遠い国からの殺人者 (文春文庫)
よく言えば、この書物一冊で ある視点から見たじゃぱゆきさんの世界が完結していると思う。ただそうなると,「殺人」という事象にわざわざ絡めて表現しなくてもよかったのではないか?と思われる。 あるいは,その絡め方が サスペンス劇場っぽすぎて、そこだけリアリティーを薄くしている みたいな感想だった。
未読の方にはあまり詳しくは感想を言えないが、裁判でシエラの発言&態度までもが実はしたたかな計算づくだったのでは?と思われないでもない。
新・雪国 [DVD]
この作、所謂『雪国』では無い。
過去の同名小説や映画とは何の脈絡も無い作品である。
映画として観るより、ちょっと長い昼の帯ドラマ的感覚で観る事をお奨めする。
笛木優子という、韓国に行き女優・タレントとして、それなりに成功を収めた稀有な個性を持った彼女の『顔』を味わえば良いのである。
相田翔子に顔が似ているとよく言われるが、こちらの方が遥かに上物である。
甘さの中に、鋭さが垣間見れる、顔立ちは、最近の女優には、見ることが出来ないもので、惚れ惚れするだろう。
演技は『大根』なので、本来は白けてしまうものだが、それが良い個性となっているのが持ち味である。
濡れ場に関しては、物足りない向きもあるが、AV女優で無いのだから、この位で抑えておいてもらった方が、長い目で見て、楽しめるのでは無いだろうか。
僅かに垣間見れる、上品な乳房は、実に繊細な衝撃と感動がある。
決して大女優になるという器では無いだろうが、極めて貴重な女優である。必見!
復権―池永正明、35年間の沈黙の真相
プロ野球の「黒い霧事件」で永久追放となった池永正明のことがずっと気になっていた。その真相が、こうして1冊の本になり、それに出合えたことを心から喜んでいる。池永について書かれた本のなかで最良の1冊であろうと思う。
プロ入りして5年間余りで103勝をあげ、生涯に300勝はできるといわれた池永正明。年俸1000万円のエースが、100万円のお金を受け取ったことで、プロ野球界から永久追放された。そのとき池永は23歳だった。先年、35年を経てようやく追放処分がとけた。
八百長試合はしていないと言う彼を、球界がそれほどまでに長く鎖につなぎとめた理由は何だったのか。著者はそこにプロ野球の暗部を覗く。
八百長試合はしていないと言う彼が、それほど長く沈黙を続けた理由は何だったのか。それこそが著者が知りたかったことだった。読者は本の最後に明かされる沈黙の理由を知ったとき、暗然とする。やはり彼は自分で自分を縛っていたのだ。その理由はまっとうなものなのか。それは読者につきつけられる問いである。
本書には2枚の写真が使われている。1枚は、マウンド上の力感溢れる投球フォームをうつしたもの。本文の途中に挿入されている。
もう1枚は最後にある。本書を読んできて、最後にあらわれる。本書を読んだ方なら皆そうだろうが、その写真のページを開いたとき、涙がとめどなく溢れる。
直木賞作家が小説を離れて、本書を書いてくれたことに感謝する。野球好きの人はもちろん、そうでない人にも是非読んでいただきたい。