混沌とした展開になってきました…。「やる瀬ない」の一言です。
今巻は、今まで以上に「底辺」に生きる人々の悲哀が痛いほど伝わってきて泣けました。
どんなに努力しても変わる事のない階級。同じ人間なのに「下層民」というだけで差別され人間扱いされない現実。
それでもミツたち下層階の人々は貧しいながらも助け合い、ささやかな幸せの中で懸命に生きている。
その姿を見て癒され、温かい気持ちになりました。ですが、今回込み上げてくるのは言い様のない感情ばかり…。
着々と進むニシマルさんの計画。不条理な世界を飛び出して「地上」に光を見出したいという強い想い―。
ミツが計画に乗る決心をしてしまいますが、私は心の中で「やめてー!」と叫んでしまいました…。
「負」の感情の塊のようなニシマルさんの存在が、物語に暗い影を落としています。
彼が心から下層民の幸せを願っているかは、今巻を読む限りでは分からない。それが、すごく不安です。
後半、下層に緊急事態が起こりますが、さながら映画の「タイタニック」のような状況に茫然としました…。
そして、ニシマルさんの狂気がとんでもない悲劇を引き起こします。「何故?!」と思わずにはいられない(涙)
ニシマルさんも不幸な人で同情すべき所はあるが、世の中不幸なのは彼だけではない。
善悪の境界を越えてしまった彼の行為に衝撃を受けました。どうか、みんな幸せになってほしいと願うばかり…。
今回の表紙は、タマチ君。灰色一色の外壁に命綱を持ってポツンと佇む姿が印象的です。
しかし、ミツや真たちに後押しされて、タマチ君もやっと前に進めそうな感じですね。それだけが救いです。
P27の「海に捨てて…!」は『天空の城ラピュタ』のシータの台詞な。これ期末に出すから覚えておくこと。
それは未来の話―。 地球は(環境保護のため?)保護区域となり、人々は地上から遥か上空のリング状建造物で暮らしている。 この建造物は上・中・下の3層に区分され裕福な人々は上層に、低所得者は陽の当たらない下層に住んでいる。 下層階に住む天涯孤独の少年ミツは、中学を卒業し亡父と同じ窓拭きの仕事につく。
『土星マンション』という不思議なタイトルの通り、その世界観や画風が独特で面白い。 何よりも心に染み入るストーリーが素晴らしいです。 本筋はミツの成長物語ですが、格差社会を背景に盛り込むなど結構リアルな設定。 ほのぼのした話もあれば、シリアスも有り。さり気ないユーモアも随所に見られ、思わずクスッと笑ってしまいます。 ミツは何事にも真摯な少年。ホンワカ笑顔と狭い所で落ち込んでる姿が可愛いです。 彼を見守る大人達も皆温かい。クライアント(上層の人達)も時折我儘だったりするけど根はいい人達です。
2巻で好きな話は『近くて遠く』『夜祭』『手の先に』。 ミツと真がまたコンビを組む事に。ミツを敵視している真ですが、その心情には変化の兆しが…。 春子さんが可愛いです。『夜祭』で見せた虚弱体質とは思えない素早い行動…。意外な一面が見れました(笑) 食事会やお祭など、皆で和気アイアイしてる話が好きです。 タマチ君の出番が多いので、タマチFanの私は嬉しい限り♪ 組合には戻らない意志を貫いている彼ですが、私的には早く過去の出来事から解放されて、窓拭きの仕事に復帰してほしいですね。
近未来的な人工物に囲まれた「土星マンション」と対になるような、自然に溢れた漫画「星が原あおまんじゅうの森」。
住宅街の一角に茂る雑木林の奥に暮らす、蒼一と不思議な精霊たち。彼らが織り成す優しさに溢れたお話です。森が舞台のファンタジーって何となく西洋のイメージがあったけど、植物やモノに精霊が宿るというのは日本的な趣を感じさせる。なんだか懐かしい。
最初はオムニバスのような展開で、岩岡ヒサエらしいコミカルなキャラクターとハートフルなエピソードに癒される。特に小学生の洋平と小石の精霊がかわいらしいです。
しかし、途中に挟まれる大きな物語のカケラを拾っていくと、森の記憶や蒼一の過去と繋がり、次第に悲しみも浮かび上がってくる。開発によって森がなくなるというような話は過去に幾つもあったと思うが、相手が風だというのがまた、何とも複雑だなぁ。最初はかわいらしい設定だと思えた精霊のスタンプカードも、埋まっていくことを素直に喜んでいいのか、少し考えさせられる。果たして科子が蒼一に森を委ねたことは、仕方のないことでもあるけれど、やっぱり人間の蒼一にとっては酷だったのではないか。だからって、野分が正しいってわけでもないんだけど。
人間、動物、精霊、神様、森羅万象それぞれの生命の運命。今後どうなるのか楽しみだ。
期待以上におもしろかった。オマケ漫画もおもしろい。そしてなんてったって表紙が素晴らしい。「土星マンション」じゃ、この深い緑は描かれないもんなぁ。
というわけで、お気に入りがまた増えました。(眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)ってなってるけど、個人的には(のんびりした休日の朝の素敵な話コミックス)って感じです。是非手にとって、素敵な時間をお過ごしください。
SF嫌いの方にはお勧めしませんが、格差社会が露になった世界観は身に迫り、そんな中、下町気質の残る街で人々に見守られながら健気に生きる身寄りのない窓拭き少年の物語は心に染み入ります。この先どんな展開になるのか、続きにものすごく期待してます。
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