当時の時代背景と番匠(大工)の姿が詳しく描かれている。現代社会の課題でもある技術継承の難しさ、職人技を次の世代に伝えることの難しさが、隠れたテーマのようだ。
わずか200名が守る沼の中の城を、1000名で攻める。 主人公は癖のある10名程の配下を率いて城を攻める”久四郎”という小隊長。 (とはいえ、部下の食料も借金で工面しており、如何に安く上げるか、まで気を配らねばならない!) 中盤過ぎまで3日ほどの城攻めの一進一退の肉弾戦的攻防を久四郎隊をメインに克明に描いてみせる。 城側は城主は戦死しているのだが、代わりに北条から派遣された切れ者”玄信”が火器を擁して 差配しており、攻め側を翻弄、時には逆夜討ちを仕掛け、数的劣勢を覆し、戦いを均衡まで押し戻す。 この過程で、一人、二人と配下を失って行く久四郎隊。 中盤から終盤には和議を巡るイザコザが勃発、15年前の因縁から和議団に指名される久四郎、 城内部の内輪揉めとも相まって、ここでも肉弾戦が息つく間もなく繰り広げられる。 (本当、読むほうも息つく暇がない) 最終盤には、この唐突な城攻めの真相、女城主をめぐるどんでん返し、さらには内通者の発覚、 などサービス満点、全編を通して適度な皮肉と小隊長の悲哀感が漂う。 (難点というほどでもないのだが、チョッと城の内部の配置が分かりにくい。これもう少し 明確になれば、さらに戦いがイメージしやすくなると思うのですが...それと内通者の登場が チョッと唐突か..)
面白い本にも好き嫌いはあるんでしょうが、戦国物語ではあるが、米戦争映画「ライアンを探して」 (トム・ハンクスが小隊を率いる後半部分)とか、古いけど米TV「コンバット」(サンダース軍曹の奮闘)を楽しめる方には 好適かも... ひょっとすると、直木賞は...
何気なく手に取ったときは、関ヶ原の戦いに巻き込まれた農民か何かの話だと思っていたのですが、
実際は関ヶ原の戦いの陰に隠れた武将、侍を主人公にした本でした。
たとえば最初の話では関所を通り抜けなければいけない二人の武士が主人公で、関所がとても厳しいことなど自分の知らなかったようなことが書かれています。
どの話も意外性があり面白かったですが、話のオチはどれもそのままな感じで、ひねりがほとんどなかったのが惜しい点です。
普通の歴史小説に飽きを感じている方におすすめしたいです。
織田と武田の2大勢力の狭間で翻弄される岩村城、そんな中武田二十四将のひとり秋山伯耆守虎繁は東美濃の岩村城攻略を命じられる。岩村城は城主遠山影任亡き後その未亡人(織田信長の叔母おつやの方)が城主となり信長の5男(御坊丸のちの織田勝長)を養子に迎え継嗣していたが圧倒的に有利な武田勢に囲まれて無血開城、その時の和議の条件が秋山伯耆守虎繁の正室に未亡人おつやの方を迎えると言うものであった。岩村城は武田の勢力下に入るものの未亡人おつやの方が城主夫人に納まれば遠山家臣団も肩身の狭い思いをしなくて済む。和議の方便とっしての結婚だったがやがてふたりは愛し合うようになる。武田の勢力が強いままなら万事巧くいくはずだったが・・・
御坊丸は人質として甲府へ送られることに、我が子を人質された信長は激怒、嫡男信忠率いる大軍が岩村城を包囲する。愛する妻と家臣団の命乞いのために虎繁は開城を決意する。そしてふたりは岐阜へ送られ逆さ磔にされてしまう。
戦国の苛烈な運命に翻弄されながらも男と女は惹かれあい愛し合う。
哀しいけれど素敵な戦国の恋物語です。
本能寺の変ものは「なぜ光秀が謀反に及んだのか」という謎をどのようなトリックに仕立てるのかに興味そそられるのだが、本書はそこに至る前段をアイデアをメインに据えたため、本能寺の変への直接の原因の描き方がいまひとつだった。 そういう描き方があるのかというアイデアには感心させられるが、歴史物特有のさわやかさに欠ける思いがした。
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