とてもよくできたドラマでした。
映画ではなく、ドラマだからこそこのような登場人物たちの複雑な心情を描くことができるのでしょう。それぞれの登場人物の過去や現在の状況をさらりと短時間で効果的に見せる脚本と演出が視聴者にきちんと伝わり、納得しやすかったです。
色々な母親が登場します。
事情により育てられなかった生みの母親とその子に対する愛情と献身。
養母の、本当の子との間での苦しい選択と愛情
施設で育ててくれた園長さんの愛情
そして自分が親となって注ぐ愛
子供を愛し守る中で、自分が受けた愛を再確認していく道のり。
松雪泰子さんはいつのまにこんなに演技力をつけたのでしょう。顔の表情だけで幅広く演技ができる役者さんになりましたね。田中裕子さんの演技は少し技巧的な印象を受けますが、それが個性的として成り立っており存在感があります。
子役の役者さんはもう言葉にあらわすことができないほど素晴らしいです。ひどい環境の中で前向きに生きようとする姿、そしてその気持ちがぽっきりと折れてしまう瞬間、その瞬間が母になる決意をさせてしまう。それほどの説得力をこの子役さんは演技でみせてくれました。
最終回、好きなものを言い合って二人は近づいていく、そしてお互いが手の届く距離に来た時、「お母さん」「つぐみ」と言って抱き合う。もう涙が止まりませんでした。そのあとの手紙も感動です。母親として向ける娘への視線が日常的で自然です。
こういうドラマがきちんと評価されることが、良い作品を作る環境づくりになると思います。
良かった。新聞の連載を読んでいて、最後のシーンに(希和子にとっての)ある種の救いを感じていたのだが、映画では、焦点が薫に当てられており、ちょっと残念。‘がらんどう’になってしまった希和子にとって、薫との4年間は、それこそ、‘感謝’してもし切れないほど素晴らしいものだった。秋山恵理菜(薫)と恵津子、沢田久美と昌江、安藤千草とその母、いずれも共通点は、母娘関係に程度の差こそあれ歪みが出来てしまっていること。(映画にはないが、原作での中村里枝子ととみ子、この中では一番破壊された母娘関係、一体何があったんだ?)
で、この対比としての、希和子と薫の関係なのだが、多分、ファンタジーとしての位置付けなのだろう、と、無責任に思う。美しいがリアリティがない存在。あと数年経って小学校に上がる歳になれば、逃れられない現実に飲み込まれてしまう関係。(それとも山奥にでも逃げ込むか)
なので、希和子主体のファンタジーとして終わって欲しかったのだが・・・。これは男側の都合なのか。
タイトルが「八日目の蝉」なので、やはり、薫(=恵理菜)が主人公なのだろうな、とは思う。「七日目の」恵津子、昌江、安藤母、(多分、希和子含む)を乗り越えて、希和子という殻を脱ぎ捨てた、その八日目の蝉が薫。
『ママはもう要らない。薫が全部持ってって』
で、上述の母娘関係の歪みが男側の都合起因のもので、登場する2人の男どもが徹底的に(秋山丈博などは〜原作では〜ここまでやるかレベルの)ヘタレで‘そこまで見下げ果てたヤツいるの?’という体たらくである。男は意図的に排除されており、よって、母息子では成立しない。なので、母性がテーマではない。(エンジェルホームも男の子は住んでいない。が、この辺の描写は映画では省略)
それはまあ置いといて、女優陣の熱演は素晴らしい。井上真央、永作博美、渡邉このみちゃん、小池栄子、原作の雰囲気を壊さず、それ以上の世界を作り出していると思う。森口瑤子さん、大変つらい役、お疲れ様でした。このみちゃんは4歳であの演技ですか。うちの娘が4つの時は・・・やめときます。
写真館のエピソードはGJ。以上、40代後半のおやじでした。
檀れいさんが演じた主人公の母親としての罪には、子どもを巻き込んだ痛みが後から襲ってきたエンドローグに心地よい重みが感じられ、最終回『奇跡』は涙が流れた。
すごい作品だ。負け犬と勝ち犬の友情は成立するのか?なんて一言でとても片付けられるものではない(私もこの解説は問題ありと思う)。深く人間を、そして社会をもみつめている。人と社会と関わるとはどういうことなのか。何のために歳を重ねるのか。作者が投げかける疑問は重く、容赦がない。
葵の視点のみが小中学生あたりから現在へと順を追って記されていく。これが時間軸で物語を壮大にしている。
私は、葵の視点で描かれる3人目の主人公「ナナコ」にくぎ付けだった。小夜子と葵の間に流れる河とはまた違う、葵とナナコの間に流れる深い深い河。そこに「境遇」「社会構造」といったテーマを勝手に見出してしまうのは私だけだろうか。
最後は(やや無理に)明るめで、作者なりの見解をはっきりと示してくれているのは潔くすばらしい。が、身近な現実に戻ってみると全然解決した感じがせずむしろ空しさは深まるばかりだ。弱っている30代女性は読むタイミングに気をつけたほうが良いかもしれない・・・。愛読書「負け犬の遠吠え」に日々癒されている負け犬な私は、本書には激しく打ちのめされた。逆に、30代-40代女性以外の読者に、このリアルさが実感できるかどうかは甚だ疑問。だがそれを差し引いても、一読の価値あり。
過去と現在が入り乱れての進行は映画ならではのもので、すぐに引き込まれました。
井上さん、森口さん、小池さん、そして永作さんそれぞれの熱演は一見の価値ありです。
写真館のシーンは泣けたなぁ。
後、島の祭りのシーンが美しすぎる。
両方とも、映画って本当にすばらしいって感じさせてくれる瞬間でした。
最後断ち切るように終わるのは、後から色々考えさせられて・・・。
個人的には、正解だったんじゃないかと今は思います。
日本映画も捨てたもんじゃないな。
お勧めです。
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