ゴールデン☆ベスト テレサ・テン
「時の流れに身をまかせ」
これは、いつ聴いても、ほんとに名曲だと思う。
テレサテンの、なんともいえない歌はもちろんだが、
詩の内容も曲のフレーズの運びまで、絶妙だと思う。
テレサテンの歌の魅力は、私が思うには、
日本語に対して、日本人とは違う気持ちの入れ方で、
歌を歌う部分だと思っている。
普通、心や感情をこめると思われる場所に、
フラットな気持ちで、さらっと歌う素敵なキラっと光った歌詞、
それは、テレサテンが、日本人ではないからできた成せる技。
そして、その歌う側の感情の違いが、きれいなメロで流れる。
それが、聴く側のあらゆる気持ちに響き、
あらゆる自分の中の印象に投影される瞬間、
それぞれが感じる、とてもいい歌に変貌する。
例えば「愛人」にしても「つぐない」にもしても、
歌はうまいし、メロディーに対して感情はこもっているけど、
決して、言葉の単語の内容に一切溺れた発音はしていない。
どちらかというと、淡々と歌っているように聴こえる。
それが、テレサテンの魅力だと思うのだが、どうだろうか。
しかし「時の流れに身をまかせ」
これは、いつ聴いても、ほんとに名曲だと思う。
GOLDEN BEST
デビュー当時の曲から現在までの楽曲を収録した、2枚組みのベストアルバムである。収録されている全35曲に渡って井上陽水の世界を味わうことができるが、何度繰り返し聴いても全く聴き飽きるということがない。彼の凄さを改めて感じることができた。「GOLDEN BEST」というアルバムタイトルがバッチリあっている。これは絶対に買いです。
瞬間を生きる哲学 <今ここ>に佇む技法 (筑摩選書)
正直言って圧倒されました。深い話なのに、こんなに読みやすい本にであったことがないです。じつに分かりやすい。なのに、清く鋭い洞察にみちた書物です。ぐいぐい、作者の思考に引き込まれます。本を読むことの愉しさをあらためて味わった気分。本格的な名著に、久しぶりで巡り会ったここちがします。
とにかく、読んでいて気持ちがいい。心が洗われます。瞬間という、日々の生活の中では考えないこと、見ないことを、この書物はありありと感じさせ、瞬間のもつ闇と光、奥行きと輝きへと、わたしたちの考えを深めさせてくれるからでしょう。そのことを、謙虚で静かで軽妙な語り口と、胸衝くような題材をまじえて伝えてくれるからでしょう。
「あなたはこの世でくつろいだことがない。あなたはいまだかって、《ここ》にいたことがない。いつもどこか、《よそ》にいる。あなた自身の一歩前かそれとも一歩後に。まるで秋の瞳に宿っている冬のように。それとも春の瞳に映っている、夏のように。それとも過去か未来の世界に。」
「人生の岐路でひきおこる大切なできごとは、きまって瞬間の生起です。〈誕生の瞬間〉と申します。〈息をひきとる瞬間〉ともいいます。瞬間という時以外に、人は、生まれることも死ぬこともできないほどなのです」
「もし永遠がなにを意味しているか知りたければ、それはこの今の瞬間において他にない。この現在の瞬間にソレをつかまえられないとすれば、何百万年にわたって何度生まれ変わろうとも、ソレをつかまえることはできない」
「なにもしないことが、よほどたくさんのことをする。瞬間を生きるからだ……奇異に思われるだろうか。でも奇異なのは、ぼくたち人間のほうだ。まわりの動植物をみていただきたい。みんなそこに〈いる〉beingだけです。イヌもネコも庭先の樫の木も、みんな〈なにもしていない〉。ただ刻一刻、その時その場の瞬間に居るだけ。ことさらなにかを目指したり、なにかをやり遂げよう(doing)とはしていない……黙ってそこにいるだけでもう、りっぱに完結し、完成している。」
こんな、優しくも小気味よい文章が、ポンポン飛び込んできます。これがとても気持ちいい。そしてそのことを、きっちり平明に論証もなさる。だから、何度もウンウンとうなずいてしまいます。
こうして生まれ生きて在り、いずれ死にゆくことの真実というのか、存在の意味というのか、そんな重量級の問題について、はっきり明晰に真正面から、得心させてもくれました。瞬間とは唯一リアルな生であり、そのほんとうの生に他ならない瞬間に見開かれて生きる時、こうして生きて在ることの凄さ(存在神秘と古東氏は名づける)に撃たれ、存在肯定の極みにいたる。そしてその果てにおっしゃる。
「永遠の瞬間を生きるといっても、だからたいそうなことではない。幼い日々、夢中で生きていた濃密な時のすがた(原初の時間)を想い起こすだけのこと。……もともとそこに生まれ、じつはいつもそこを生きているはずの原初の時間に、赤子のように身を開くだけのことである」
「今ここに在ること」(be here now)を、みずからの創作の源泉になさってきた横尾忠則氏が、朝日新聞の書評欄で大きくとりあげ誉めてられたのも納得です。時間をおいて、何度も幾度もくりかえし読みたくなる本です。
小椋佳コンサート 未熟の晩鐘 [DVD]
アルバム「未熟の晩鐘」が好きで、買いました。冬の時期でか、度重なるコンサートでか、喉の調子が今ひとつです。でも、歌に対する情熱や歌唱法は抜群で、魅了します。度々ですが、喉の調子が良ければ星5つです。