四畳半神話大系 第1巻 [DVD]
湯浅政明監督の『四畳半神話大系』その1。
おもしろいです。
ある青年が友人の小津といっしょに大学生活を台無しにしていく過程を描き、最後になってああ私はなんともったいないキャンパスライフを送ってしまったのか!と嘆くのが毎回のオチでありストーリー。ってこんな説明じゃ何がおもしろいの?と言われると思う。おもしろい要素を挙げるならば、まずキャラクターの生っぽさでしょうか。声優さんのまるで本心から言ってるように演じているところが面白い。例えば主人公の青年のモノローグは最初長いなと思われたのだが、歯に衣着せぬ発言や叫びの数々に終盤には痛快で良い感じに作品に浸透してクセになるものになっていました。あとは視覚的な面では湯浅監督のあの独特の色彩や人の動きが中村佑介のキャラに非常にマッチして日常の話なのに異質な世界観を演出していて、話数を重ねるごと個々のキャラのシチュエーションが異なり、ますます魅力的に映ってくるところとかが面白さのひとつだと思います。
ともかくセリフといい動きといい何かクセになるものがあるのです。
今作では湯浅監督の色は抑え、中村佑介のキャラの魅力も損なわれてないのもポイント。良い作品です。
☆
ブックレットが素晴らしい!中村佑介のキャラクター原案集、湯浅政明インタビュー記事など丁寧で盛りだくさんなつくりです。未放映エピソードはいつものメンバーで潜水艦で冒険。イエローサブマリンを思い出させるファンタジー色の強いお話でおもしろかった。改めてオススメしますよ!
舞台「夜は短し歩けよ乙女」 [DVD]
原作に準じた作りはいい。まさか4章全部演じるとは思わなかった。
原作を知っていれば没頭できるだろう。
しかし飽くまで「原作を知っていれば」だ。
そうでなければ荒唐無稽なファンタジー劇になってしまうかも知れないし、無理に舞台化した感も湧いてしまうだろう。
けれども、総じてよくできている。原作を知らずとも楽しめるほどに。
主人公「私」なぞ、明らかにモデルより年かさだが、童貞理想主義者らしくて好感が持てる。登場人物もなべて好ましい。
しかし、
だがしかし、
肝心の「黒髪の乙女」が微妙に黒髪でないのはどうか。
ライトの当たり具合ではやや茶色に映るし、もとより余りにカツラ過ぎる。
あまつさえ、他の役者に較べて明らかにカラ元気でセリフをカラカラと叫ぶばかり。
彼女に演技はまるでない。原作から膨らんだ他者に較べて台本通り。
原作のような天真爛漫な萌え少女ではなく、単なる不思議ちゃんになっている。
それだけが残念だ。
この物語は乙女が主体なので、それが主人公に夢想させるほど魅力的な存在あるいは演技でないと、興醒めしてしまう。なぜ彼は彼女にこれまで夢中になるのか、わからなくなってしまう。
万人の絶対的な存在などありやしないが、
せめて、黒髪の乙女は、少なくとも完全な黒髪であってほしかった。
それは主人公と読者の共有する唯一の要素であったのだから。
そうであればありがちないち劇団員のベタな演技でも許せた筈だ。
だからお話としては面白くとも、評価を下げて星3つだ。
原作を知らない人にはもっともっと面白く見られると思う。
しかし原作を知っていると、
どうかな。
夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)
独特の世界観が廻る巡る物語。
まるで黒髪の乙女とそれを追いかけてる先輩、
独特の強い個性やくせを持つ登場人物たちが
起こす摩訶不思議な出来事に
私自身が巻き込まれ京都の街を練り歩いてるような
錯覚を起こす楽しい物語でした。
人間関係が繋がっていくのが面白い。
現実離れしてるけどどこか甘酸っぱい。
個人的には文化祭の話が一番好きで、
緋鯉のぬいぐるみを担ぎながら走り回る
彼女の姿が非常に鮮やかに浮かんできました。
太陽の塔 (新潮文庫)
ばかばかしい、男臭い、むさ苦しい・・・そんな批評がこの作品には褒め言葉になってしまう。本にも書いてあるんだけれど、本当に「読了したあかつきには、体臭が人一倍濃くなっているだろう」、まさにそんな作品でした。でも、その男臭さが女の私にもまったく不快に感じられない不思議・・・。
京都大学の男子学生・森本が主人公。森本は自分を振った後輩の女の子をつけまわすことを日常としている。彼と友人たちはカップルを憎悪し、クリスマスを呪う「イケてない」大学生(というか、全員変人)。そんなかれらの異常な青春小説(さわやかな汗の似合う青春ではないが)です。
おもしろいのはストーリーより表現力・言葉の選び方。
登場人物たちに難しい言葉をあえて使わせることによって彼らの変態はぐ~っと増しています。どの登場人物も個性的で、変人。キャラクター設定がまるでアニメか映画のよう。この辺が若い男性のデビュー作らしい!
舞台が京大なので、京大の学生さんにはぜひ読んでほしいですね。
京都の土地勘がある人にもおすすめです。
四畳半神話大系 (角川文庫)
最初に目次を見た時に、「4つの章からなっているんだ」と思い読み始めると、
1章目と思ったところで、あっさり1話完結。
きっと四畳半をテーマにした4種類のオムニバス作品が並んでいるのだろうと、
2話目を読み始めると、「アレレ?どこかで読んだような出だし??」
慌てて1話目の冒頭に戻ると、そこには寸分違わぬ文章が・・・。???
ようやく作者の意図に気がついた時には森見ワールドの虜になっていました。
過去にもこういったパラレルワールド系の小説は多く出ており、斬新なアイデア
では無いけれど、ここまでサスペンス性ゼロ、危機感まるで無し、超脱力系の
小説は無いだろうな。
選んだ道は違っても、結果はそう大差無いよということなのだけれど、
4種類の話をただ並べるのではなく、最後の章で全体を上手くまとめている
ので、「お見事!」と拍手を贈りたくなった。
残念なのは「有頂天家族」→「夜は短し歩けよ乙女」→「四畳半神話大系」の
順番で読んでしまったということ。森見作品は時系列どおりに読んだ方が
いいです。共通キャラクターやサークルが出てくるので、時系列で読んだ
方が「クスッ」と笑えるはずです。あーっ失敗した!