主人公金俊平が済州島から船で日本の大阪に到着する冒頭シーン。まるで「ゴッドファーザー」のように移民がNYに着き自由の女神を見たときのような感じ。この16才の金俊平を「電車男」の伊藤くんがやっているので、青年になったビートたけしにすぐ印象がつながらないのがご愛嬌。原作ではもっと説明があるのかもしれないが、映画では20年近く過ぎたシーンになる。その間に何があったか想像するしかないが、欲望の権化となったビートたけしの、妻の鈴木京香を犯すところから、暴力と過激なエロティシズムを前面に出す作品の始まりとなる。家のすぐ近くに愛人(中村優子-秀逸!)も住まわせ、愛人が病気になれば次の愛人(濱田マリ)を置き、娘(田畑智子)に対しても半端でない暴力をふるう。ファミリーを大切にする「ゴッドファーザー」とは対照的な映画であるが、暴力のすさまじさ、人を黙らせる力、脅したときの凄みはひけを取らない。
タイトルの「血と骨」を感じるところはいくつかあるが、姉が母と同じように夫から暴力を受けても正面から立ち向かわないところ、姉が弟に向かって「あんた、お父さんに似てきたね」と言うところ、老いた金俊平が濱田マリに生ませた男の子を拉致していくところ、豚をみんなで解体して無駄なく切り分け仕込んでいくところ、病院から戻った愛人の体をたらいの中でふいてやるところ、そしてビートたけしとオダギリ・ジョーとの格闘シーン、などなど。故松田優作の盟友、崔洋一監督の入魂の一作!
戦後、大阪の兵器廠跡を舞台に繰り広げられた在日(アパッチ)の戦いを描く。この「事件」は開高健の「日本三文オペラ」が闊達に描き出しているが、この本は言わば「当事者」の側からの記述である。また、アパッチ壊滅後、在日に課せられた大村収容所の地獄をも描き出す。この大村収容所の存在を知っている日本人が、果たしてどれほどいるだろう?(私も知らなかった。) 今でも続いている在日の戦いを描く。
他の生き方はできないのだろうか?一方で喜びや歓喜を生み出す生が、仕事という側面においては、利潤の追求を余儀なくされる。これは恐ろしい競争の世界であり、弱肉強食の、人食いの世界である。ミラーのように〈岸の小枝が音もなく川に落ちるように〉この世界からこぼれ落ちて、すきっ腹をかかえながら、喜びや歓喜を生み出す生に専心する放浪生活がなんと輝いて見えることだろう。 彼の書いた時と、時代状況は驚くほど似てきたと感じられる。ミラーの切り開いた道はほとんど不滅のものだが、安易に模倣を許すような道ではない筈だ。それよりも、序にアナイス・ニンが的確に記したように「根源的な現実へのわれわれの嗜欲を回復させる」この本の力の源泉こそを共有し、各自が自らの固有のLIFEをこの人食いの世界に抗して打ちたてるべきだろう。この傑作には各人をそのように奮い立たせる何かがある。
「これは小説なんだ…」何度もそう思いながら読み進めました。 この小説はタイを舞台に幼児が売春宿に売り飛ばされ、挙げ句生きたまま臓器売買されるというショッキングな内容と並行して、それを阻止しようとする現地NPO団体の苦悩を描いたものです。 あまりにも後味の悪い結末とともに途中何度も憤怒の涙を流した私は、気になって他の方(有名無名を問わず)のレビューも読んでみました。 大体が「取材不足」や「リアリティ不足」などとありましたが、ルポルタージュではないにしろ、ここまで肉迫した文章を小説として世に出した梁 石日氏に私は拍手を送りたい気持ちでいっぱいです。
なぜなら、フィクション、ノンフィクションの違いはあれど、火のないところに煙は立たないのです。 取材不足といわれる所以となった現実味に乏しいと言われる文脈も、あえて『小説』という仮面をかぶせたら普段問題意識のない市井の人にも提起できると感じたからです。 それは普段平和の中に身を委ねた私自身が、作中涙も枯れ果てたこども達に魂を重ね合わせられた瞬間だったからです。
やってくれた。
このシリーズは、「狂想曲」も含めれば、全4作ある。
僕は、二冊読破して、次に手に取ったのがこの「タクシードライバー最後の叛逆」である。
いくら10年タクシードライバーをやっていたからと言っても4冊も書けば、どれかひとつ位イマイチな物もあるんだろうなぁ・・・と、思っていたが、まったくの杞憂であった。
骨太で、乾いた文章。
ただ、事実だけを淡々と述べる相変わらずの梁 石日節に魅了され、あっという間に読んでしまった。
相変わらず、面白い。
警察の姑息とも言える道交法違反の実態をこれでもかと言うくらいに断罪している。
確かに、これをそのまま体験したら、僕なんかタクシー運転手なんて辞めてしまうかも・・・。
官憲という権力にも果敢に挑む梁 石日の反骨精神はなんとも言えず、カッコいい。
ただ、飲酒運転に関して寛容な態度示している章があるが、これは・・・、どうなんだろうか?
飲酒を禁止されている他国の人達は、荒っぽい運転で事故は、日常茶飯事だという。
飲酒と、事故との因果関係は果たしてどこまであるのだろうか?と、梁 石日は疑問を呈しているが、コレに関しては、ちょっと日本人には受け入れずらい考えではないだろうか・・・。
僕としては、運転する以上は飲酒は控えてもらいたい。
でも、そんなことも含めて楽しく読めた一冊でした。
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