講釈師から講談速記になり名をなした悟道軒円玉を中心に、そこに居候する信吉を語り手に、その周りに集まる人たちを一人一話で物語る十二話の短編集です。
大正期の東京の下町を舞台に、今なお残されている「人情」を描き切っています。
どの一編も素晴らしいのですが、個人的には第一話の「紅梅振袖」が最も気に入りました。
振袖衣装の刺繍では名人と言われるほどになった友次郎の隠された純真な思いが描かれています。
彼には一緒にはなれないことを承知の上で、そのお嬢さんの結婚式に来てもらおうと、振袖を渾身の思いで縫っていたのです。
この思いを受け止めるお嬢さんの態度も素晴らしいと思います。
そして、ラストの持って行き方の上手さ。
素晴らしい短編です。
その他の十一編の短編のどれを読んでも、心を揺すぶられる作品ばかりです。
山田五十鈴さんを堪能出来ると思います。BUT、このDVDを買う余裕のある方で、『浪華悲歌』『祇園の姉妹』『残菊物語』をまだお持ちでない方は、、まず『浪華悲歌』、次いで『祇園の姉妹』『残菊物語』の順でお勧めいたします。どうしても欲しい方は、買いましょう。いい脚本と美しい映像です。国宝級の映画と思います。
何と微笑ましい会話でしょうか。映画もエッセイも高峰秀子さんは最高です、
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