廉価版がやっと発売されました。映画を論ずる人で、まだこの作品を見たことがない人にはぜひ見ていただきたい。映画で描き出せるリアリズムの原点があります。もしフランスで作られたこの当時の映画を見比べていただくと、この映画のすごさがわかります。 映画は「光」の芸術だと思い知らされます。
第一部はアメリカ南北戦争を、第二部では南部での行き過ぎた黒人擁護政策に反抗したクー・クラックス・クランの活動を描いています。
この映画は物語自体というよりは、映画の技法により評価が高い作品らしいです。
それを裏付けるかのように、第一部での北軍と南軍の戦闘シーン、第二部でのKKKの黒人襲撃シーンは二十一世紀の今見ても大変迫力があります。むしろこの作品に及ばない戦闘シーンしか描けていない現代映画も多いはず。
そして主演のリリアン・ギッシュさん、大変お美しいです。自分はまだ大学生ですが、美しい映画女優と言われてもモノクロ映画の名女優さんしか思いつきませんね。イングリッド・バーグマンさんやオードリー・ヘプバーンさんとか。当時の画質の悪いモノクロ映画だと女性は美しく映りやすくなるだけかも知れませんが……
しかしこの作品の悪い点は…やはり露骨な黒人差別の描写でしょうか。無知な黒人たちを正義の名の下に天誅を加えるKKKの行動には、違和感を通り越して不快感すら覚えます。
とにかく、星4つなのはあくまで映画史におけるこの映画の位置づけを考慮したまでのことです。
ちなみに、作中に流れるゲーム音楽のようなBGMは個人的に好きです。
まず、商品を手に取ると、通常のDVDと比較してずしりと重みがあります。これは特典の小冊子の重みです。パッケージには『解説リーフレット全64頁』とありますが、普通、リーフレットって一枚の紙を2つ折りにしたものを言うんじゃなかったでしたっけ?とにかく作品解説、DISC2の短編一本一本の解説、キャスト・スタッフの紹介など、とても情報量が多いです。DVDの仕様自体は特典映像など無く本編と字幕選択、チャプターのみですがそれを十分以上に補っています。
本編は1926年公開の再公開版であり、他メーカーで出ているサウンド版と違い現在残っているパージョンの中では最良のものです。リリアン・ギッシュが自伝の中で「多くのシーンが支離滅裂になっている」と語ったサウンド版はいくつかのメーカーから出ていますが、この再公開バージョンはこれまで中々見ることが難しいものだったと思います。
グリフィスが、南部人から見た史実を、実際に南北戦争を経験した親世代の人達から見聞きした話を元に、グリフィス組と呼ばれた同士達と作った作品です。当時の写真を参考にそのままそっくりにセットを作ったり、ドキュメンタリー映画のような迫力を持った作品です。南部から見た南北戦争という点では『風とともに去りぬ』と同じですが、リリアン・ギッシュは「国民の創生がドキュメンタリーなら風とともに去りぬはミュージカル」というようなことを自伝で語っています(異論はあるかもしれませんが…)。
DISC2の短編集はいずれも日本初ソフト化とのことで、とても貴重なものだと思います。出演者の中にメアリー・ピックフォードやブランチ・スウィートらスターの名前を見ることが出来ます。ピックフォードは、幼い頃からリリアン・ギッシュの友人でしたが、ある事情からグリフィス組を抜けました。脱退前の作品だと思います。ブランチ・スウィートは当初国民の創生で主役を演じる予定だった、華やかで可愛らしい女優さんです。映画の父と呼ばれながら、今まで日本では見ることが難しかったグリフィスの短編作品を見れるようになり、とてもうれしく思います。
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