ピース・又吉さんの帯につられて買ったんですが、この世界観・・・暗すぎて入り込めませんでした。 ただ、あとがきで又吉さんも書いてらっしゃる言葉は(作品の中の言葉です)共感できました。 死刑囚が安易に死を選択してはいけない。 なぜ殺人を犯したのか、遺族にとっては辛いことかもしれないけれど、 それを明らかにすることによって、見えてくるもの・繋がっていくものがあるのではないかと勝手に思いました。
やっとけばよかった?
相変わらず暗い話だ。しかし、デビュー作の『銃』よりも、僕はこの『遮光』を今のところ中村文則の最高傑作だと思う。
ある意味、恋愛小説だろうか。死んだ恋人の指をホルマリン漬けにして持ち歩くという、『銃』とテーマが被っているような話。
主人公には、まったく自分というものを持っていない。安いテレビドラマやであった人々が発した台詞をそのままなぞるだけで、彼は自分の意志をほぼ持っていない。怒るのにも怒ろうと思わなければ怒れない。自分のしていることを演技だと思い込み、その思い込んでいることを演技だと思う、究極の負のスパイラルに翻弄されていき、ひたすらに「典型さ」を求めていく。
虚ろな文体とは違い、リアルに描かれた外面描写は著者のお手のものだが、今回は主人公の性格からして、それが特に効果的になっている。
そして、僕が評価しているのは、そんな話でありながら、主人公がひたすらに一生懸命なところだ。狂ってるんだけど、何かをめちゃくちゃ頑張ってる。
まぁ、それがまた逆に物悲しいんだけど。とにかく、普通の人にはあまりお勧めしません。この人の作品は暗すぎます。
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最悪の男“化物”木崎の言葉が、妙に生々しく私の胸をえぐる。
「その刺されて苦しむ男を残忍に見るだけではつまらない。笑いながら見るのでもつまらない。しっかり同情するんだ。
……その時、命を破壊する残忍で圧倒的な喜びと同時に、その命に同情する温かで善良な感情が染みるように広がる。
……肝心なのは、全てを余すことなく味わい尽くすことだ。……」
子どもの頃、面白半分に虫けらを殺し、その虫が苦しみ捩れる様を見て急に可哀想になる気持ち。生き物を殺した時に思い知る、罪悪感の芽生え。なんだかそんな哀しさ、切なさが、まざまざと甦って来た。
しかし、ここで弄ばれているのは、虫ではなくて人間なのだ。主人公ユリカが木崎に命を脅かされ、人生の全てを奪われてゆく、その過程が実にハラハラ・ドキドキさせられる。
読んでいる自分自身が崩壊してゆくような恐怖や嫌悪を感じさせる、怖い小説である。
『カキフライ〜』に続き、深いです!前回、書店でタイトルに引き寄せられ何気なく開いてから引き込まれて即購入してしまった宝物です。 第二弾、心待ちにしてました! ふとその瞬間感じても、そのまま日常の雑踏に流されて忘れていってしまう…そんな繊細で¨真実な¨感情達が溢れた作品です。 忘れずにそっとかき集めた哀愁とどこか温かい気持ち。 読む人によって微妙に共感できる句が違ってくるのも、それぞれの歩んできた背景を垣間見ることができるようで深いです。 しばらく経って読み返した時、共感できる句が変わっていた…というのも人の心の移り変わりの儚さや、成長してゆく逞しさみたいなものを感じます。 是非、大切な人や友人に読んでもらってからディスカッションしてみてください。一緒に読んでも楽しいし、後でゆっくりひたるにも最高の一冊です! ピースの又吉さんの露出がようやく増えましたが、こちらはあくまでお笑いポジションで。本で別の才能に驚くはず。この作品シリーズの力が発揮できるような番組があれば最高ですね。せきしろさんと又吉さんの今後の飛躍に期待です。
久しぶりに再読してみましたが、やはりとても楽しめました。個人的には筆者の最高傑作に思えます。 主人公は大学生で、施設に入った経験があり、意識と無意識の境がときどきわからなくなるような人物です(その点でカミュの異邦人の主人公を想起させます)。主人公は偶然銃を拾い、彼の生活は銃を中心としたものに変わります。 主人公を取り巻く登場人物はセックスをさせてくれる女や大学の友人であるケイスケやナカニシ、あるいは主人公に興味をもつヨシカワユウコなどですが、ヨシカワ以外はあまりセリフもありません。しかしながら、この作品の主要な部分は主人公の内面描写にあり、周りを描かないことは対比という点で効果をあげていると思います。 圧巻なのが主人公の内面描写です。銃に関係する心理描写は特に面白く、それが最後まで徹底され、持続している点が秀逸だと思います。この内面描写を気に入った人は、最後まで楽しめると思います。
ここからは個人的な意見なのですが、最近筆者は内面描写が控えめというか簡潔になり、作品の構成やイメージに力を入れている感があります。ただ、やはり持ち味は内面描写にあると思いますし、今度はこの内面描写にこだわった大長編を読んでみたいと思いました。
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