ヴァージナル
これを買ったのは今から25年前の1986年、私は中学校3年、当時はLPである。
ナンノファンで風のマドリガルを買った直後に出ると聞いてすかさず予約した。
透明感のある、多感な頃の感性までも遠くに連れて行かれるような、完成度の高い曲が歌い上げられている。
非常に完成度の高い、素晴らしいアルバムで私は当時カセットにおとして陶然と何度も聴き続けたものである。
我らがナンノはその後一躍アイドル界の階段を駆け上り、続々とヒットを出し続けた。
私もはいからさんが通るや、話しかけたかった、吐息でネットなどを買い続けた。まさに輝けるアイドルだった。
今の茶色い裾の汚れた劣化した低レベルのグループとは違う(と今でも思っている)。
その後私は違うジャンルの音楽に興味が移っていったが、しかし、ナンノさんの曲を聴くとあの当時と鼓動を共にするような気持ちになる。自分に当時刻み込まれた感覚、感情がはっきりと蘇ってくる。このアルバムにはその力がある。
あれから25年。日本も大きく変わった。バブルは弾け、社会通念や道徳規範は相対化し、90年代からは行き過ぎた自由で規律のない世界に耐えられない人の心が漂流を始め、世相が変わり始めた。足るを知るという社会から、もっともっと便利なものを、を際限なく追い始めた。何でも手に入るかのような錯覚が人の心を貧しくした。派遣労働者の人口は急激に増え、所得格差は拡大、二極化するまでになった。そして今なおそれは続いている。
日本人の失った心、人間の心にまだ表と翳があった最後の時代に、その思いを可憐に綴るこの曲をもう一度買って聞いてみた。
今聞いても色あせないどころか、ますます胸に響く神曲揃いであった。
エリザベス朝のヴァージナル音楽名曲選
グールドといえばバッハの印象があまりにも強いが、バッハの曲以外にも数多の名演がある。まず、バッハに代表されるバロック音楽以前の、ルネッサンス期の曲をピアノで見事に弾ききった傑作として、本作は真っ先に推薦に値する。スティングの「ラヴィリンス」やセルシェルの「ルネサンス・リュート曲集」でダウランド等のルネッサンス期作曲家の曲の静謐な響きに心惹かれた人は必ずや本作を気に入るだろう。輝かしい調子の曲(例えばM3)もあるが、総じて落ち着いたしっとりとした味わいの曲が多く、静かな夜を落ち着いて過ごすのに最適の作品集の1つである。
ところで、本作は9曲中8曲をギボンズとバードの曲で占めており(録音はM1、5、7が1967年、M2、3、6が68年、M4、8が71年)、2007年10月にはその8曲だけを集めた作品が紙ジャケ仕様の作品が発売されている。しかし、本作にはモノーラルだが初CD化されたスウェーリンクのファンタジア・二調(7分23秒・64年録音)という捨てがたい曲が最後・9曲目に収録されており、現時点でこの曲を入手できるのは本作だけと思うから、私はグールドがエリザベス朝に創作されたヴァージナルのための曲にピアノでチャレンジした作品の決定版としては、07年盤より本作の方を薦める。
バージナルサアヤ紗綾写真集 (サブラDVDムック)
概ね、他の方々のレビューや感想が的を射ていると思います。
個人的には正面やバックからの全身立ちショットが好きなので、
その手のページがある本作品は大きくダメ出しするほどでもありません。
ただし、水着のサイズ(布面積)やデザインなど、そろそろエロさを
強めていってもいいのではないでしょうか。さらに広くファン層の拡大が
期待出来ますよ。
あくまで「紗綾は健康美少女路線!」というプロダクションの売り出し戦術や
このカメラマンの力量なら大きなブレイクも無いまま失敗するでしょうね。
パンッと張った肉感的な太ももや豊かな胸。もっと魅力的なショットが
掲載できたでしょうに。何で最近の写真集って、雑誌グラビアよりも
劣ったショットばかり並べて高額で売るのか…?
フェルメールとデルフトの巨匠たち
B4サイズの大型本です。
編集とADは、『万葉集』『金魚』『KATACHI』などの
ユニークなビジュアル本を連続出版している高岡一弥氏。
図版は、折り込まれた見開き(B3)サイズの紙に印刷されている。
それを一枚一枚、開いていくので、絵との独特の出会い方が楽しめる。
文字はとても少なく、それが白地の紙に端正に置かれている。
つまり、見るものは、ほとんど白地の世界をまず目にして、
その裏にある、絵画に導かれていく。
ページを開く(そこに絵画はない)。
折り畳まれた紙を開ける。
絵画と出会う。
この一連の動作。
最初に絵が見えないことが、
この本を、美術館的空間にしている。
絵画と絵画の間を歩く、静謐なインターバルの時間と空間は、
30数点しか作品が残されていない
謎めいた画家にふさわしいしつらえ。
冒頭のフェルメールの3作品には、部分に寄ったページもあるので、
作品にぐっと近づいて見る体験・効果も味わえる。
ただ残念なのは、この本が、今回のフェルメール展に際して作られたのに、
掲載作品が展示公開作品7点すべてではないこと
(今回の展示で最も素晴らしい『手紙を書く婦人と召使い』の代わりに、
かれの代表作のひとつ『絵画芸術』が収められている)。
絵画掲載点数は、全部で22点。
フェルメール以外の画家の絵のセレクトにも
やや疑問が残る。
テキストは巻末に2本。高橋睦郎と浅田彰。
これらはそれほど刺激的でも深くもなく
収められた絵画作品とゆたかに響きあう結果には、
残念ながらなっていない。