スタンリー・キューブリック作品の中では、最も過小評価されているうちの一つと思われる作品。
しかし、単に衣装や舞台だけではなく、キャラクターの内面描写に目を向ければ、
最も奥深くまで表現しきっている映画だと思う。
ライアン・オニールが抑制を効かせれば効かせるだけ、
周囲の言動は滑稽に映り、
時に哀れみさえ感じさせる。
最後の義理の息子との対決のシーンが顕著。
あの場面で嘔吐するシーンと、婦人の自殺未遂で取り乱す描写。
ともに対比させるようにライアン・オニールは無表情のまま。
第一部での成り上がりでも、スパイに実情を吐露するなど、
感情表現がもっとも物語と合致して、
なおかつ、この物語は一人称でありながら、
ナレーションは三人称を用いているので、滑稽さと荘厳さが同居する、素晴らしい作品に仕上がっていると思います。
撮影技術はもちろん最高。
まさに本当の「マジックアワー」を用いたシーンなど、鳥肌が立つほどの画面の美しさを何度味わったことか。
3時間という大作ですが、個人的には非常に好きな作品です。
数年前のBS映画劇場(土曜深夜の)で観ました。
最初いきなりベタな展開から猛烈な大根役者っぷり、コレがまさかキューブリック映画とは思わず観始めました。
追いはぎのシーンと、通りすがりの奥さん不倫シーンでもう釘付け。3時間と長い映画だったので25時スタートで朝方の4時過ぎまで観る羽目になったことを覚えていますが、眠気も吹っ飛んで熱中した。
大まかにはバリーの半生で、内容自体は結構どうでもイイようなモノでしたが(笑)・・ ロードムービー的な面白さと度胸だけで突き進むバリーの生き方は見ていて感動すら覚えました。(頭がイイとは思えませんでしたがね・・) 特筆すべきはこの映画の為に開発されたカメラで撮影された自然光を生かした風景や夜景です。隠れた名作といわれますが、この美しさはもっと皆さんに知ってもらいたいものです。
残念ながらキューブリックBOXのタイトルからは外されています。なぜバリーリンドンが外されているのか理解できません(汗) ブルーレイを単体で出してください。この映画なら高くても買います。
スタンリー・キューブリック監督の作品は以前からBOXでしか買わないので、
今回BDで初めて観ましたが、「バリーリンドン」はまるで動く絵画といった
感じで、思わず画面に見入ってしまうことがしばしばでした。
ほんとに素晴らしいです。
場所をとらないですし、他の旧作にあるようなぼったくりでもないので、と
りあえず満足しています。
ただ、「シャイニング」だけは英語字幕のものを買おうと思っています。
どの曲を聴いても流れていた場面がすぐに思い出せると言うサントラは、めったにお目にかかれる物ではありませんが、このCDは正にそんな至福の1枚です!
タイトルバックを始め作品のあちらこちらに登場し、テーマ曲扱いとなっているヘンデルの「サラバンド」… 原曲はハープシコードの音色がもっと軽やかな感じですが、音楽監督レナード・ローゼンマンの重厚かつ陰鬱なアレンジ(…今作で見事にオスカーの編曲賞を取っています)は映画全体の悲劇的なトーンを彩って、大変印象深い仕上がりになっています。
チーフタンズが演奏する鄙びたダンス曲の数々、英国軍シーンでのシンプルな鼓笛隊の響き、プロイセン軍シーンの「ホーエンフリートベルグ行進曲」、宮廷シーンでの華やかな音楽などなど、どれもこれも画面とピッタリとシンクロ、強く印象に残っており、聴いていてると絵画的で美しい映像が次々と眼に浮んできて、さすがは"完全主義者"キューブリックと唸らされる選曲ですね…
特にラスト・シーンに流れるシューベルトのピアノ三重奏が、淡々とした表情のマリサ・べレンソンにこれまたピタリと嵌ってなんとも余韻たっぷりで素晴らしい。
日本公開時に発売された"映画のシーンの数々がイラストで描かれた"素敵なLPジャケットを復刻して、何とか国内盤CDを再発してくれないかなあ…
「博士の異常な愛情」「2001年宇宙の旅」「時計じかけのオレンジ」・・・。 キューブリックの最高傑作を決めるのは、難しいと思う。 けれども、彼の一番の魅力が、画面と音と、動作を、一つ一つのシークエンスに並べる 総合芸術だと言う観点で捉えるとしたら、この映画が、その最高だと思う。 そのぐらい、この映画は、キューブリック作品の中にあっても突出して 美しかった。元々、キューブリックは光の使い方がメチャクチャ上手いんだけど、 この映画では、ライトを使わずに室内を差し込む光と言う信じられない事を 敢行してるのにも関わらず、成功してるし、室内の絵画、コスチューム。 すべてがまさに、「動く絵画」のようだった。 さて、ストーリーの方だが、要するに、成り上がりが落ちぶれていく様。 言ってしまえば、ありきたりで味けない。そういう意味で、 奇異で大胆な物を好む僕はそれほどこの映画のストーリーが好きではない。 しかし、キューブリックはそんなチャチな意見を見越すかのように 「たいていの事は誰かが既にやっている。大事なのは、より素晴らしく見せる事だ」 と言う意味(だったと思う)のストーリー論を語っている。 彼の映画は、ビジョンやテーマを知ることで、その単純に見える ストーリーを何倍にも良く見せるので、油断できない。 そのテーマは、都会の空虚さであり、貴族の空々しさであり、 偽装された関係だと推測する。それを示すかのように、バリーは、 最初は感情的に行動しながら、段々と人間に愛情を注がないようになる。 まるで、そうでないと貴族社会では生きていけないかのように。 彼の他作品で見られる、シーンに一見当てはまらないような音楽が 刺激的に重なり合って、サブリミナルのような強い印象を与える、 そんな音楽の使い方を、当映画ではしていない。 けれど、どこか野心的で、心の内を隠すような選曲は、もしかしたら、 そんな欺瞞を、音楽でも表現しているのかも知れない。 正直、僕はハッキリと理解できていないだろう。 しかし、キューブリックの映画は、見るほどにその力を見せつけてくる。 いつかは、その計算されたいくつかが僕を捉え、単純に見えるストーリーの奥行きを醸しだし、 「バリー・リンドン」を絶賛せざるを得なくするだろう。 そんな予感すらする。
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