楼蘭 (新潮文庫)
大国漢と匈奴にはさまれた弱小国楼蘭の変遷を描く表題作他、西域に植民する後漢の武将索勱(そうばい)の姿を描く「洪水」、幻想的な「羅刹女国」など砂漠に人びとの運命を描く短篇と、織田信長を討つ明智光秀の心理に迫る「幽鬼」、極楽浄土信仰に巻きこまれる僧侶を見つめる「補陀落渡海記」など日本の古事に題材を取る短篇計12篇を収録。
運命の濁流に激しく、そして静かに対峙する人びとの姿にただただ感動します。力と力がぶつかり合う西域において、情勢にさとく反応しながら、それぞれの生をしたたかに生きる人びとの息づかいが聞こえてきそうです。
キリスト教的信仰とは無縁の西域で、運命、徳、他社との関係性の中で生を模索する視点は、肯定的な意味でも、否定的な意味でも、必ずキリスト教に回帰していく西洋文学に浸りきっていた私には非常に新鮮でした。井上氏が描く、運命にもまれながら自己を失わずに生を全うする人びとの姿には、不思議な説得力と魅力があります。とてもフィクションとは思えない生々しさが素晴らしい一冊です。
ACROSS
烏龍茶のCMで耳にした「Changing Partners」が聴きたくて買いました。透き通った歌声と優しいギターの音色にとても癒されます。サントリー烏龍茶のCM曲は心地良いものばかりですね。CMソングコレクション「チャイ」もお気に入りで良く聴いていますが、このアルバムも長く楽しめそうです。
敦煌 (新潮文庫)
高校の時、井上靖さんの作品のせいで、何度も電車を乗り過ごしました。
この「敦煌」もそのひとつです。
表紙カバーやパラ見したときの字面の雰囲気で
この作品を読むのを迷っているなら、それはかなり杞憂です。
歴史好き、中国・シルクロード好き、
自分で冒険する勇気はないけどスリリングな旅が好き…、
そんな人にはオススメです。
交通手段が発達して、
ネットのおかげで伝達がスムーズに行えて、
国と国との安全が最低限、保証されている今、
そんなものが一切なかった時代が新鮮です。
むしろ昔の方が、人と人との関わり合いや、
何かを切に求める貪欲さが、命がけで真剣なものだったのだと痛感。
読んでて、血圧上がります。
死んだら棺桶に入れておいてください、って遺言書に書きたいくらい好きです。
AV黄金時代 5000人抱いた伝説男優の告白 (文庫ぎんが堂)
もちろん体験人数ではない。
心象風景とか、やって来たこととか…。
余談で恐縮ながら筆者(私)は著者(太賀麻郎)より四歳若いんで大丈夫…とか思ってたら甘かった。
私も薄すぎるんだが、当時、アダルティー業界と無縁ではなかった事を今思い出した。
というのも…当時、古本屋修行をコック修行の合間にしていて、オイラの古本のF師匠が地元の古本業界の当時のリーダー的存在で、その時に仕入れて来た下火になったビニール本(ギャラでもあった)に値段を付けてたら、大阪のビニ本の相場がオイラの付けた相場になって苦笑ってしまった事を思い出した。
話はそれたが、かなり共感出来た部分があった。
私も現役のコック当時、親の七光に苦しんだ時期があり、著者も
『父親が見せたり与えられた世界を自分の考えで考えて、開拓して行った』
という感じがして、生い立ちや立場や土俵は違うものの共鳴する部分が余りにも多かった。
著者は結果そうなっただけで、身体を合わせた数の多い少ないではない。
一度セックスしただけで、大半の男女は理解出来るか?。
答えはイエスでもあるしノーでもある。
逆に何度も長い間愛し合って来た恋人や夫婦同士にも同じ事が言えるだろう。
AV業界といいながら、一般に当てはめる事も可能なエピソードの数々。
誰かをわかろうなんて思ってはいけない。
だって、なにがあってもその憧れの人にはなれないけれど、その人から与えられた事を自分なりに吸収して解釈すればいいだけ…。
私にとっての太賀麻郎は、それまでは『テクニック導師』だった。
だが、この本を読んで、よりひとりの身近な人間だと感じる新鮮さや発見があって、読後感は想像以上に爽やかに思えた。
NHKスペシャル 新シルクロード 特別版 第1集 楼蘭 四千年の眠り [DVD]
タクラマカン砂漠に存在していた楼蘭は、西域のオアシスであり、天山南路と西域南道とが分岐する要の場所にあった遺跡です。
有名な楼蘭故城から100キロほど西へ行ったところにある小河墓遺跡の発掘を通して、我々に知られざる四千年前の歴史を見せようとしています。
シルクロードの中で最大の蜃気楼のような謎の王国を調べる過程は興味深いものがありました。
新疆文物考古学研究所による小河墓遺跡の発掘作業を丁寧に撮影しています。舟をふせたような棺の発掘作業は考古学者でなくても興味を覚えるもので、60代の女性が棺から出てきた瞬間は驚きました。完全な防腐処置が施されたミイラの出現です。
その後に、20代と思われる美しいミイラにも驚きました。人類学者はコーカソイド系、いわゆるヨーロッパ系の白人種だと推察しました。中国で一番古い小麦かもしれない種モミも一緒に出てきたので、農業を営んでいた状況が伺え、ユーラシアの西から東への交易移動を知る縁になるようです。
昔、このあたりを最初に発掘した名高いスウェン・ヘディン探検隊の発掘についても紹介があり、その部下のフォルケ・ベリイマンによって1934年に小河墓遺跡が発見されました。その後、2000年12月まで忘れられていたのも不思議です。
このドキュメンタリーを通して、シルクロードが大昔から世界的な交易のルートとして存在していたことを確認できることになり、より深い関心を持ちました。