Rings Around the World
やはりここでも言われているように、ファーリーの最高傑作はこのアルバムで不動ですね。
まず他の作品と比較して、テンションが違う。一曲ごとの緊張感、そして楽曲のバラエティ、そのどちらをとっても素晴らしい。
さらにアルバム全体の底流をなしている大きな、包み込むような愛。それはこの作品がとりわけ時代を映し、その影響を全身で受けとめていることの傍証だと思います。
テーマが明確だった最近の2作とは異なり「主題」を必要としない、それでいて楽曲たちが自ずから、大いなるものの方向へ収束していく感じは堪りません。
心に何らかの核心/確信がサプライされたような、聴き終った後の温かい感覚。
数年経った今も、月に1度は引っ張り出して聴いています。
Dark Days / Light Years
足繁くCD屋に通うような音楽ファンなら、SFAの作品って1つ位は持っているのではないでしょうか。
大ファンではないけれども、音楽好きがCDを物色する過程で、なんとなしに買い物カゴに放り込んでしまう。そんなバンドってあるものです。
私の経験から他の例を挙げれば、Teenage Fanclub、New Order、R.E.M・・・
私は彼らの作品は間違いなく好きです。
しかし、中古屋で常に見かけることもあってか(苦笑)、大きな期待と熱意をもって作品に接したことは果たして無かったような気がします。
ディスクユニオンに4年通っても、未だ全ディスコは揃わない。
一気に買っちまえよ、といわれても、そこまではなあ・・と思ってしまう。
好きではあるが大好きにはなりきれない。
思いっきりハマれる機会を見つけられない。
微熱のような愛情をもってダラダラ続いている恋人?のような関係が続いています。
SFAも恐らくは「微熱の恋人」のまま、ゆるい関係でこれからもやっていくんだろう、と思っていました。
しかし最近少し様子が違ってきました。
何の気なしに買ったこの新譜が実に良かったのです。
買ったその日から気に入り、i-Podで何度も聴きた。
家でも何度もかけた。
興奮冷めやらず、気紛れで集めていたいくらかの作品も引っ張り出して、じっくり聴きこんでみた。
「俺ってSFA大好きだったのかもしれん」
暫くするうちに、こんな感情が沸いてきました。
初めて彼らのCDを買ってから4年が経っていますが、こんな素敵な感情に気づけるなんて思わなかった。嬉しいことです。
このアルバムは、バンド16周年を迎えての通産9枚目。
空くまで自身のサウンドカラーを守りながら、今までの作品の系譜では語れない作品に仕上がっています。
初期のようなごった煮サウンドとも、中期の包容力に満ちたサウンドとも違った感触。
一言でいうと、ミニマルでソリッド、といった感じでしょうか。
どの曲も特定のフレーズや歌詞をリフレインしながら、お得意の奇抜な編集テクで、曲のボルテージを技巧的に上げていくような構成になっています。
よってパッと聴きには少し無愛想に響くかもしれない。
しかし曲を構成する要素には、今までどおりのSFAらしい「人懐っこい」要素がちゃんと忍ばせてあり、ここらへんはさすがといったところ。
個人的にはこの奇妙な対比に心惹かれました。
違ったアプローチから、従来の彼らが持つ魅了を逆説的に提示されたような気がします。
ドラムがかなり強調されていて、腰に来るグルーヴが多いのもGOOD。
ライブで踊りたい曲がそろっています。
今までことごとく見逃していたのがいまさらながら惜しくなってきました。
しょうがないので部屋で踊ります。
正直、なぜこの作品で彼らに惹きつけられたのかは良くは分かりません。
今では「hey vinus」を除く全作品を揃え、連日聞いている私ですが、以前は何の気なしに聴いていた曲が素晴らしい響きを伴って聞こえます。
フロントマンのグリフは温厚な人柄で知られていますが、そんな彼の人懐っこい楽曲に、知らず知らず心惹かれていたのかもしれません。
じゃなかったらケチな自分が新譜を買ったりしないものな。
今年4月から社会人になって、金はあるが時間がない、音楽もある程度雑に接している感を自分自身感じていたけれど、そんな中でこういう感情と出会えたのは嬉しかった。
ソリッドでクールなサウンドによって、私は4年越しでSFAに目覚めました。
もっと大切に音楽を聴いていれば、こういう「出会い」は増えるものなのかもしれません。
ダーク・デイズ/ライト・イヤーズ
テーマは光と影、明と暗。
タイトルが示す通り、陰陽がくっきりと分かれた楽曲が交互に配され、アンセミックなグラムポップとトリッピーなサイケデリアがせめぎあいながらも互いを引き立てるように一つの流れを形作っています。
野性的なラウド・ビートが鳴り響く冒頭曲から中毒性抜群で、ぐるぐると渦巻くグルーヴに呑み込まれます。
他にもフランツ・フェルディナンドのニックがドイツ語でゲストコーラスする#4、中近東の民族音楽がフィーチュアされた#7など、相変わらずアレンジが面白い極彩色のアンセムも目白押し。
ポップなファーリーズが好き、サイケな所が好き、実験的な所が好き等々…全方位でファンの好みの琴線をカバーする出来栄えだと思います。
また、今作のアートワーク、前作で起用した田名網敬一と、それまで担当していたP.ファウラーの両者によるコラボとなっているのも注目です。
内容は最高だった前作ですが唯一あのジャケットに馴染めなかった自分としてはファウラー氏の再起用は嬉しいです。
国内盤が田名網色の強いエキセントリックなジャケットで、輸入盤はファウラー色の強いポップキャラ系統。国内盤のボーナストラックは1曲のみ(しかも#7のライヴ音源)という低特典なので魅力に欠けます。私はジャケットの好みで輸入盤をオススメします。