おすもうさん
「相撲とは何か?」というテーマの探求のために力士に取材し文献を渉猟した著者だが、その結果、おすもうさんたちのあまり知られていない本質に気づいてしまった。いわく「呑気」。日本の「神事」であることに加えほとんど成り行きで「国技」として顕彰されるようになっただけでなく、戦時中には「日本精神」の精髄とされ「体当たり」のモデルとされたかと思いきや戦後には「スポーツ」として再生するという、移りゆく時代状況や周りの人間たちの思惑に翻弄され続けてきた相撲だが、その渦中にいるおすもうさんたちは、いつだってどこ吹く風。適度になまけ食っちゃ寝しながら、いい意味で不真面目にマイペースに生きてきた。今も昔もそうなのだ。
相撲という日本独自の不思議な伝統。その実態が著者の愛のこもった茶化し気味の文章により明らかにされていくのは読んでてとても爽快である。やる気があるのかわからない底辺の力士たち、のほほんとした親方、意味不明の世界をまるごと受け入れている行事さん、彼等の言動は適度に気が抜けていて、とても面白い。堅苦しい常識をひらりとかわす相撲のすごさを痛感させられる。横綱といえどおすもうさんの「品格」を云々するなんて、まあナンセンスなんだろうなと思う。