同じ月を見ている プロローグ-君のそばにいたかった- [DVD]
観おわって一番に思ったのは月ってなんの力で輝いて見えるんだっけか?という小学校の理科かなんかみたいなクエスチョン。ドンは悲しいなって事。人の心ぱかり頭に映しちゃったらほっといたって己は寡黙にならざるを得ないだろう。その役割を背負わされて人より多分早くに大人になっちまって、一体どれほどの思いを抱えさせられてきたんだろうって事。誰が好んで人の心を映し出す鏡になりたいものか。誰が好んで闇にしか輝けぬ月になどなりたいものか。子供時代のドンの目に◎
「始めまして」ひさしです
「始めまして」、といっても、シングル「俺節/俺の俺節」でデビューしてからこの時すでに5年半あまり。いささか出し遅れの証文めいたタイトルではあるけれども、なにしろ、上記のシングルCDが手に入らない(高値とかではなく、モノ自体がほとんど出てこない)状況が続く中、このアルバムが存在したおかげで、この2曲の音源そのものの入手は、さほど困難というわけではないのだ。まずはこの点に、感謝しておかねばならないだろう。
で、アルバムは、この時点までに発売されていたすべての彼の音源(※)の中から、シングル4枚の8曲(2枚め以降のカップリングは12と2、9と4、1と7。サブちゃんJr.作のポップな12、どうしても「ああ上野駅」にしか聴こえない7に注目?!)、そしてカヴァー4曲(中では5が出色。3は吉幾三作品)、という構成。五木ひろしとしては異色作だった11など、あからさまに五木調で、もうちょっと素直に歌えばもっといいはずなのに……、などとも思ってしまったが、確かに基本的には変なクセのあまりない歌い方をする人で、中音域の明るい響きが、なかなかに魅力的。ハッピー&ブルー加入前、別名で「タイガーマスク」OPとEDを歌っていた森本英世、演歌で一度デビューしている速水けんたろう、一時クールファイブにいた宮内タカユキらのように、アニメソング方面でも活躍できた人、だったのではないか?
なお彼は、99年にもシングル「宗谷路/からたちのふるさと」をリリース。その後もブレイク後の氷川きよしをゲストに迎えて(!)コンサートを開くなど、北海道をベースに、しばらくは活動を続けていたようなのだが。
(※クラウンからの複数のオムニバス盤に、「君といつまでも」「お嫁においで」「ぼくの妹に」の“若大将3連コンボ”など、さまざまなカヴァー音源が残されている。)
定本 俺節 下
作品は最高です。初出から20年は経っているとのことですが、全く古びていません。
私が特筆したいのは、装丁の素晴らしさについてです。
オリジナルのコミックスは黒と金のインパクトのあるものでしたが、この定本は(画像ではわかりにくいですが)ほぼ全面シルバーのカバーです。ブ厚い3冊がギンギラに輝き、本棚に並べると存在感がハンパでないです。所有欲を十分に満たし、買ってよかったという気にさせてくれます。
素晴らしい買い物をした、と思えます。おすすめします。
江戸の鷹 御用部屋犯科帖 DVD-BOX(1)
毎回本物の鷹が登場するということで、当時話題になった時代劇。
徳川家治の治世、田沼意次の悪政に苦しむ人々を救うべく、目安箱訴状の事件探索に当たる“お鷹組”の活躍を描く。
このシリーズ最大の見所は、なんといっても第36回から最終回に至る三部作、
「壮絶 お鷹組隊長戦死!」
「激闘 お鷹組副長戦死す!」
「決戦 お鷹組全員死地へ向う!」
である。お鷹組を倒すべく、田沼一派の仕掛けた謀略。太平の世に、大砲三門を並べ、罪なき村人を犠牲にし、一村を全滅させてまでお鷹組を討とうとする非道。村を、そして世の平和を守るべく、わずか四名の陣容で決死の戦いに挑むお鷹組。サブタイトルにある、隊長「戦死」、副長「戦死す」、その「す」の持つ意味合いの深さに感じ入った(この「す」には“確認・意志・判定”の、三つの意味があると思う)。これはやはり本編を観て感じていただきたい。
なお、ただ一つ残念なのは、将軍家治の出番の無さである。演ずる里見浩太朗があくまでも特別出演だから致し方ないとはいえ、第1回に出演のあと、第2回と第4回の冒頭にのみ出演、以後全く出演がないとは淋しい。第34回「危機一髪、将軍暗殺」のような重要回にも登場せず、将軍の乗った籠が行くのをお鷹組が極秘裏に護衛する、といった描写で処理していた。
時代劇において、将軍の存在は大きい。せめて最終回には、たとえ1シーンでもいいから登場してほしかったと思う。
定本 俺節 上
『俺節 1』など、旧コミックス版のゴールドに対して、シルバーが効いている表紙はインパクト十分。漫画家・土田世紀にとって、長い間“幻の傑作”であった『俺節』が、全3巻でついに、待望の復刊を果たした。
近年の土田作品、いや、『編集王』あたりであっても、そのあたりを見慣れた目で見ると、墨をたっぷり使い、勢いを持ちつつしっかりと描き込まれた『俺節』の世界は、かなり新鮮なものとして映るかもしれない(実際、巻末に描きおろしで載っている「久しぶりに描いたコージ」は、まるで別人。いわゆる“美形キャラ”のようですらある)。
この泥くささ、この愚直なまでのまっすぐなタッチ。
その画風はそのまま、この物語の主人公であるコージの生き方と重なっている。
どんなに不器用で愚かだと言われても、俺はこの道を、こう行くしかないんだ。
そんなコージの姿に自分を重ね、胸を熱くする読者が、今回の復刊でさらに増えるであろうことは、本当にうれしい。
読めば心に小さな、枯れない花が咲く。
そしてその花は、心のどこかで、あなたをそっと、そして力強く、励まし続けるだろう。
この『定本 俺節』が、旧コミックス版をこれまで愛読してきた方はもちろん、ひとりでも多くの新しい読者の手に渡ることを、オレは心の底から祈っている(本編の内容そのものに関しては、旧コミックス版の方にいくつか―1・2・5・8・9巻―レビューを書かせていただいているので、そちらもご参照いただきたい)。
なお、復刊にあたって新たに手が加えられた様子はなく、歌手名の間違いなども含め、旧コミックス版と本編そのものの内容はほぼ同一のようである(土田氏いわく「読み返しませんでした。なんか恥ずかしくて」)。
今回、この上巻、およびそれに続く中巻の巻末には、土田氏へのメール・インタビュー、それに描きおろしの1ページが掲載される。メール・インタビューはかなり興味深い内容で、楽しい読みものとなっている。そして最終巻となる下巻の巻末には、描きおろしの近況報告漫画が収録されることになっていて、こちらも楽しみである。
2012.4.27追記
下巻巻末の描きおろし漫画を読んだ時、どうやら土田さんがこのレビューを読んでくださっていたらしいことがわかり、それはオレにとって、とても励みになる、うれしい出来事でした。
この24日、43歳で急逝された土田さんのご冥福を、心からお祈り申し上げます。