作風から見ると異色作だが、作者の頭の中の「ヤワな日本人<-->逞しい在日アジア人」と言う構図は生きている。主人公は救命士の織田と親に捨てられた不法滞在の孤児達のグループ。織田が孤児達に寄せる信じ難い善意を釈明するため、妻と息子を眼前で地下鉄サリン事件で失くしたと言う苦しい過去を用意している。織田の「わたし」と言う一人称形式を採用しているのも珍しく、そうまでして語りたいものは...。
グループ中の笑加が頻発性貧血で倒れたのが織田と明をリーダとするグループの係りのキッカケ。織田の仲介で笑加を不法に診る医師の前園の善意も計り難い。笑加の薬を入手するため、織田と明は故買屋から盗品をするが、結局織田は故買屋を殺す羽目になる。それも自ら実行出来たにも関らず、中国マフィアのボス李に頼み、五歳の中国娘の命を差し出して。織田の精神は病んでいたのだ。少年達とは似た者どうし。笑加の治療費のため、李の下で織田は非合法の仕事に奔走するようになる。明のように性根が据わっていないため、織田の崩れ方は脆い。笑加の兄で、李や明と敵対するトモの出現で増々窮地に。明達を救いたいと言う清らかなモラルを持っている筈の織田が、一番自己撞着と泥沼に陥っている。トモの死の後、求心性のないまま題名に沿うためだけに物語を続けるセンスも<?>。
9.11テロ事件を"対岸の火事"と見ていた日本人の政治的意識の低さと暴力の威力をハードボイルド小説の形に纏めたものだが、メッセージ性とエンターテインメント性が中途半端に混在して今一つの出来。主人公を善意かつ精神衰弱の男に設定してはハードボイルドは成り立つまい。常の如く、ダークな主人公を中心に物語を構成すれば更にインパクトの強い作品になったと思う。
三池崇史監督が好きなら見るべしという感じ。
崩壊した日本の裏側的な表現がなんとも印象的。
ただテンポが良くて観る物を飽きさせない部分はさすが三池監督という感じ。
暴力団とマフィア、そして一人の少年と少女。それらの点が線になった時・・。意外な結末といい三池崇史ワールドが満載の物語。
キャストも個性的で好演していると私は思います。
なぜかしばらくすると又観たくなる感覚が不思議。
70年の返還前後の沖縄を舞台に、ベトナム帰還兵であふれかえる歓楽街での荒廃や人種対立、住民を踏みにじる強姦や轢き逃げといった米兵の犯罪、反基地闘争などの歴史事象を表に配置し、孤児として育てられ、アシバー(やくざ)の頭目として生きてきた裏社会の暗黒とニヒルなアンチヒーローたちの自己破滅的なテロへの共感を描いたハードボイルド小説。
CIAと反戦運動の二重スパイという背徳や、同じ孤児施設の幼なじみ同志の反発と嫉妬、疑心、ヒーローを慕う混血の美少女への恋情などが、漆黒の混沌を満たしていいた上巻から一転、下巻は、彼らを裏切ってきた世界への復讐の日に向かって突き進むように展開する。その過程で、混血の美少女高校生のむごたらしい死、その復讐、恋人の縊死、とヒーローたちを取り巻く世界への襲撃と彼ら自身の自壊が進行していく。同時にヒーローたちが見下していたうちなーんちゅ(沖縄人)たちが次第に覚醒し、高まっていく。そのすべてが爆発する終末は圧巻でしかも悲しく、そして再生への希望に満ちている。
大排気量のオートバイで駆けるようなスピードと重量感で一気に読み進んだ。
アクションが派手かなと思ったが、やはり映画の見所はアクションに あり。冒頭からアクションが入るが、ラストの長いアクション シーンはなかなかのもの。2丁拳銃撃ちが定着していたのだから すごい。
不夜城はビデオで見ましたが馳星周の作品を読むのは初めてです。
第一級の娯楽作品です。
薬屋「楊偉民」、故買屋「劉健一」、堅気「周天文」、殺し屋「郭秋生」、「朱宏」率いる上海流氓、朱宏の情婦「楽家麗」、「崔虎」率いる北京流氓、崔虎に使われる元刑事「滝沢」、滝沢の情婦「林宗英」、日本のヤクザ「新生会」、中華人民戦線「謝圓」等登場人物が、かなり多いのですが、複雑で分りづらい訳では有りません。
内容は非常にシンプルです。
劉健一の怨念と野望を背景とした策謀に巻き込まれながら、生き残りを掛けて、それぞれの登場人物が立ち回る物語です。
利用されているだけなのを分かりながらも一途な「郭秋生」の複雑な心理描写、落ちるところまで落ちていく「滝沢」の人物描写が秀逸です。
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