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きうちかずひろ 不愉快犯

 不良漫画の金字塔『BE-BOP-HIGHSCHOOL』の著者である作家・木内一裕氏によるハードボイルド小説第9弾! 本作は、以前刊行された『デットボール』の登場人物たちが今回は職業や設定を変えて登場しており、主だった登場人物の性格(成宮の人を煙に巻くコミカルな様子)や配置(ノボルの先輩が佐藤である事や成宮の愛人が愛海(まなみ)である事など…)はほぼ踏襲されているが、前回とは関連性のないパラレルワールドのような作りとなっている。 著名なミステリー作家である成宮彰一郎の妻・瑠璃子が行方不明となった。事件性が高いと見た三鷹警察署の新米刑事・ノボルは、先輩刑事の佐藤とともに捜査を開始。次々に容疑者候補が浮かぶが・・・。 前作では、犯罪を犯す側だったノボルと佐藤が本作では犯罪を取り締まる側である刑事役という設定となり、物語のキーマンで最大の悪役である成宮彰一郎が前作の弁護士から著名なミステリー作家として登場するものの職業は変わってもノボルVS成宮という図式や基本的な人物配置は前作と同じように踏襲されている。 ちなみに主人公であるノボルも元は著者の代表作である『ビー・バップ・ハイスクール』の主人公・ヒロシとトオルの舎弟であったノブオをモデルとしており(苗字は同じ兼子姓)、ノボルの名前の由来は『新 仁義なき戦い』〈1974〉で菅原文太扮する三好万亀夫の舎弟で渡瀬恒彦が演じた北見登から拝借している。 行方不明になった妻に事件性があって夫が疑われるという展開に昨年話題となった映画『ゴーン・ガール』〈2014〉を思い出しましたが、警察を嘲笑うかのごとく完全犯罪を企てようとする成宮と物的証拠を求めて懸命に捜査するノボルたち三鷹署刑事たちの息詰まる攻防や展開にデビュー作である『藁の楯』の頃と比べると文章や構成力が一段と整理されていて作品自体の出来はよかったですが、ただ、今回も読後感に物足りなさを感じました。 その要因として最大の悪役であるハズの成宮に今回もそれほど憎しみを抱くようなキャラクターには思えなく、本来なら読者から見て憎むべき対象が、コミカルに描かれているせいかそれほど憎らしい存在には思えず、ネタバレで申し訳ないが、最後に成宮の証言を覆されてもそれほどカタルシスは得られなかった。 著者自身がどのあたりまで人物像を計算して描いているのか分からないが、成宮がもっと憎らしい存在に思えたら、もっと物語に入り込めて楽しめたのではないかと思います。 毎回、私の乏しい読書体験を基に語って申し訳ないのですが、東野圭吾著『さまよう刃』や宮部みゆき著『クロスファイア』『スナーク狩り』に登場する悪党の方が本作の何十倍も読んでいて物凄く“不愉快”で腹が立ったし、その分、物語に入り込んで読めたので面白かった。 最後に今回もかなりの辛口批評となりましたが、初期の頃と比べると全体的に物語の表現力もしくは構成力のバランスがよくなっていると思うので今後の活躍に期待したいと思います。 不愉快犯 関連情報

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かなり以前のVHS時代にレンタルで観た覚えがあります。映画秘宝でカルロスとこの作品についての監督のインタビューを読んで興味が湧き再見してみたいなと…主演の俳優さんは今頃なにをしているのでしょう?俳優は続けているのでしょうか? JOKER ジョーカー [DVD] 関連情報




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