ハナシがうごく! 笑酔亭梅寿謎解噺 4 (笑酔亭梅寿謎解噺)
噺は名人でも、酔っ払いの暴力落語家・梅寿と、トサカ頭の
弟子・梅駆のシリーズ第4弾。
相変わらずの破天荒で愉快な物語だが、今回はストーリーから
登場人物の動きまで、実に良い出来だと思う。
楽しく読めた。
それぞれの掌編のタイトルにつけた落語とのマッチングもいいし、
全体が漫才と落語の間で揺れる梅駆の心の動きで、一本スジが通って
いる。
最後のオチで全編を見事にまとめているのも、良い。
ハナシがはずむ! 笑酔亭梅寿謎解噺 3 (笑酔亭梅寿謎解噺) (集英社文庫)
謎解き要素はあまり感じられない代わりに、落語の楽しさが伝わってくる。
師匠のドタバタに巻き込まれる竜二(主人公)の巻き込まれっぷりも板に付いている。各話とも噺の面白さが芯となっている。落語初心者にも十分知っている方にも楽しめる一冊である。
水霊 ミズチ [DVD]
本作は一応、ポニキャンやYahooが製作を担当する「ホラー大作」だ。それを若手の山本監督が背負うには相当ムリがあったのではないか?演出力は別に年齢で優劣が決まるものじゃないが、活動写真の世界ではやっぱり「下積み」が必要だ。メイキングを観ると、山本監督はモニターで演出している。スタジオ上がりの監督たちは名だたる先輩にシゴかれるので、役者の横かカメラの傍にいるものだ。それが「今の芝居もカメラもダメ」と遠隔で言われてもなあ、という感じだ。百歩譲って仕上がりが良ければいいが、正直本編は最後まで観るのが大変だった(笑)。編集している時点で監督も「こりゃ支離滅裂だな」というのが分かったのではないか。だからサイドストーリーの「水霊縁起録」が必要になった、ということだろう。意外にもこの100分の出来はいい(笑)。こちらはYahoo動画でのみ公開されたようだが、できればこの作品を観てから本編を観たほうがいいだろう。本編で「?」だったいくつかのシーンの謎は解けます。結局これは黒沢組の快作「回路」をモチーフにしているのだろうが、足元の先にも及ばない。役者陣は井川遥、渡部篤郎、星井七瀬、山崎真美、柳ユーレイら面白い組み合わせなのに、本当にもったいない出来だった。ぜひ中田秀夫監督に撮ってもらいたかったなあ・・・。本編は星1つだが、演技録に2つプラス。
ハナシにならん! 笑酔亭梅寿謎解噺 2 (笑酔亭梅寿謎解噺) (集英社文庫)
上方落語の大御所、笑酔亭梅寿と弟子で鶏冠頭のかけだし落語家、梅駆こと竜二のコンビが巻き起こす
事件のいろいろ。
「謎解き噺」とサブが入っているのは、これが2冊目で、最初の本が、ちょっとミステリー仕立てになって
いたから‥だろう。
今度の本にも若干謎めいた話がはいっているが、明らかにハズしている。
もともとこの本は、ツッパリでどうしようもない竜二が強引に梅寿に弟子入りさせられたところから、
当然起こるトラブルやら意地の張り合いを、古典落語の話に絡めてすすめてゆく物語。
それにミステリーを組み込むのは、筆も窮屈そうに見える。
それより、この本のように古典落語と絡めた人情噺にもっていった方が、読んでいて自然と腑に落ちるというもの。
次作もぜひ、このコンセプトでお願いしたいし、シリーズとして期待もしたい。