この本の原作を読んでいますので、英語力に難のある私でも本書を読めました。概ね面白くはあったのですが、違和感が結構ありました。そして、この違和感が減点の理由です。
まず、慶喜公を「Keiki」と記していること。一説によれば、「Yoshinobu」よりも「Keiki」と呼ばれることを、慶喜公自身が好んでいたとはあるものの、「Yoshinobu」が一般的なのではないだろうかと。どうも、読んでいて引っかかります。
次に、慶喜公の粋な科白の言回しが、平凡な訳になっていること。並みの翻訳者では、日本の尊敬語あるいは謙譲語を上手く訳せないのは仕方がないことですか。例えば、「As long as I,Keiki,am here,and as long as I am protector of His Majesty's person,you may be assure there is no need for alarm.」(原作:「慶喜がこれにあり、玉体守護し奉るかぎり、御心配無用とおぼしめせ」)などは、「うーん」と首をひねってしまいます。味のある科白の妙味が、なくなっちまってます。他にも違和感がある箇所はありますが、いちいち挙げません。
一方で、冒頭に登場人物の紹介や、徳川家の系図があったり、それが案外詳しかったりするので、そこは感心しますけれど。
まあ、時間のある方にはお薦めです。
DVD化を待ち望んで2年余。 とうとうその日が来ました。 しかも価格は先のビデオ版から大幅ダウン。 画像の色ずれや特殊効果のプアさはありますが、20年前の制作ですから仕方ないですね。そういう意味からも再放送される可能性は低いのではないかと思います。 買うなら早目がいいでしょう。
私は24歳で、おそらくこのDVDボックスの購入層の平均よりかなり若いと思います。まして日露戦争など大昔の話です。歴史の授業の中の話です。 そんな私でも、自信を持って言えます。これは日本史上に残るドラマです。語りつがるべきドラマです。戦争賛美がどうとか司馬史観がどうとかではなく。
いくら饒舌になろうともこのドラマの魅力を全て伝えきることはできませんので、短く、簡単にご紹介してこのレビューを終えたいと思います。
「日本人でよかった。」そう思える、ドラマです。
「脱藩した佐久間を討て」、お上の命令は妹の夫を討つことであった。非情な上意に悩む戌井家。剣術の手錬の使い手であったがゆえに妹田鶴の夫を討たねばならなくなった兄朔之助。そしてその宿命の家中に仕える奉公人新蔵、幼年期を一緒に暮らした三人がどういった行動をとるのか。赤の他人ではない、それも三人という不安定な数が物語への期待を膨らませる。自分で撒いた騒動の種を家中の人間に皺寄せすることでしか解決できない藩中枢への批判をさらりと描き、どこか理不尽にも思える藩命にしぶしぶ応ぜざるを得ない戌井家の状況は現代社会となんら変わることがない。観客はいつのまにか作品と同じ時間軸、環境に溶け込んでいく。朔之助を演じる東山紀之は時代劇を堂々演じられる俳優が少なくなってきた中安心して見ていられる一人。いたずらに感情を外に出さない抑えた演技が嫡男の重みと抱えた苦悩の重さを物語る。彼が吐く「ゆっくり参ろう」という言葉はその裏に隠れたあらゆるものをイメージさせる名文句、名シーンだ。距離的にも時間的にも長い旅を続ける朔之助は、途中川で遊ぶ子供らに自分が子供の頃、田鶴や新蔵らとで経験したあるエピソードを記憶に蘇らせる。小川の辺、作品の題はこんなあたりに由来するのだが、これ以後をここで語ってしまうのは無粋。残念だが内緒にしておこう。
数ある新撰組小説の中でも人気の司馬遼太郎著作「燃えよ剣」が 詳細なデータベースと、臨場感あふれる音楽と俳優・渡辺謙の朗読 によって更に楽しめる。音声をオフにして資料を参照しながら自分の ペースで読むこともできるが、何より「主人公の土方歳三は役者 として演じてみたかった人物」という渡辺謙さんの各登場人物の 場面に応じ心情こもった声色、美声による朗読を堪能したい。 原作ファンにも是非CD-ROM版を視聴して頂きたい。
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