本作は面白い。全編ハイテンションで突っ走り、エンドロールまでどデカ級数(笑)。
こういう作風は、日本映画じゃ珍しい。一見の価値がある作品だ。
基本的にはホラーなのだが、幽霊というのは、自分の想像の産物である、という「基本軸」がブレないから、
おバカな作風に於いても、真実味があるのだ。
ツッコミどころも満載なのだが、それらを吹き飛ばす「勢い」と「笑い」が一気呵成に展開するから、最後まで
飽きることがない。
主演の相武紗季は、主人公をとてもキュートに演じていて好感だったし、溝端淳平もこれからブレイクしそうだ。
栗山千明など、黙っていれば絶世のクールビューティなのに、「鴨川ホルモー」とか本作とか、何かが吹っ切れた
感じが素晴らしい(笑)。平岡祐太はいつものキャラクターの延長みたいな役だったが、ゆえに安定感がある。
佐藤二朗や細川茂樹など、脇役もおバカ系に徹していて、主演4人とともに、テーマパークのアトラクションに
しっかり乗り込んでいた。そこに同乗する観客も、一体になって楽しめる作品なのだ。
特典映像もテンコ盛りで、とても楽しそうなメイキングや舞台挨拶を収録。加えて、俳優たちの恐怖体験なども
聞くことができる。あまりにNGを出すので、最後は主演女優・相武の胸の部分にカンペを貼り、何とかOKを
もらった坂東英二の姿は爆笑ものだ。
映像もDVDとしては上々であり、ホラーらしい「音作り」も良い感じだ。星は4つです。
迷子探偵、ディスコ・ウェンズディを主人公としたこのミステリ(SF?)の中巻は、名探偵が登場する本格探偵小説のパロディっぽい感じ。
でも、探偵小説とは異なり、時間の経過に伴い謎が解けていくという感じではなくて、ますます謎は深まるばかり。
事件としては、ミステリー作家である暗病院終了(なんかこんな作家がいたような気がする)の謎の死とその舞台となる建物「パインハウス」の謎を解くというものだけど、その謎を解いていく過程で、パインハウスに集結した名探偵たちが、またまた倒れていき、主人公のディスコ・ウェンズディが、その謎を解いていくのだが、時空を超越するような設定があって、どうもまともなミステリではない。
カバラや北欧神話という道具仕立てもミステリっぽいんだけど、なんとも言えない展開で、分かりづらい内容になっている。
でも、その割には読みやすく、また物語に引きこまれていく。主人公を初めとする登場人物も魅力的だし、なかなか楽しい1冊だ。
『美しい馬の地』では、 何だかよく分からないけど流産がとてつもなく許せなくなった男が主人公。
心理描写をひっくるめても、それは「衝動」に近い感情。
どれくらい流産が許せないかといえば、過去に流産し、死んでしまった友人の子供に祈りを捧げてもいいか、と持ちかけるくらい。
そしてそれを断られても、食い下がるくらい。
泣いてしまうくらい。
台無しになった宴会を途中で抜け出したところを、憤慨した別の友人にボコボコにされ、階段から突き落とされるくらい。
とにかく、 「一作目からこれか……」と思わずにやりとしてしまったことをよく覚えている。 『短編五芒星』に収録された作品は舞城ワールドからちょっと外れたり、実験的な要素もありません。
確かに、『煙か土か食い物』や『世界は密室でできている。』とは違うかもしれませんが、舞城作品にはすべて一本の線で繋がれています。
五芒星ではなく、直線。
離れてはいない。 すべて繋がっていて、すべてに暖かさがある。
文学といえば「暴力」、「性」だが、どんな凄惨な場面であろうが、舞城ワールドには「まあそんなこともあるわな」的破天荒さ、無邪気さが同時に含まれている。
それを私は、「暖かさ」だと表現したい。 必要以上に持ち上げない、でも時には必要ないくらいに汚い部分を持ち上げる。
日本を代表する文学者の誕生を確信しました。
疾走独白ミステリィ。一言で言えばそんな感じ。確かに今までこんなスピード感のある小説は読んだことがなかった。もっと早く読めば良かった。そして物語の進行と同時に一人の男がありのままの自分をさらけ出していった。…それは裏を返せば、失踪毒吐くミスリード。ひとつ間違えば読者を置いてきぼりにしかねない勢いで、えげつないくらいに人間の内面を畳み掛けていることにもなる。でもそこでギリギリ裏返らない絶妙のバランス感覚がこの本には備わっている。と、思う。 途中で笑いがとまらなかったし、最後まで読むのを停められなかった。そしてこの物語の主人公であるところの奈津川四郎は最初っから考えるのをやめられなかった。微睡みの中でさえ。パターンを考え暗号を考えトリックを考える。犯人について、自分について、セックスについて、兄弟について──その先にある家族について。そうやってたどり着いたところには何があったのか。そこで得たものは果たして真実正しいのか。それは読んでのお楽しみ…。
すっごくいい。 もうとにかくいい。 奈津川血族物語(ナツカワ・ファミリー・サーガ)とか、サイコなシリアル・キラーとか、謎めいたタイトルの意味とか、暗号・因縁・奇妙な建物、魅力的なネタ・意義深いテーマは数々あるんだけど、でもやっぱりこの小説でいっちばん印象深いのは主人公・奈津川四郎のメス捌きのリズムじゃないだろうか。 チャッチャッチャッ、チャッチャッチャッ、一人の処置が済めば手術用手袋を換えて、パン!「ハイ次!」 くへー、すっげえかっこいいじゃん。
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