銀河鉄道の夜 (ホーム社漫画文庫) (MANGA BUNGOシリーズ)
少女漫画のキャラクターは苦手なのですが、
読み始めてすぐに、ささやかな嬉しいカットがあった。
活版所の賃金をもらって、うれしそうに駆け出す場面。
私が勝手に想像する程ジョバンニは悲観にくれているわけではなく、
目の前の喜びに素直に反応する男の子。
子供の健やかさがわかる、原作最終形態の中でも大好きな場面なのですが、
さらりとかわす作品が多いなかで、忘れずに描かれていました。
その他にも原作を忠実にトレースすることに専念した気配が全編に感じられます。
出版社や担当から無理強いされた訳ではない、
北原文野さん自身が「銀河鉄道の夜」をよく分析していることがわかる仕上り。
小さな文庫サイズが、繊細なタッチをより印象付け、
「カラーで見たい」と思わせるページも多数あります。
そして、感傷過多にさせない、潔いラストカットも見事。
絵柄に対して好き嫌いはあっても、
漫画家さんの真摯な仕事ぶりには、誰もが賞賛できるはずの佳作です。
夢の果て (3) (ハヤカワ文庫 JA (708))
自分が超能力者であるがために、身近な人々を喪ってきた主人公スロウ。
ようやくわかりあえた、超能力者ではない普通の人間である友人と恋人を
守るために、自分が犠牲になる決心をする…。
そして、密かに救い出した超能力者の仲間たちを助けるために、スロウは
さらに危険なところへ…。
そんなに自分をいじめないで…。あなたは、あなたにだって、幸せになる
権利はあるはずなのに…!
緊迫の最終巻。
小公子 (偕成社文庫)
解説を読んで、戦前の良家の子女が読んだものとわかり、腑に落ちるところがありました。
昔はさっぱり理解できなかった、筋書きの背景にあるイギリス貴族の暮らしぶり、城や広大な敷地や、先祖たちの絵が並ぶ様子などを、今はハイビジョンの映像で知っているので、細部の描写を確認して満足しました。
子ども時代に、ある程度、この時代の英米のこまごましたことを知ることができると、歴史や文化を理解するのに、糸口になるのではないでしょうか。
日本語訳では、セドリックが敬語を操って、マシュマロのように優雅に感じられます。英語の原文は見たことがないのですが。この優雅さは、今では珍しくて、雰囲気が貴重に思われます。
ただ、無邪気な善意で向かえば、他人も善意で返してくるというようなことは、やはり空想の世界のことでしょう。