにラロ・シフリンの面目躍如といった感があります。 テーマ曲以外にも、例えば7.8.10曲目あたりのフュージョン系のリズムも、まさに当時の雰囲気が濃厚に伝わってくる出来です。 勿論、前作から引き継いだ独特のジャジーな雰囲気(5曲目)、また、翌年の“燃えよドラゴン”にも通じる3曲目など、ファンにとってはたまらない一枚でしょう。 シフリンのCDはもっと出して欲しいですね。
|