彼らの得意曲を万遍なく集めている。ダークのCDを初めて買う人にもお勧めできる無難な一枚。
「銀色の道」「花のメルヘン」等に関しては、ヒットしたのがキングレコード在籍時代である(このCDではポリドールでの再録音でありオリジナル音源ではない)ことに注意。
島崎藤村の詩は若い頃から好きであったが、散文は「千曲川のスケッチ」を読んだ程度で、小説はなぜか敬遠してきた。多分、藤村の私生活に共感をもてなかったためだと思う。ところが、ある雑誌に載った対談に触発されて岩波文庫版の「夜明け前」(全4巻)を取り寄せたが“つんどく”状態となっていた。今般、Amazonの電子書籍リーダー(Paperwhite)を購入したところ、kindle無料本に「夜明け前」があることを知り、これで読んでみることにした。断続的に読んだが、文庫本の活字を追うより年寄りには読みやすいようだ。今回のレビューは、読了したこの巻についてのみのレビューとして、以降のレビューは全巻読了後、第二部(下)に記すようにしたい。
「木曾路はすべて山の中にある。あるところは岨づたいに行く崖の道であり、あるところは数十間の深さに臨む木曽川の岸であり、云々」の冒頭の文章はあまりにも有名である。馬籠は木曾街道(=東山道:中仙道)六十九次のうちの木曾十一宿の一つであり、主人公の青山半蔵は馬籠宿の本陣・庄屋・問屋を兼ねる旧家の当主となるが、時勢の影響もあり平田派の国学を信奉している。本巻に描かれる時代は、幕末の激動が始まる黒船来航(嘉永6年、1853年)から生麦事件(文久2年、1862年)頃までである。黒船来航の情報や防備のための大名の軍勢も馬籠を通る。安政の大地震の情報も和宮降嫁の行列も馬籠を通る。山深い馬籠を舞台にして幕末維新の激動期が語られる巧みで重厚な語り口となっている。このような藤村の文学の味を初めて知った。
この巻を読んで印象に残った点を記すと、 1.江戸時代は極めて綿密な統治が行われていたこと。 例えば、木曾街道六十九次を設置して、宿の体制は助郷を加えて極めて合理的に運営されていた。また、森林管理も厳重で「再生可能社会」を実現していた。ここでジャレド・ダイアモンド『文明崩壊』にある「徳川幕府の解決策」にある記述を思い出した。 しかし、黒船の外圧を受けて日本の統治体制は変わっていかざるを得なかった。 2.江戸時代は災害に意外と強かったこと。 この間に江戸に壊滅的な災害を与えた安政大地震や馬籠宿の火災も立ち直りが早い。勿論、インフラが高度化した現代とは違うが。
詩集を初めて買う方にも、そうじゃない方にもお勧めな一冊です。高村光太郎の「レモン哀歌」や中原中也の「汚れちまった悲しみに…」など。皆一度はどこかで読んだ事があるような代表的な詩ばかり。
ちなみに私は石垣りんさんの「くらし」が好き (・_|
いろんな人の詩が入ってるので、新しい詩人との出合いがあるかも。 お勧め!
ヴェルディ・レクイエムの「ラクリモーサ」を独唱した際、あまりの絶唱に女声パート全員が涙を流し歌えなかったという逸話を持つ大歌手柳兼子が、老境に入って録音したレコードのCD版である。日本歌曲史の中に埋もれてしまうかと思われたこの録音が21世紀になっても聴ける。生きててよかった。往年の大歌手が声を失った代わりに到達したのは直接こころにとどく孤高の芸術だった。私も涙と共に聴かずにはいられなかった。遠くから聞こえてくる「いずれの日にか国に帰らん」の一節など、嗚咽とでもいおうか、望郷の一念をここまで歌い上げた歌唱を私は知らない。
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