若き緑の日々
S&Gの様々な名曲を集めたベストアルバムである。ビートルズにおける赤版、青版のような位置づけであるが、ビートルズと彼らがほぼ同年代とは思えないほどの違いを表現している。
対象は常に人間の心のヒダに刻み込まれた人生の喜びや悲しみである。
これを鋭利なナイフで切り取るように、我々に見せてくれる。
メロディーも当然素晴らしいのだが、この歌詞の奥深さはどのような賛辞でさえ足りないほどである。
I am a rockやHomeward Boundでは孤独を、Sound of silenceやThe boxerでは都会に生きる者の心の虚無感を、ドキッとするようなものに投影して語りかける。
歌詞を読むだけで泣けてしまうポピュラーソングなんて滅多にあるものではない。
緑の日本語学教本
著者は現代日本語学を代表する研究者の一人である。しかし地位や名声には恬淡としているので、学界ではそれほど目立っていないかもしれない。いかにも「学究」という、いまでは珍しい昔気質の研究者である。といってもその知識は古典の日本語のみならず、最新の言語学をもカバーしており、その鋭い洞察力や研究にかける情熱は日本語学界では有名である。
研究では妥協を許さず、人にも自分にも厳しい。したがってこの本の内容の信頼度は非常に高い。ただその信頼性の高さを感じさせないとっつきやすさがある。パッと見、脱力するようなレイアウトだが、これは著者が多くの入門者が手に取りやすいようにとの配慮で、中身は本格的である。
従来の教科書にありがちな詳細な説明を脱し、最低限必要な項目だけを厳選した教科書。
経験の浅い教師でも教えられるように要を得た教師用指導書もある。著者は大学教員にもかかわらず、初めての講義には教案を作って臨むほどの几帳面さでも知られている。
ruin―緑の日々 (リンクスロマンス)
超鈍感・能天気男な初恋の君(リオ)と、包容力あるオトナなのにいざと言うとき及び腰な男(ガルドラン)に挟まれ、前作で悲惨な目にあったカレス。
タイトルも表紙イラストも、カレスの幸せを約束しているのは間違いない!な、続編なんですが……。
何と言うか、良くも悪くも同人誌的と言うか。作者の趣味で楽しんで書いてるのはわかるし、それに「合う」方にはいいのかもしれません。が、私は正直、前半は退屈でした。
ガルドランの過去も説明的だし、森の守護者(白い狼)や亡くなった妻の不義の子のエピソードは無くてもいいのでは。いかにもとって付けた感が否めません。
辛い失恋とあまりにも悲惨な出来事のせいで廃人のようになってしまったカレス、なので前半は話が動かないのです。もちろん、ガルドランの献身的介護や愛情が綴られ感動すべき部分なのでしょうが、これは前作巻末の「林檎とドングリ」(短編書き下ろし)で十分語られているし、あまりくどいのも不粋な気がするんですけどねー。
後半、ガルドランが事故で負傷してからの展開は面白かっただけに残念でした。
The Best Year of My Life
「We are」「over」という、不吉とも思えるメッセージを発しながら、見事、高く大空への飛翔に成功したかに見えた双発機・オフコース号ではあったが、案の定、この2タイトルの制作時点ですでに片方のエンジンに重大な機能障害が発生していた。不具合が生じたことについて様々なカムフラージュを施しながらしばらく飛び続けたものの、故障した側のエンジンはついに回復することなく、結局、機体から脱落していった。大きな損傷を負ったまま飛行の継続を余儀なくされた機は、墜落だけは避けようと残されたもう一方のエンジンをフル稼働させて必死で飛び続けた…。
−これはそんな時期のアルバムである。孤軍奮闘する小田和正と、無我夢中で彼をフォローしようとする3人のメンバー。その死に物狂いの団結により、なんとか、築いてきた輝かしいバンドの歴史に泥を塗らずに済むギリギリセーフの作品を生みだすことが出来た。今聴くと確かに、やや時代に流された感のあるサウンドに若干の気恥ずかしさは感じるものの、「夏の日」の名人芸ともいえるメロディーラインや「緑の日々」の圧倒的なスケール感、「恋びとたちのように」の詞において見られる従来とは異なるアプローチなど、小田の仕事はそれまでの楽曲と比べてもまったく遜色ない出来映えである。また松尾一彦も、5人時代には封印していた(?)ハードロック的嗜好を一気に解放して、今後のバンド展開の新たな方向性・可能性すら感じさせる働きっぷりを見せている。
…でも哀しい哉、所詮はバランスを欠いた片肺飛行、これが限界だった。この後オフコース号は各パーツ間の相性が悪化し、徐々に飛行が不安定になる。無謀な太平洋横断を試みたり、メインエンジン以外の部品にもエンジンと同じ役割を無理強いしたり、使い慣れない純正モノ以外の燃料を大量に補給したり、という迷走を経て、結局、機は失速から墜落への一途を辿るのである…。
言葉にできない〜小田和正コレクション
曲目リストをちらりと見ただけで名曲揃いなことはわかります。
甘かった。
聴いたら想像をはるかに上回ります。
キラキラのほっこり感直後、言葉にできないのイントロでがつんと心臓を揺さ振られます。
私は仕事で卒園式にも使いました。
プレゼントにも素敵だと思います。