シブい選曲、奥行きの深いアレンジでこの値段です。しあわせ。
ダンの作品はデビュー時のポップ性の高いロックから時代を経るに従ってフュージョン色の強い大人の音楽的なものに変化していった。そしてロック系とフュージョン系の間に存在したのが本作である。音は初期に比べればクールさを増しているが、ヘヴィーなロック感覚も増大傾向にあった。そんな時代である。「トルコ帽」のジャージーな軽快さを除けば暗いテンポを感じさせるアルバムであるが、ジャケットの摩訶不思議な大都会のイメージによくフィットしている。「シャルマーニュ」「アルタミラ」「ハイチ式離婚」「幻想の摩天楼」等は彼らのキャリアーの中でも名曲の部類に加えたいものばかりだ。
私には、ここから何故一気に「彩」のような音に飛んで行ったのかと言う必然性が理解できていないのだが、ダンのピークを飾る作品であることに間違いはなかろうと思う。
フェイゲン&ベッカーの最高傑作である。と個人的にロック派の私は思っている。
収録曲は
Reeling in the years
Bodhisattva
Rikki don't lose that number
Black friday
Kid charlemagne
Don't take me alive
Aja
Peg
Josie
Gaucho
Time out of mind
曲毎にイントロからヴァース、コーラス、ソロ部分と分割し、ギターパートの美味しいところをタブ譜付きでおさえてます。
付属CDにはフルバージョン、ギターパートのみ、そしてご親切にテンポを1/2落としたギターパートのスローバージョンも収録。
参加ギタリストや技術的な解説も豊富なようなので、英語の弱い自分にはちょっと残念です。でも日本語版ならここまでのコストパフォーマンスは実現できなかったでしょうから満足しています。
細かい内容の説明は省き、登場人物をざっと紹介させていただきます。 チャック・レイニー : 有名な「ペグ」の逸話を、(じつに)楽しそうに語ってくれる。 ディーン・パークス : 長年のセッション生活で建てたであろうプール(!)の前で、セッションでの苦労話を懐かしげに語る。 リック・マロッタ : 「ペグ」のリズムを実演(すばらしい)し、説明。当時は本人に語れなかったであろうホンネも...。 ラリー・カールトン : 当時のバンマス(!)としての苦労を、人柄のよいトークで展開。 マイケル・マクドナルド : 「ペグ」当時の想い出。このビデオのヤマ場のひとつでもある<一人多重コーラス>を、それぞれにわけて解説! バーナード・パーディー : おなじみの「自己紹介」と、<パーディー・シャッフル>を披露。 ウェイン・ショーター : こちらもおなじみ、マイルス・デイビスのモノマネを披露。例のサックスソロについて語ってくれます。 ウォルター・ベッカー : 終始小学校の先生のようなたたずまいで、豊かな包容力でもって、アルバムの話をしてくれます。 ドナルド・フェイゲン : 寡黙ではあるが独自のユーモアと表現力を駆使して、アルバムを丁寧に説明してくれます。 最後にこのビデオのために結成された<スティーリー・ダン>による、「ペグ」「ジョージー」が収録されています。 注意:ごく個人的な感想(偏見あり)もふくみます。
個人的に初めて彼等の曲を耳にしたのが#1「Rikki Don't Lose That Number」だった。おそらく日本の洋楽界で彼等が一般に意識され始めたのもその頃だったろう。そういう意味で、一種記念碑的な作品だ、と言っては語弊があるだろうか? 当時、純然たるポップスでもなくロックでもない不思議なカテゴリーの音楽という印象だったが、後に発表された彼等の名作群から遡って、今改めて本アルバムを聴くと、D.フェイガンのボーカルがその頃ほど丸くないのが返って新鮮。コーラスの導入も後の作品に比べて少なく、緻密さよりはザクッとした手触りが面白い作品だ。「上」があるだけに世間一般の「名盤追い」には薦めにくいが、原石の秘めた魅力は十分に感じられ、スティーリーダンがAJAやGauchoへの助走を開始したことが伝わってくる。
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